starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「誰かが殺さないと」 猟師歴40年、命の重みしっかり感じ害獣駆除


猟師・食肉加工場製造管理者 古門正文さん(71)

 古門正文さんは猟師と食肉加工場の製造管理者、二つの顔を持つ。広島県安芸高田市に生息するニホンジカの活用策などに奔走する。

 農業公社に勤務していた30代のころ、周囲に勧められ「趣味半分で始めた」というが、猟師歴約40年の大ベテラン。地元の害獣駆除班の班長として長年率い、仲間と共に後進も育成する。ニホンジカを仕留める好機である早朝と夕方、猟銃を車に積み、獲物がわなにかかっていないか確認に向かうのが日々の習慣だ。

 日本三景・宮島(廿日市市)では「島の顔」として愛されるシカも、場所が違えば農地を荒らす厄介者へと変わる。安芸高田では朝夕の寒暖差をいかし、おいしい米ができるが、田植え前の稲の苗場や田植え直後のまだ柔らかい稲の芽をシカが食べてしまう。県のまとめでは、2020年度のシカによる県内の農業被害額は約5000万円。ここ数年、県内で捕獲されたシカの約3割が安芸高田で捕獲されている。

 安芸高田で12年に整備された野生鳥獣の食肉加工場で、17年から勤務する。食肉用として出荷するシカ肉に求められる条件は厳しく、鮮度維持の観点から1時間以内に加工場へ持ち込まなければいけない。また、弾が脚などに命中すると、その部位は食肉に用いることはできず、ペット用の肉などに加工される。

 狙う際、「首から上を撃つように」と他の猟師にも伝えるが難易度は高く、加工場に持ち込まれるシカの大半は山中に仕掛けたわなにかかったもの。猟銃で仕留められたものは全体の約1割にも満たないという。

 シカ肉は高たんぱくで低カロリー。牛肉に近く、脂に臭みがないのが特徴だ。「『(獣肉は)くさくて、固い』という概念が変わりつつある」と言う。肉は東京の料亭やフランス料理店などに出荷。他にも大阪や山形、鹿児島など販路は広がっている。

 脂がのる夏が一番おいしいが、調理するシェフは管理飼育される牛や豚などの家畜と異なり、季節や雄雌、体格の違いが肉質に直結する点が面白いと感じるという。高い値段でも良質な肉を求める声は絶えない。

 命と向き合う仕事だからこそ、その重みをしっかりと感じる。「『何でワシは死ぬんだろう』という表情をするときがある」と言い、すばしっこく走る子ジカを見て「かわいそう」と思ったら当たらないと語る。

 「おかしなもんだ。無になって引き金を引かないと」と銃を構えて4秒以内に撃つことを心がけている。「誰かが殺さないとシカは減らない。加工場にいい肉を持ち込むためにハントしたい」と語る瞳には強い決意が感じられた。【岩本一希】

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.