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「民法の聖地」宇奈月温泉、木管事件モチーフに手ぬぐい製作


 民法の「権利の乱用禁止」が規定されるきっかけとなった「宇奈月温泉木管事件」。今年、その舞台となった富山県黒部市の宇奈月温泉が開湯100周年を迎えたのを記念し、黒部・宇奈月温泉観光局(富山県黒部市)が、同事件をモチーフとした「木管手ぬぐい」を製作し、販売を始めた。関係者は「開湯当時の重大事件に思いをはせて」と話す。【青山郁子】

「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」大審院判決

 木管事件は1917年、黒薙(くろなぎ)温泉から宇奈月までの約7500メートルに木製の引き湯管を敷設した時、誤って個人所有の約6平方メートルについて承諾を得ていなかった。この土地は急傾斜地で畑作も植林もできないような土地だったが、地権者は時価の数十倍もの高値で隣接地も含めて約9900平方メートルの買収を要求。温泉側が拒否したため、土地所有権の妨害を主張して、引き湯管の撤去などを求めて魚津区裁判所に提訴した。

 1審、2審は地権者側の主張を退け、大審院(現在の最高裁に相当)も35年、初めて「権利の乱用」という文言を使い、所有権の乱用になる請求を許さないという判断を示した。この「宇奈月温泉木管事件」で「権利の乱用禁止」は、判例として確立し、今も多くの法律書や論文などに引用され、宇奈月温泉は「民法の聖地」とも呼ばれる。このため、法学部の学生や、弁護士、裁判官など司法関係者が年間約1000人も訪れるという。

開湯100年記念 お守りもSNS好評

 しかし、事件をしのぶことができる遺物は、温泉とは少し離れた場所にある石碑や、温泉内などに木管の実物が展示されているだけ。お土産にできるようなグッズもなかった。

 そこで、同市内の若手経営者らで作る「黒部宇奈月DMO事業検討委員会」が、今年の開湯100年を機に「この重要なコンテンツをもっと活用すべきだ」とグッズ開発を企画し、今年4月に「権利の乱用よけ」のお守りを作った。すると、SNS(ネット交流サービス)などで話題を集め、全国の司法関係者から問い合わせの電話が殺到。「宇奈月温泉に足を運んでもらう」ことが最大の目的だったため、郵送での販売は断ったが、それでも5月の大型連休には品切れ状態となった。

 今回はその第2弾として、温泉でも使える手ぬぐいを選んだ。同県高岡市の高岡法科大の教員が監修した手ぬぐいは、木管の模様とともに、事件の関係者らが描かれ、「権利ノ濫用(らんよう)ハ之(これ)ヲ許サス」などとした大審院の判決文も明記されている。折りたたむとちょうど木管のように見えるような形で販売され、帯には事件の概要を説明している。

 価格は税込み1650円で、同市芸術創造センター・セレネや温泉旅館などで販売中。企画開発に携わった同観光局の石田智章さん(39)は「事件を知る人も知らない人も、この手ぬぐいで宇奈月温泉の歴史を感じながらリフレッシュしてほしい」と話している。

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