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茨城・龍ケ崎の牛久沼 85年ぶりの越水で浮き彫りになった課題


 茨城県取手市双葉地区で排水能力を超えた「内水氾濫」が起きるなどした大雨から1カ月。近くの牛久沼(茨城県龍ケ崎市)も、1938年以来、85年ぶりに越水した。龍ケ崎市内で住宅21棟が半壊や浸水。上流側の水田の一部は2週間、あふれた水につかり続けた。穏やかな沼の氾濫は、堰(せき)の管理や水位共有の在り方で課題を残した。

水田管理者「間違いなく減収」とため息

 6月29日、しおれたままの稲に、龍ケ崎、つくば、つくばみらいの3市にわたる水田約390ヘクタールを管理する茎崎村外五ケ町村土地改良区(約530世帯)の野口泰永理事長(74)は「間違いなく減収」とため息をついた。2~3日の雨で牛久沼や上流河川が越水して水田の9割が水につかり、約120ヘクタールでは解消まで2週間かかった。一部の稲は元気を取り戻し青々としてきたが、野口さんは「汚い水をかぶったので暑くなったら病気が発生する可能性もある」と心配する。

仕組みのもろさ、明らかに

 牛久沼を管理する県によると、下流側で県が管理する「八間堰(ぜき)」は、3月で終わるはずの改修工事が7月末まで延び、沼底から高さ4・15メートルの矢板で水をせき止めていた。大雨に備えて仮排水路を設け、増水時は矢板を越えて水が流れるよう設計。実際にその通り流れたが、沼は3カ所で越水した。6月15日に県が矢板を50センチ下げ、18日ごろにようやく野口さんらが管理する田んぼの水が引いた。県内の農業被害は19日時点で5億円超。一帯は調査中で、被害総額は更にかさむ見込みだ。

 県や下流の「牛久沼水門」を管理する国が龍ケ崎市に水位を知らせる仕組みがないもろさも明らかになった。

 長年大きな被害がなかった牛久沼は、氾濫の危険がある水位を事前に定めて達した時は市町村に知らせる「水位周知河川」に指定されていない。そのため市や下流側の住民が危険を知るには、国が小貝川からの逆流を防ぐため八間堰近くに設けた水位計の情報をインターネットで見る。

 ところが、この水位計は3日午前2時ごろからマイナス表示に。国土交通省利根川下流河川事務所によると、通常より水位が上がった影響で不具合が起きたとみられる。市は午前10時ごろに八間堰近くで越水したことを市民の通報で把握した。

 県が牛久沼を水位周知河川に指定すれば情報共有が進みそうだが、県河川課の担当者は「季節によっていろんな水位のパターンがある」と難しさを語る。牛久沼は農業用水や下流の治水のため水をせき止める機能も持ち、農繁期は農閑期より30~40センチ水位を高くしている。氾濫危険水位を定めるには取水状況などを詳細に検討する必要があるというのだ。

 異常気象の脅威が広がる中、穏やかだった水域でも被害が想定を上回る恐れが浮き彫りに。県河川課の担当者は「市町村との連携、周知の方法について検討する」と頭を抱える。【信田真由美、長屋美乃里】

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