サンゴの生育や海の環境に配慮した処方の日焼け止めを大手化粧品各社が相次いで発売している。世界的な海洋保全意識の高まりにより、こうした日焼け止めは新たなスタンダードの一つになりそうだ。
日焼け止めには紫外線をカットするため、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が使用されている。紫外線吸収剤に使われる特定の成分は海の中に流れ出した場合、サンゴに悪影響を及ぼし、サンゴの骨格が透けて見えるようになる「白化現象」を促進する要因になっていると海外の研究者から指摘されている。このため、米ハワイ州やタイの国立公園では2021年から、特定の成分が含まれる日焼け止めの販売や使用を法律で禁止しており、世界各地でこうした法規制の流れは強まりつつある。
こうしたことなどを受け、国内の大手化粧品メーカーは「オーシャンフレンドリー」や「ビーチフレンドリー」などと呼ばれる、海の環境への配慮を打ち出した商品を発売し始めている。
コーセーはスキンケアの「雪肌精クリアウェルネス」シリーズから「UVエッセンスジェル」など4種類を23年2月に発売し、3月以降はアジアを中心に海外展開も始めた。紫外線吸収剤を含まない処方としたり、技術改良により、これまでよりも強い膜を肌表面に作ることで特定の成分が海中に流れ出しにくい設計にしたりした。通常の使用では、サンゴの生育に影響がないことを水槽内の実験により確認しているという。
資生堂もスキンケアブランド「アネッサ」の主要商品「パーフェクトUVスキンケアミルクN」などで、サンゴへの影響に配慮し、海に流れ出にくい処方を採用していることを22年から打ち出している。
花王も「アリィー」ブランドの日焼け止めを22年に改良し、「ジェルUV EX」など全商品を、環境に配慮したビーチフレンドリー処方に変更している。【町野幸】