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低賃金、未払い、暴言…技能実習生が見た「制度のひずみ」


 1993年にスタートし、30年にわたって日本経済を支えてきた技能実習の廃止方針。日本で働く実習生はどう受け止めたか。

 「自由に仕事を選べて、給料も上がる仕組みをつくってほしい」。広島県三原市の建設会社で働くベトナム人のグエン・クァン・フィンさん(28)は8年前、実習生として来日し、制度のひずみを目の当たりにした一人だ。

 実習生としての日々は苦労の連続だった。母国の送り出し機関に支払う手数料などの渡航費用を工面するため、実家の田んぼや畑を担保に約130万円の借金をして来日。最初の実習先は広島県府中市の建設会社だった。

 週に6日、朝6時から夜7時半までがむしゃらに働いた。言葉が通じず、見よう見まねで仕事を覚えた。寮費や光熱費を差し引くと、月の手取りは約7万~8万円。2万円を手元に置き、残りは仕送りとして実家に送金した。日本語は休日に地元のボランティア教室に通って自力で覚えた。

 職場環境も悪く、日本人の作業員同士の暴言や暴力を度々目撃し、「いつか自分にも向けられる」と不安が募った。昇給しない賃金面の不満も重なり、2019年11月、広島県福山市で実習生の保護に力を入れる労働組合「福山ユニオンたんぽぽ」に助けを求めた。

 結果、組合側と会社側との交渉で、残業代の未払いが発覚し、不適切な受け入れがあったとして例外的に実習先の変更が認められ、同じ建設業の別会社に移ることができたという。技能実習では、実習先から失踪するケースが相次いでいるが、フィンさんは支援団体につながって救われた。

 今は、即戦力レベルの技能が求められる「特定技能1号」に移行し、手取りも月25万円まで増額。重機オペレーターとして現場を指揮し、図面も読めるようになったという。来日時の借金も完済した。

 フィンさんは技能実習を日本による「国際貢献」と考えたことは一度もない。あくまで稼ぐ方法だ。「建設の仕事は夏は暑く、冬は寒いし、がんがん怒鳴られる。実習生ではなく、労働者と認めて給料を上げてほしい」と訴え、技能実習の廃止を歓迎する。

 「日本はきれい。日本人はいい人。日本人が怒るのは仕事のため」。やはり特定技能で働くベトナム人女性(23)と交際しており、近く結婚するつもりだ。帰国は考えていない。「日本で頑張ればキャリアアップできるというモデルになりたい」と自身の未来を描く。

 フィンさんを支援した同組合の武藤貢執行委員長(73)は「技能実習先で起きているパワハラや残業代の未払いといった人権侵害が日本の印象を悪くさせている。新制度が実態として技能実習の看板の付け替えになったら意味がない」とくぎを刺す。【飯田憲】

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