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タイ国技・ムエタイの聖地、コロナ禍で大変身


【バンコクAFP=時事】どぎついネオンとギャンブラーがリングアウトし、代わってしゃれたレーザー照明と女性ファイターがリングインした。タイ式キックボクシング「ムエタイ」の聖地は、新型コロナウイルス流行による20か月に及んだ中断を経て、さまざまな改革に乗り出している。(写真はタイ・バンコクのムエタイの聖地、ルンピニー・スタジアムで行われた初の女性選手の試合) 首都バンコクのルンピニー・スタジアム。タイ古来の格闘技ムエタイを象徴する場所で、コロナ禍以前の試合日には数千人の熱狂的ファンが埋め尽くし、試合の陰では100万ドル(約1億2000万円)を超える賭け金が動くこともあった。 だが2020年3月、すべてが停止した。タイ初のコロナ集団感染が起きたルンピニーは、たちまち閉鎖された。 しかし、スタジアムの所有者であるタイ王国陸軍はタオルを投げ入れず、強制閉鎖をチャンスに変えたとカムバック宣言をしている。 スタジアムの副支配人、ロンナウット・ルアンサワット少将は「コロナ流行を逆手に取って、大改革した」とAFPに語った。「アリーナを全面改修し、賭博を禁止した。女性選手の出場も許可した」■賭博禁止で八百長追放 シティチョーク・ゲーウサガー選手(21)は13日、赤と銀の最先端のレーザー照明を浴びてリングに上った。 スタンドは無観客で、多くのものが新しくなっていた。それでも会場に流れるタイ伝統音楽の生演奏とフック、ジャブ、膝蹴りは変わらない。 ルンピニーが再び観客を迎え入れるのは来年1月。入場者数を大きく減らし、検査や観客同士のソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)などで、徹底的なコロナ防止策を取るという。 再開されるスタジアムからは賭博も姿を消すことになる。ロンナウット少将によると、「選手が金を受け取ってわざと負けるなど、賭博で八百長が多発した」と陸軍が判断したためだ。軍は、国内の他のムエタイ会場でも賭博を禁止する考えだ。 しかし、ムエタイ関係者は軍の狙いが実を結ぶかどうか疑問視している。主要ムエタイ団体の一つ、世界ムエタイ機構に所属するジェイド・シリソンパンさん(29)は「賭けはオンラインで続けることができる。ギャンブルはムエタイのDNAに組み込まれている」と警告する。 「ジムの経営者を含めて、多くのギャンブラーはそれで暮らしを立てている。運のいい日には何千ドル(何十万円)も手にできる」■タブーを打ち破った女性選手 最も画期的な変化をもたらしたのは、ルンピニーのメインアリーナで女性のムエタイ選手の試合を行うという決断だった。 ムエタイでは長年、ファンを含めて女性はリングに触ることさえ禁じられていた。月経がある女性の体が触れると、神聖な力で守られたリングが汚れるという迷信があったためだ。 他の会場はしばらく前から女性のムエタイ選手を受け入れるようになったが、ルンピニーはずっと門戸を開こうとしなかった。 そのルンピニーのメインリングで13日、初めて女性が対戦した。タイ人のグンナラット・オーノック選手(21)は、オーストラリア人のセレスト・ミュリエル・ハンセン選手(27)を破った後、こう語った。「私たちは、女性としてここで初めて戦ったことをとても誇りに思う。平等を求めてずっと闘ってきたので」■「魂の抜け殻」 同じく13日、シティチョーク選手は男子の試合を制したが、獲得したファイトマネーは1000ドル(約11万5000円)以下。コロナ流行前なら、その3倍は稼げた。 それに「空っぽのアリーナで戦うのはとても変な気分だ。観客のエネルギーがない中で戦うのは楽じゃない」と語る。 さらに伝統の牙城とされる場所では当然かもしれないが、皆が素直に変化を受け入れているわけではない。 「以前とはすっかり違う。ムエタイの聖地が大きなショールームになってしまったみたい」だと、ジェイド・シリソンパンさんは試合の放送を見て嘆いた。「魂の抜け殻みたいです」 【翻訳編集AFPBBNews】〔AFP=時事〕(2021/11/30-11:04)
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