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「キスしたくないんです…」夫を生理的に受けつけられなくなってしまった女性の心理




 



■夫とのボディコンタクトは避けたいけれど



 



夫のことが大嫌いなわけではない。モラハラされているわけでもない。言いたいことは自分から言う。そんな関係を築いているのに、「とにかく夫とはボディコンタクトをしたくない」と苦笑するのは、ルミさん(40歳)だ。結婚して10年、8歳の息子がいる。





「赤ちゃんって、とっても気持ちがいいんですよね。抱きしめたりほおずりしたり、とにかくすべすべしていて柔らかくて。そんなときに夫が私の手を握ってきたことがあるんですが、背筋がぞっと寒くなった。無理だ、と思いました」





さりげなく振り払った日のことを、ルミさんは鮮明に覚えている。以来、夫と肉体的接触をしたくなくなった。





「それでも夫にしつこく迫られ続け、断ると浮気されそうだなと思ったので、しかたなく応じたことはあります。そのときもキスだけはしなかった。歯の治療をしていて痛いからと理由をつけました」





それならやめておいたほうがいいよね、と夫は自分のベッドに戻っていった。なるほど、どこかが痛いと言えば夫は引き下がるのかと彼女は学んだという。夫はボディコンタクトが大事だと考えているようで、それからも通りすがりにさりげなくルミさんの体に触れたりする。そのたびに、ルミさんは全身鳥肌が立つような気持ちになった。





「生理的に受けつけなくなっていたんですよね。触れられてヘンに挑発してくるくらいなら、さっさとセックスしてさっさと終わってくれたほうがマシだなと思いましたね」





とはいえ、彼女に性欲がないわけではない。



 



 



■夫だけは無理…



 



もしどこかでステキな人に会えたら、と妄想することはある。おそらく深い関係になってしまうだろう。だが、夫が大嫌いというわけではないのだ。少なくとも、子どもの父親としては「いてほしい存在」だという。





「私にとってもたぶんいてくれたほうがありがたいんですよね。でもそれは、一緒に歩んでいきたいというわけではなく、生活上、いてくれたほうが便利だから」



 



彼女はあわててつけくわえた。





「私、別に夫を下に見ているわけでもバカにしているわけでもないんです」





ただ、生理的に夫とだけは触れあったりいちゃいちゃしたり、キスしたりすることは避けたいのだ。





「私の誕生日のときだったか、夫がおめでとうと言いながら、ハグしてキスしようと近づいてきたことがあったんです。ハグもいやだったけど、それよりとにかくキスが怖かった。ハグされて思わず顔を背けてしまいました。夫の唇が頬に当たったとき、ほっとしましたね。まだ頬でよかった、と」





独身時代は、彼とキスをするのが好きだった。キスだけでじゅうぶんだと思ったこともある。それなのに、今、どうしてこんなことになっているのか。彼女自身、とてもせつなくなると話す。





「今がそういう時期なのか、あるいは夫とはずっとこうなのか。私は一生、誰ともキスをしないのか。いろいろなことを考えてしまうことがあります。ただ、あまり深く考えると、夫との関係そのものも見直さなければという気持ちになっていく。それはしたくないので、今はこうだけど先のことはわからないと思うようにしています」





この先、子どもが高校生くらいになって親を頼らなくなったころ、彼女は再び、この問題をもっと深刻にとらえるようになるのかもしれない。


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