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2020年までに「エスカレーター立ち止まりマナー」が定着しない理由




エスカレーターを使用するとき、急いでいる人の歩行用に関東では右側を空け、関西は左側を空ける──そんな“暗黙の了解”は、もはや「うどんの汁の色」に並んで広く語り継がれている「東西文化比較・あるある」の一つである。ちなみに、関西のなかでも京都は左側を空けるか右側を空けるかが、案外バラバラだったりして、それは日本全国、さらには世界中から、あらゆる人種の観光客がまんべんなく訪れるのが原因なのではないか、と私は推測している。あと、私が先日行ってきたばかりのスペインだと、原則としてマドリッドは「左側空け」、バルセロナは「右側空け」が慣わしになっている。



 



ところが! そんなある意味、微笑ましい派閥(?)争いを根底から吹き飛ばす“とある改革”が、ここ東京で行われているようだ。



 



『乗り物ニュース』によると、JR東日本が2018年の12月17日から翌年2月1日まで、東京駅で「エスカレーター歩行対策」を試行しているという。期間中は、中央線ホームに通じるエスカレーター2基と、京葉線に通じるエスカレーター4基の手すりや乗降口に「手すりにつかまりましょう」といった内容を、文字と絵で表した掲示物が貼られ、壁面には「エスカレーターでは歩かないでください」「お急ぎの場合は階段をご利用ください」「左右2列でもご利用ください」と書かれた大型掲示物も。くわえて12月21日までの5日間は、特製のビブスを着用した警備員が、利用者への声掛けもする……のだそう。JR東日本東京支社はこう答える。



 




エスカレーターを歩き、人や荷物にぶつかることによる転倒事故をなくすのが第一です。ケガをなされている方、杖を使っていらっしゃる方、お子さん連れで手をつないで利用される方なども、安心して乗られるようにする目的があります。




 



そもそも、日本エレベーター協会によると「エスカレーターは歩いて利用することを想定しておらず、昔から歩かないように訴えてきた」らしく、「両側に立ち止まって乗ったほうが輸送効率も良くなる」という分析結果もあるんだとか……。



 



一説によると、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までに、東京におけるエスカレーターの「片側空け」を無くすことを目標しているとも聞くが、そこまで言われちゃあ……もう歩くのをやめて立ち止まるしかないっすね。



 



ただ、やるんだったら、もっと大々的なキャンペーンを張って、声掛けをする警備員とかも、それこそ東京都内にあるJR・地下鉄・私鉄すべての駅に配置するくらいの覚悟がなければ厳しいんじゃないか……って気もしなくはない。なぜなら、現状では「エスカレーターでは歩かないようにしましょう」といったマナーより「エスカレーターでは急いでいる人のために片側を空けましょう」というマナーのほうが明らかに主流となっているからである。また、たとえば、りんかい線の大井町駅みたいに、地上からホームにたどり着くまで果てしなく長〜いエスカレーターを3度も4度も下らなければならない場合だと、つい私もエスカレーターの右側を歩いてしまう。いや、走り抜けることすらままあったりする。エスカレーターに立ち止まっていたらマジで5分以上かかるので、電車に乗り遅れてしまうのだ。



 



「立ち止まりマナー」が中途半端なままだと、“歩かない利用者”がエスカレーター上で左右に点在したり、小競り合いが増えたり……と、かえって危険なのではないか? 先に「京都は空ける側が案外バラバラ」と書いたが、京都と東京ではエスカレーター上一つ取っても、人口密度が違いすぎる。ここ日本で、歩きタバコやポイ捨て行為に違和感を抱く人がようやく多数を占めはじめたのも、つい数年前のこと。そうなるまでに私の見立てだと(少なく見積もっても)10年近くはかかっている。啓蒙活動にかける膨大な予算を捻出できないなら、なんでもかんでも「2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで」なんて性急なタイムリミットを設定することなく、“地道な浸透”を目指すべきなのではなかろうか。


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