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なぜ自動車メーカーは、モータースポーツに投資するのだろう…




自動車メーカーはなぜモータースポーツに手を出すのだろうか。2013年5月に何度目かのF1参戦を発表したホンダは、2015年からパワーユニットサプライヤーとしてF1に参戦する理由を次のように説明した。



 






「F1では2014年より1.6リッターV型6気筒直噴過給エンジンに加え、エネルギー回生システムが採用されるなど、エンジンのダウンサイジング化をはじめとした環境技術が導入されます。これらの技術への挑戦は、内燃機関のさらなる効率化や、ハイブリッドシステムなど、先進のエネルギーマネジメント技術を常に追求してきたHondaにとって、将来の技術開発や技術者の育成において大きな意義があると捉え、参戦を決意しました」






参戦の第一の狙いは「将来の技術開発に役立つ」から。第二は「技術者の育成」である。役立てた技術開発は量産車に生かすのが筋である。フィットになるかシビックになるかオデッセイになるかステップワゴンになるか、はたまたN-BOXになるかわからないが、F1参戦を通じて取り組んだ技術開発は、将来の量産車に生かされるはずだ。





「はず」と書いたのは、現行モデルからはF1技術の気配を感じないからだ。参戦して4シーズンが経過した程度では「将来」とは言わないのだろうか。振り返ってみれば、ターボ技術で一世を風靡した1980年代も、超高回転エンジンで鳴らした2000年代も、F1参戦を通じて鍛えた技術をダイレクトに感じさせるモデルはなかったような……。



 



 



■レースで負ければ「自分のせい」だとわかる



 





自動車メーカーがモータースポーツへの関わりを通じて技術者を育てる理由は、より良い製品づくりをしていくためだ。では、なぜモータースポーツで技術者が鍛えられるかというと、ひとつには開発のサイクルがとてつもなく速いからである。量産車の場合、開発期間は年単位だ。しかも、ひとりの技術者はほんの一部分の技術領域にかかわるのが普通だから、自分が携わった技術の効果で製品が売れたのか、あるいは失敗したのかを判断するのは難しい。営業的に成功しても失敗しても、実感に乏しい。





一方、モータースポーツの場合は長くて月単位、短くて週単位で開発サイクルが回る。しかも、レースでははっきり結果が出る。負ければはっきり自分のせいだとわかる。限られた時間のなかで効率良く頭を働かせ、的確に動かないと結果に結びつけることができない。だから、鍛えられる。その鍛えられた状態で量産モデルの開発部隊に戻ると、てきぱきと効率良く仕事ができるようになる。周囲も、そんなモータースポーツ出身の技術者に感化されて、効率良く、しかもパワフルに仕事をするようになる。その結果、開発が活性化し製品が良くなる。



 





そうなれば会社の利益だ。しかし一般論として、モータースポーツを通じた技術開発も技術者の育成も、声援を送るファンに内容と効果が十分に伝わっているとは言いがたい。最先端の高度な開発に取り組んでいるのはわかるが、ファンのためを思うなら、手を尽くして情報発信に努めるべきだろう。きれいに整った公式コメントだけでは、技術開発に真摯に取り組むエンジニアの態度や悔しさや負けん気や意地を感じるには不十分だ。ファンは自動車メーカーの業務遂行の様子を確認したいのではなく、技術を磨き、強敵を相手にチャレンジする様子に共感したいのだから。



 



 



■結局のところビジネスツールのひとつなのか…



 





他の例も見ておこう。トヨタがル・マン24時間レースをシリーズの一戦に含むFIA世界耐久選手権(WEC)に参戦すると発表したのは、2011年10月14日のことだった。参戦の狙いについて言及した部分を以下に抜き出す。



 






「これまでもトヨタはル・マン24時間レースに参戦してきたが、今回はトヨタが培ってきたハイブリッド技術を使い、まったく新しい挑戦となる。伝統あるル・マン24時間レースを含むFIA世界耐久選手権に、ハイブリッド車で歴史を刻みたい。また、この挑戦を通じて得られる技術のフィードバックは、トヨタのクルマづくりにつながる」




 



「モータースポーツで鍛えた技術をクルマづくりにつなげる」のは、自動車メーカーが大きなカテゴリーに参戦する際の常套句のようだ。アウディやポルシェがWECの最上位カテゴリーから撤退し、メルセデス・ベンツがDTMから撤退し、フォーミュラEに活動の軸足を移すのは(BMWも新規参戦する)、ハイブリッドではなく電気自動車の技術を磨き、クルマづくりにつなげたいからだ。





いや、クルマづくりの方が先にあり、そのクルマへの注意を引くために、モータースポーツを利用しているのかもしれない。電気自動車の販売で世界ナンバーワンの日産が、「ウチが出ないわけにいかないでしょう」とばかりフォーミュラEへの参戦を決めたように。





モータースポーツは企業の文化活動ではなく、結局のところビジネスのツールにすぎなかったのかと思い知らされるのは、収益が急激に悪化したり、不祥事を起こしたりしたときに、けじめの材料としてモータースポーツからの撤退が利用されるときである。どことは言わないが、2019年の動向が心配になる国内外のブランドがいくつかありそう……。



 





※情報は2018年12月8日時点のものです 


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