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YouTube投稿で自爆した時速280キロ男…なぜ自動車だけ「速いほうが偉い」のか?




時速280キロで自動車専用道路を暴走した疑いで、大阪市の35歳の男が道路交通法違反の疑いで書類送検されたというニュースが話題になった。場所は東大阪市の第2阪奈道路で、制限速度は60キロというから220キロオーバーの違反になる。



 



このニュースでまず印象に残ったのは、比較対象として東海道新幹線「のぞみ」を出した報道が多かったことだ。のぞみは山陽新幹線では最高速度300キロだが、東海道新幹線では285キロとなっている。単に280キロという数字を挙げただけではピンとこない人もいただろうが、のぞみという速い乗り物の象徴的存在を入れることで、一気にリアルになった感じがする。同じメディアに関わるひとりとして表現手法に感心した。



 



この時、男が運転していたのは日産「GT-R」。日本を代表する高性能車である。2007年に登場したGT-Rは3.8リッターV6ツインターボエンジンを搭載。デビュー当初から480psをマークしており、2018年型は標準形で570ps、高性能なニスモバージョンでは600psに跳ね上がっている。



 



日本仕様はナビと連動して、サーキットなどのクローズドコースのみ180キロのスピードリミッターが解除できるようになっている。男はこのリミッターを何らかの手法で解除した車両に乗っていたようだ。



 



ではリミッターを解除するとGT-Rは何キロ出るのか。自動車専門メディアではクローズドコースで計測した記録があり、300キロを楽にオーバーしている。海外の事例でも300キロ以上という報告が複数ある。しかし公道とサーキットでは条件が違いすぎる。サーキットは他の交通を遮断し、コース周辺にランオフエリアやバリアを配置し、マーシャルを配置しているからこそ、安全に高速走行ができる。一方の公道は読んで字の如く公の道であり、歩行者や自転車のいない自動車専用道路であっても、多くのクルマが走っている。それに今回280キロを出したトンネルをはじめ、避難空間は用意されていない。だから制限速度を設定していると言える。



 



 



 



■ハイスピードを美徳するのは、もはや車だけ…



 



 



そんな危険な状況でなぜ280キロ走行に挑んだのか。スピードが名誉だと思っているからだろう。たしかに自動車の世界では、今も昔も速いほうが偉いという傾向がある。速度無制限のドイツのアウトバーンを賞賛するジャーナリストは存在するし、同じドイツのプレミアムブランドは高性能であるほど上級という車種構成を展開することが多い。



 



ただしハイスピードを美徳とするこの考え、自動車界限定ではないかという感じもしている。旅客機や高速鉄道の分野では最高速競争は一段落しているし、モーターサイクルでは20世紀終わりにスズキ「隼」などが300キロを豪語したことに対し欧州勢から危険という声が上がり、近年はライダーの高齢化もあって、スピードを競うような風潮は見られない。



 



世界の高速道路の制限速度を見ると、最近引き上げを行なった国を含め、120〜130キロに落ち着いている。これが現在の自動車で安全に高速走行できる上限ではないかと考える。過剰なスピードやパワーには重税を掛けるなどして、速さに憧れる時代は終わりを迎えていることを知らしめることが大事ではないだろうか。



 



それにしても不思議なのは、男がスピード違反のときの様子を撮影した動画を「YouTube」に投稿し、視聴者からの通報が書類送検につながったという経緯だ。調べに対し男は「みんなに見てほしかった」などと供述しているそうだが、「みんな」には警察官も含まれるはず。そこまで考えが及ばなかったのか理解に苦しむ。



 



今年3月には、東京湾アクアラインを時速239キロでモーターサイクルを運転したとして会社員が書類送検されている。これも自身が投稿したYouTube動画がきっかけだった。昔も高速道路で200キロ出したなどの武勇伝は聞かれたが、捕まった人は少数だった。理由は簡単。今回の男のような自己申告をしなかったからだ。5年前、アルバイト店員の悪ふざけ投稿が原因でレストランが閉店に追い込まれたことは多くの人の記憶に新しいはずだが、SNSがその名のとおり社会とつながったサービスであることを、理解していない人はまだ多いらしい。


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