今年はとにかく異常気象が話題になった年でした。まずは年明けの大雪。特に2月上旬には北陸地方で記録的な豪雪になりました。7月には西日本豪雨が。そのあとは猛暑、そして台風の度重なる接近と上陸…。とにかく多くの災害が発生し、地震だけでなく気象災害でも数多くの方が不自由な暮らしを強いられる年となっています。
これだけ極端な気象現象が多発するのは、気候変動の影響もあるといわれています。例えば、雨の降り方が年々激しくなっていると感じる方は多いのではないでしょうか。
実際に、気象庁によると1時間降水量50㎜以上の年間発生回数や、1時間降水量80㎜以上の年間発生回数は年によってばらつきはあるとはいえ、おおむね上昇傾向にあります。
なぜ、強い雨がたくさん降るようになってきたのでしょうか。それは気温と大きな関係があります。前回の記事で、日本の気温は上昇傾向にあると説明しました。気温が高くなると、空気中に含むことのできる水蒸気の量が増えます。そのため、一旦雲ができるとたくさんの雨を降らせることができるようになるのです。
■気候変動で大型化する台風、今後はどうなる?
それでは、台風はどうでしょうか。現状では、日本への接近数、上陸数には、長期的な増加や減少の傾向は見られません。ただ、将来的には状況が変化していくだろうと考えられています。
これは2005年の論文にまとめられた研究結果で(※)、21世紀末の熱帯低気圧(台風のたまご)の発生数は現在よりも減少することがわかりました。なんとなく、増えそうなイメージがあったので、意外ですよね。どうやら、地球の気温が上昇すると、熱帯低気圧を構成する積乱雲が発生しにくくなるようです。
ただし、これは世界の発生数なので、実際に日本に接近・上陸する数が減るとは限りません。気候が変動することで、海水温の分布や気圧配置が変わるため、台風が発生する場所や経路も変わってくるからです。たとえ総発生数が少なくなっても、日本の近くでたくさん発生したり、やたらと接近・上陸するルートをとるのであれば、数はさほど減らないかもしれません。
また、発生数が少なくなるとはいえ、一度発生すると強い勢力の熱帯低気圧ができるようです。
地球の気温が上がれば海水温も上がります。台風のエネルギー源は水温の高い海水なので、日本近海の水温が上がれば、台風は強い勢力のまま日本に上陸してくるでしょう。
■温暖化しているはずなのに増える豪雪災害
それでは、冬はどうでしょうか。意外なようですが、気温が上がると豪雪災害も増えます。こちらは、2016年の気象研究所をはじめとする研究グループによるシミュレーション実験の結果、明らかになりました。
確かに気温が上昇すれば日本全体の降雪量は減ります。しかし、気温が上がれば大気中の水蒸気量は増えます。ですから、冬に気温が0℃以下となる本州や北海道の内陸部では、いざ雪が降ることになったときの降雪量がものすごいことになる傾向にあるのです。
つまり、台風や雪は、将来は発生する頻度は減るものの、極端なことになりやすいといえます。そういう状況は災害を引き起こしやすい状況でもあるのです。というのも稀にしか発生しないと、どうしても国や自治体が災害対策に予算を割くことをしなくなったり、住民が油断するなどで、災害への備えがおろそかになるからです。
そう考えると、予報が出た時点で情報を悲観的にとらえることが大切になってきます。何か自分の身に危険が迫ると、「正常化の偏見」といって、「自分だけは大丈夫」と思い込みたくなる心理があります。しかし、これからは非常に危険な考え方かもしれません。むしろ、「今までに経験したことのないことが起きる」と心の準備をしておくことをオススメします。
※ 気象庁気象研究所や財団法人地球科学技術総合推進機構を中心とする研究グループが、文部科学省の研究計画「人・自然・地球共生プロジェクト」の一環として行った研究の成果