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【インタビュー】多様性を体現する生き方!「ガール・ギャング」を結成するポートランドの女子ブルワー





ビール女子のみなさま、こんにちは!ポートランド在住の東リカです。





ポートランドの女子ブルワーをリレー形式で紹介するこの企画。3人目は、前回のジェンさんが「とってもクリエイティブ!尊敬する!」とご紹介下さったプロのブルワー、ナタリー(Natalie Baldwin)さんです。


breakside ブレークサイドブルワリー ポートランド


彼女が働くポートランドの人気ブルワリー「Breakside Brewery」のNE Dekum店にお邪魔し、お話を伺いました。


理系知識+創造力が活かせるブルワーの仕事


Natalie ブレークサイドブルワー 女子ブルワー

ナタリーさん、こんにちは!今日はドイツ出張前のお忙しいところ、お時間を割いていただき、ありがとうございます!早速ですが、プロのブルワーになるきっかけから教えて下さい。




Natalie





もともとポートランドのバレーパーキング(駐車サービス)で働いていたんだけど、学費を貯めるために、もう1つ仕事を掛け持ちしたいと始めたのがブリューパブのバイトだったの。それが最初のきっかけかな。




最初からブルワーを目指していた訳ではないんですね?


Natalie





獣医を目指してコロラド大学で生物化学とアートを専攻していたんだけど、途中で獣医になることへの迷いが生じたの。それで、大学も3年で辞めて、いろんなバイトを経験しつつ、自分探しというか、将来について考えていたの。
そんな時、自分のサロンを経営してバリバリ働いている美容師さんに出会って、「私が仕事にしたいのは、これかも!」と思った。ほら、ヘアカラーって生物化学の理系の知識が役に立つし、スタイリングにはアートの側面もある。だから彼女の通った専門学校のあるポートランドへ引っ越したの。




専門学校の学費を捻出するために始めたブリューパブのバイトで、ビールづくりに目覚めたのですか?


Natalie





そう。最初はビアテンダーで入ったんだけど、その店のヘッドブルワーがすごい人で、だんだんつくる方にも興味が湧いて…。クラフトビールも理系+創造力でしょ。幸運なことに、アシスタント・ブルワーとして、キャリアを始めることができたの。今3年半、仕事としてブルワーをしているけれど、まだまだ学ぶことはたくさんある。




もともとビールは好きだったのですか?


Natalie





常連だったコロラドのブルワリー「Great Divide Brewing」でクラフトビールの魅力に目覚めたの。その店のビアテンダーが、多分ブルワーを目指していたのか、飲みに行くたびに、ビールのスタイルや起源、歴史、彼の解釈まで色々教えてくれたの。






自分で摘んだ植物入りビール


natalie ブレークサイド ポートランド 女子ブルワー
なるほどー。今は、Breakside Breweryで働いているんですよね?


Natalie





そう。ここでは、R&D(リサーチ&デベロップメント)といって、新しいビールのレシピを開発したり、大きなタンクで作る前に、実験的につくったビールのレシピを改良したりしているの。フレッシュホップの時期はそれを使ったり、冬場にダークビールを増やすというような季節感は大事にしているけど、後は基本自由にやらせてもらってるわ。
オフの時はワイナリーでも働いてるんだけど、今は、仕事もプライベートも生活の全てがブルワーとして存在してる感じ。






それはホームブルワーとの大きな違いですね。お酒が本当に好きじゃないとこなせないですね!(笑)ちなみに、ワインづくりとビールづくりの違いって何ですか?


Natalie





美味しいお酒をつくるっていう意味でいえばどちらも同じ。でも、それをつくるまでの時間と頻度は全然違う。例えば、ジンはいつでも直ぐに蒸留できるけど、ワインはぶどうの収穫に合わせて年に1度しか仕込めない。ビールはその中間。
それにビールには、ジンの使用済みボタニカルを使ったり、ワイン樽を使ってみたりと、蒸留酒やワイン造りの技術や素材を取り込むこともできる。ビールの柔軟性と年に何度も新しい試作に挑戦できるところが、自分の性に合ってると思うわ。






面白いですね。これまでにどんなビールを開発していますか?前回インタビューしたジェンさんに、ナタリーさんはお花を使うのが得意だと聞きました。なんでも「ガーデン・パーティ」と名付けたシリーズがあるとか?


Natalie





花やボタニカルは大好き!「ガーデン・パーティ」は、アンオフィシャルな仮称なんだけど、ラベンダーやコリアンダー、モミなど、公園や裏庭に生えているような植物を使ったビールをつくっているの。
うちの店に「ホイト植物園(市内の広大な樹木園)」でも働いているスタッフがいるんだけど、杉の新芽を摘んできてもらって使ったり、植物に詳しいから、「フォレストパーク(市内の広大な森林公園)」に行って、ローズヒップを一緒に探してもらったりもしてるの。




すごくポートランドっぽいですね。ちなみに「お花を使ったビール」って女子ならではの発想だと思ったのですが、いかがですか?

natalie breakside ブルワー

Natalie





まあ、言われるよね。でも、ほら、見て(携帯でゴツい男性とラベンダーを背景にしたツーショット写真を見せてくれる)。この前も、男子ブルワーが「ラベンダービール最高!つくってみたい」って言うので、一緒にラベンダー畑に行って、花を摘んできたの。彼なんて、ラベンダーって柄じゃないとか思われそうだけど、実際は花を摘むところから真剣に取り組んでる。
このブルワリーでは夏場、ライムゼストとローズウォーターを使った『Looks Good, Smells Pretty』って名付けた軽いビールを提供していたんだけど、性別に関わらず人気があったわよ。マッチョだと頼みにくい(苦笑)ローズ入りのキラキラネームビールだけど、みんな爽やかで美味しいって。
バラやラベンダー入りビールは女っぽいから俺は飲まないっていうんじゃなくて、新しい味を知るきっかけになっているかもね。それで、何が男っぽい、女っぽいっていう先入観のバリアーを壊していける。






男子ブルワーと女子ブルワーの違いってあると思いますか?


Natalie





創造力、発想力や体力なんかは個人によるから一概には男子、女子で違うとは言えないけど、職場の力関係(ダイナミクス)は、異性が入ることで変わると思う。
力仕事も男女関係なくやるし、真面目に美味しいビールをつくれば、性別を問わず信頼関係ができる。でも、男女の違いが全くないわけではなくて、全員が男子だったところに女子が入ると、男子は発言する前にちょっと考えるようになる。例えば、男子ロッカールーム的な冗談を軽々しく口にしないような。お互いにいい意味で気を使えるようになると思う。






ビール女子の「ガール・ギャング」


Natalie 女子ブルワー ブレークサイド


プロの女子ブルワーは随分増えていますよね。その中でもナタリーさんは、かなり目立つ存在だと思うのですが。


Natalie





私は、ラッキーだったの。ブルワーになる学校も出てないのに現場で学ぶことができたのは、これまでの女子ブルワーが道を整えてくれたから。
私がブルワーになる時は、女子ってことで興味を持たれて面接に進めるとか、女子であることがむしろアドバンテージだった。そして、私をはじめ、女子ブルワーの姿が目につくようになって、他の女子が私にもできるって思い始めている。
ブレークサイドにも3人の女子ブルワーがいるわ。一人きりだと特別かもしれないけど、数が増えれば、それが普通になる。
でも、女子ブルワー同士はお互いのことが分かるというか、男子にはない特別な繋がりもあるの。私たちはその繋がりを「ガールギャング」って呼んでいるんだけど(笑)。
ギャングって言っても怖くないのよ。クールでタフな女子の集まりって感じ。例えば、ブルワーに興味のある女子が相談に乗って欲しいってコンタクトしてきたら、すぐに会う。まあ、男子でも会うけど、女子の方がこの職業に対する不安とか強いでしょ。女子ブルワーはお互いにフォローしあう。嫉妬やマウンティング抜きで。それが誇らしいの。




SheBrew」は女子ブルワーにとって重要な役割を担っていると思いますか?


Natalie


そうね。ビール女子にとって安全な場所。トランスジェンダーとかクィアも全ての女子がインクルーシブ(包括的)で、同時に女子括りというエクスクルーシブ(独占的)なところが魅力だと思う。


ナタリー 女子ブルワー ブレークサイド

SheBrew」には女性アーティストも参加しますが、ナタリーさんも、確か女子バンドとのコラボビールをつくっていましたよね?


Natalie





そう。すっごく素晴らしい体験だった!満月の夜に、このブルワリーにキャンドルを灯して、チェロの演奏と歌のライブを聴きながら、一緒に『Basic Witch』っていうバラの入ったセゾンビールを作ったの。




音楽はビールの味を変えると思いますか?たとえば音楽を聞くと、インスピレーションが湧いたりしますか?


Natalie





インスピレーションが湧くというよりも、音楽を通して人との繋がりや認め合う感覚が大事かなと思ってる。このビールをつくっていた時に、まだ残っていたスタッフがチェロの音色を聞き付けて、ブルワリーに集まって来たの。感動して泣いている子もいた。そういう特別な瞬間がそのビールのストーリーになるでしょ。お店で出す時に、その話をせずにはいられないというか。




面白いですね。他にも気に入っているビールはありますか。


Natalie





ゴーゼ(大量の塩とコリアンダーでフレーバーをつけるドイツのクラフトビール)が最近のお気に入り。塩が多すぎると重たくなるから、その塩梅が難しい。感覚の実験というか、味覚のパズルみたいなの。





ポートランド ブレークサイドブルワリー 女子ブルワー
ぜひ飲んでみたいです!最後に、日本のビール女子へのメッセージをお願いします。


Natalie





前に日本の大学生を引率してポートランドに来た女性と話したことがあるんだけど、日本は、期待される社会的枠組みやプレッシャーがすごく強いと言ってた。でも、やりたいことがあったら、シンプルだけど、やったらいいと思う。




でもそのシンプルなことが難しいんですよねー。


Natalie





まあね。分かる。私も、本当は色々苦手なことがある。例えば、ドイツ出張でビールレポートブログを依頼されているんだけど、書くのは苦手だから、人よりもすごーく時間がかかって、苦労すると思う。スピーチも苦手。でも、頼まれたからこの前、頑張ってやってみた。頭が真っ白になって、100人を前に歌ってごまかしたくらいだけど、なんとかやり遂げた。
やっている人を見ると、その人はできる人って思うかもしれないけど、実際はすっごく悩んで一歩踏み出しているってことも少なくないの。でも、やり遂げたことが自信になるから、私は強くなるために、やる方を選ぶ。
日本の女子は、社会的なプレッシャーが色々あるみたいだけど、みんな安全な場所を持つべき。もしないなら作ればいい。ビールが好きだけど、人の目が気になるなら同じビール女子で集まって家飲みしたっていいし、カロリーが気になるなら、誰かと一本シェアすればいい。ビール女子同士、お互いに守り合う「ガールギャング」を結成して、ね。






ナタリーさん、かっこいい!今日はありがとうございました!
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