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【レビュー】奪われゆく命と、生まれゆく命―『娘は戦場で生まれた』シリア内戦の真実を伝える感動のドキュメンタリー


内戦下のシリア、アサド独裁政権とロシアの激しい空爆が今なお続き多数の一般市民が犠牲になっている街アレッポ。


一国の政府が一般市民の頭上から爆弾を落としている現状について、たとえば日本に住みながら認識してる人はどのくらいいるだろう?


話題性に事欠かないIS関連の報道には飛び付きながら、シリア内戦の悲惨な現状は理解してない人が多いのでは?


日本に限らず、そもそも世界のメディアはこの状況をきちんと報じているのか?平和と協調を訴える国際社会はシリアの内情にきちんと目を向けているのか?




このドキュメンタリー映画は、このような問いを正面から強烈に投げかけてくる。


人がただ生きたいと望み、子を生み育み、子を生かしたい、爆撃で怪我を負った人を救いたい。と、痛切に願う様子を強烈な映像で突きつけることによって――


ジャーナリストを志す大学生の女性ワアドは、反政府運動を通して出会った活動家であり医師であるハムザと結婚して子を授かった。


飛行機や空爆の無い本来の空を取り戻したい、という願いからサマ(空)と名付けられたその子は、生まれたその日から空爆の爆音、振動、恐怖にさらされる生活を強いられる。



我が子サマのために、アレッポの地獄のような日々を全て映像に収めることを決めた母ワアドと、日々病院に担ぎ込まれる空爆の犠牲者たちの治療に奔走する父ハムザ。


病院だけは爆撃されないという不文律は幻想にすぎず、仲間は次々と死んでいき、事態はさらに凄惨を極めていく。


バタバタと人が死んでいく血だらけの病院で笑顔でミルクを飲むサマ。母ワアドは言う、「子どもたちはわかっている。すべてを察し、大人の表情に変わっていく。」


映画を観ながらこんなにも祈るような気持ちになったのは初めてかもしれない。


そしてその祈りが届き、驚きと歓喜で頭も心もおかしくなってしまいそうな1つのシーンがある。



かつて誰かの子供だった大人が、今も誰かの親かもしれない大人が、無慈悲に誰かの子供たちに爆弾の雨を降らせている事実。


数十行、数十秒の戦争に関するニュースに普段触れながらも、戦争を心のどこかで少し肯定してしまっているような大人にこそ見てほしい作品だ。


足りない想像力をカバーしてあり余るほどの圧倒的な映像の力を体験できる。


人を殺すことがどんなに愚かで、人が生きること、人を生かすことがどんなに美しくて尊いか・・・


そんな誰でも頭では理解しているはずのことが、まるで初めて知ったことのような新鮮さを伴って心の奥に染み渡っていく。


 


シリアの人々が今なお続く空爆の恐怖から、一刻も早く解放されますように。


 


『娘は戦場で生まれた』 あらすじ


ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始める。しかし、平和を願う彼女の想いとは裏腹に、内戦は激化の一途を辿り、独裁政権により美しかった都市は破壊されていく。そんな中、ワアドは医師を目指す若者ハムザと出会う。彼は仲間たちと廃墟の中に病院を設け、日々繰り返される空爆の犠牲者の治療にあたっていたが、多くは血まみれの床の上で命を落としていく。非情な世界の中で、二人は夫婦となり、彼らの間に新しい命が誕生する。彼女は自由と平和への願いを込めて、アラビア語で“空”を意味する“サマ”と名付けられた。幸せもつかの間、政府側の攻撃は激しさを増していき、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。明日をも知れぬ身で母となったワアドは家族や愛すべき人々の生きた証を映像として残すことを心に誓うのだった。すべては娘のために――。


2/29(土)〜シアター・イメージフォーラムにてロードショー、全国順次公開


© Channel 4 Television Corporation MMXIX


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