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【レビュー】実在の殺人犯を描いた『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』。そのリアルな日常感の怖さ


ダース・ベイダーしかり、レクター博士しかり、ジョーカーしかり、テッド・バンディしかり、これまで映画には多くの名悪役が存在してきた。


その多くは、鋭い知性だったり、容姿が端麗だったり、唯一無二の美学を持っていたりと、何らかのカリスマティックな魅力を持っていた。


しかし、本作の主人公である1970年代のドイツに実在した連続殺人犯フリッツ・ホンカは、交通事故により鼻は曲がり、斜視であり、アルコール依存症。性的な衝動に身を委ね、次々と殺人を犯す。



その対象者を見つける場所は、「明るいと酒が進まない」という理由で昼間からカーテンが閉められている酒浸りの老人が集まる酒場。


女性に酒をおごり、声をかけるが、その容姿ゆえに年老いた娼婦にしか相手にされないフリッツ。


自宅に連れ込み、暴力をふるい、レイプし、バラバラにした遺体を捨てに行く途中で面倒になり、遺体の残りを部屋の壁にあけた穴に入れて放置している。


そのせいで部屋には異臭が立ち込めているという怠惰ぶりだ。



酒場では、羞恥心をとうの昔になくしてしまったような男女が、ゆるい雰囲気で絡みあう。


引き締まった肉体の美男美女によるラブシーンもないし、機知に富んだ駆け引きもない。ただ肉体的な快楽を求め、贅肉をあらわにした肉弾戦が展開される。


その生々しいぶつかりあいは、笑いすらこみあげてくるほど、人間臭い。


好敵手が現れるわけでも、スリリングなドラマが起きるわけでもない。日常が淡々と進み、そこに暴力と殺人がすんなり溶け込んでいる。その現実感がとても恐ろしい。



監督は『50年後のボクたちは』『女は二度決断する』と秀作が続くファティ・アキン。


アルコール依存症の描写もおかしみがあるほどリアルで、また、実際1960~70年代にドイツを中心に人気を博した多数のポップスが絶妙なタイミングで使われたり、題材は重いが、ファティ・アキンならではのエンタメ性も楽しめる。


 


『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』


■監督・脚本:ファティ・アキン

■出演:ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、ハーク・ボーム

■配給:ビターズ・エンド


©2019 bombero international GmbH&Co. KG/Pathé Films S.A.S./Warner Bros.Entertainment GmbH


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