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金沢の「思い出ピアノ」は外国人との交流にも一役買う!?人を紡ぐ生の音色


北陸新幹線開通から観光客の足が耐えない石川県金沢市。その駅地下の片隅に、一台のピアノがひっそりと置いてある。それは『思い出ピアノ』という。ピアノは、金沢市立東浅川小学校で1990年から2017年まで、27年間使用されていた物で、新調した際、捨ててしまうのも忍びないとして調律し、装いも綺麗にして設置した。

「ご自由にお弾きください」という立て札があるため、通りかかった人はもちろん、若いアマチュアバンドがこのピアノを使ってミニライブを披露するなんてこともあるそうだ。

金沢には片町という繁華街にあるデパート前にもう一台、合わせて2台の「思い出ピアノ」が置かれ、時々、腕に覚えのあるピアニストがメロディを奏でる。北陸新幹線の効果で金沢は海外からの観光客が急増中ということもあり、ピアノには、英語、韓国語、中国語など、数カ国の言葉で文字が刻まれている。それを見た外国人が、おもむろに鍵盤を叩くシーンも度々あるそうだ。

台湾の女性が連弾でクラシックを奏でた。アメリカ人が坂本龍一の曲を弾いた。周囲の人は拍手を送る。スコットランドの男性が「蛍の光」を弾いた際、「これは私の国の民謡なんだよ」と話し、近くで聴いていた女子高生は驚いていた、そんなエピソードもあったという。きっとピアノがなければ話しをすることもなかっただろう。

「思い出ピアノ」は、文字通り、異国から来た旅行者にちょっとした思い出になったはず。地元の人との交流にも一役買っているかもしれない。思い出ピアノは昨年(2017年)10月に設置され、ピアノを中心としたコンサートイベントが数回行われるなど、行政も力を入れている。

世界に広がるストリートピアノ

金沢の「思い出ピアノ」という名称はオリジナルで、世界的には「ストリートピアノ」と呼ばれている。

発祥は2008年イギリス・バーミンガム市で、コインランドリーなどでよく同じ空間にいる人間が言葉すら交わさないのは変だ、と感じた男性が発案。他人が簡単にコミュニケーションを取れる方法として、一台のピアノを街の広場に置いてみたのがきっかけだ。一台のピアノを通じて、知らない人同士、大勢の人が同じ空間を楽しく過ごした。

このプロジェクトは世界中に広まり、2017年までに約50カ国で1500台以上のストリートピアノが設置されたという。ピアノが弾けても弾けなくても誰が鍵盤を触っても良くて、そこにルールはない。一台のピアノに人が集まり、歓声が沸き上がる。

アジアでは2011年鹿児島が最初。九州新幹線開通を機に、ある商店街が活気を取り戻す策としてイギリスの例に習い、古いピアノをカラフルに装飾してストリートピアノを設置した。

誰かがピアノを弾くと、その次、またその次に…とピアノを中心に人々の輪が生まれ、賑やかで笑顔の花が咲いた。これが話題となって鹿児島にストリートピアノプロジェクトなるものが誕生、県内でまたたく間に8台が設置されるほどふくらんだ。

2013年3月11日、東日本大震災から2年となるこの日、被災地である宮城県南三陸町に鹿児島県からピアノが2台、無償で寄贈された。

ストリートピアノが設置されると、大好きなピアノが津波で流され、弾くことすらできなくなった子どもたちが楽しそうに鍵盤を叩いたという。雑踏と呼ぶような耳障りな音すら消えた町に、今までになかった生のピアノの音色が響き渡るようになった。町の人々に笑顔が広がった。

現在、日本には、鹿児島、宮崎、宮城、北海道など、20ヶ所以上にストリートピアノが設置されている。楽に国境はないと言うが、一台のピアノを中心に見ず知らずの人と交流が始まるなんて素晴らしい。古くなって役目を終えたピアノの再利用の場としても、もっともっとストリートピアノが広まることを願う。

ムジカノーヴァ 2018年4月号 (2018年03月20日発売)
Fujisan.co.jpより
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