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ブラックだと言われる業界でホワイトな企業を目指せ


 父が立ち上げた会社を継ぎ、採用や営業活動に力を入れ始めた株式会社オーシーエムの代表取締役社長押田和浩さん。中途採用を始めた際、他社との差別化のために自社の強みをどう打ち出すかを考え、「人こそが企業の全て」という考えをキャッチーに伝えるべく、「家族大事です休暇」や「クリぼっち休暇」など、ユニークな特別休暇を制度化し始めました。その背景や今後にかける思いをお聞きしました。

新たな風を吹かし、土台づくりに着手

 オーシーエムは設立当時から金融業界のプロジェクトに携わることが多いシステム会社ですが、私はインフラ系エンジニアで畑が違います。それもあり会社を継ぐことは考えてはいませんでしたが「どうしてもうちの会社に来てほしい」と言われ、2008年に入社しました。

 当時の弊社は、社員が4名、パートナーが2、3名という規模で、会社というよりフリーランスの集まりといったほうがしっくりくる雰囲気でした。就業規則など会社としてあるべきものも何もなく、私はエンジニアの仕事をやりつつ、週末に会社の土台づくりをすることにしました。前職の後輩や同期から始まり、徐々に社員数も増え、3年ほど前に20人に達しました。私は2021年4月から代表取締役社長として会社を引き継いでいます。

 人員が増えてきたここ2、3年で営業にも注力するようになりました。金融業界のお客様は付き合いが長く、弊社としても強みではあるのですが、今後のことを考えると幅広い業界で仕事ができたほうがリスクは低いです。とはいえ、営業専属の社員はいませんから、仕事の合間を縫って営業し、今ではゲーム業界などさまざまな業界のお客様の案件に携わっています。

自社の強みをユニークな休暇やルールで打ち出す

 15年前に弊社に入ってから会社づくりに携わってきているので、やっていることは今も昔もそう大きく変わりません。そもそも、私は目立ちたくない性格で、縁の下の力持ちでありたいタイプのため、肩書がついたからこそ何かをやりたいという気持ちがあまり強くはないのです。独裁スタイルも好みませんから、今も昔も社員を巻き込みながら社内体制を整えていきたいと思っています。

  弊社の特徴は、一風変わったユニークな社内ルールです。きっかけは、3年ほど前から始めた求人媒体を使っての中途採用活動でした。IT人材不足が叫ばれるなか、エンジニアに選んでもらうには他社との差別化が必要です。弊社に合う方の採用につなげるためには何を打ち出そうかと考えた結果、「人を大事にする」という社風を伝えたいと思いました。

 ただ、シンプルに「人を大事にする会社です」といってもインパクトがありません。また、「休みが取りやすい」といった事実はあれど、「休めます」とだけ伝えるのも不十分です。そこで、人を大事にする会社であることを理解していただけるようなものを制度化し、一見ふざけたネーミングにしたのです。

 例えば、「クリぼっち休暇」。これはクリスマスを一人で過ごす社員を対象とした休暇です。12月中に取れる休暇で、自分の趣味活動を全力で行い、幸せを感じてもらいたいという趣旨です。逆にご家族がいる社員向けに「家族大事だよ休暇」も設けています。今年作ったのは「ビューティー休暇」。これは自分の清潔感を保つためのメンテナンス休暇です。「散髪に行くために休みをもらいます!」と活用されています。

 その他、ウェビナーを受けるための「ウェビナー半休」や平日が受験日の場合に付与される「試験日だよ休暇」など、成長意欲をサポートする休暇もあります。他にも会社ホームページにずらっと並んでいるので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。

 休みだけではなく、手当もあったほうが嬉しいだろうということで、2022年度からOCMアワードを始めることにしました。定量的な観点で判断できるものということで、「残業が一番少なかった人」「一番休みを取った人」「社内勉強会で一番講師を務めた人」「社内勉強会の参加数が一番多かった人」などを表彰し、補助金を渡すというアワードです。

 客先で案件に携わる以上、残業や休みは弊社だけで調整できないのではないかと思われるエンジニアの方もいるでしょう。弊社が働きやすい環境を維持できているのは、お客様と密な関係を築けているからだと思います。〇〇会社で見るのではなく、〇〇会社の〇〇さんとの信頼関係を大切にしており、何でも言い合える関係を目指しているのです。そのため、過度に負担がかかる環境だということになれば、コミュニケーションを取って調整をお願いできる。結果、エンジニアが安定して稼働できるため、仕事のパフォーマンスも上がるのです。

ホワイト企業認定を目指してアクション中

 今後、まだまだやりたいことがたくさんあります。東京オフィスには「No Action,No Life.」という言葉が書かれています。これは中途採用を始めた2、3年前に考えたキャッチフレーズです。私には社員に会社を活用してほしいという思いがあり、能動的にアクションできる人にぜひ来ていただきたいと思っています。「自分が成長するためにこういうルールがほしい」と言ってもらえれば検討したい。中小企業だからこそ、柔軟かつスピード感を持って反映していけると考えています。

 ひとまず直近でやりたいのは、賃金テーブルの透明化と社内イベント運営の実行委員化ですね。弊社がメインで行っているSES事業は業界的にブラック要素が多く、そのうちの一つが不透明な賃金テーブルです。そこをホワイトにしたい。今期に賃金テーブルを作ったので、近々スタートできる見込みです。

 社内イベント運営の実行委員化は、社員にぜひ手を挙げてもらえたら嬉しいなという活動ですね。これまで、ゲーム大会や勉強会、アワードなどは上層部がかじ取りをしていたのですが、エンジニアから有志を募り、1年間の任期で実行委員として主体的にやってもらおうと。その活動に手当を出そうと思っています。普段は別の現場で働いているエンジニア同士がコミュニケーションを取るきっかけになれたらいいですし、帰属意識にもつながるのではないかと思っています。こうした情報を社内報として発信もしたいですね。成功するかどうかはわかりませんが、まずは行動あるのみです。一旦やってみる、そこからブラッシュアップしていければいいと思っています。

■プロフィール

1979年生まれ、埼玉県出身。大手Sierなどでネットワークエンジニアとしての勤務を経て、2008年、父が創業したオーシーエムに入社。SEとして12年間勤めた後、2021年4月、代表取締役社長に就任。

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