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フライトパニック『非常宣言』を航空評論家・杉江氏はこう観た! 「自動操縦機能の停止など描写リアルさ、映画ならではの面白み」


韓国映画界のトップスターであるソン・ガンホとイ・ビョンホンが豪華共演を果たしましたフライトパニック超大作『非常宣言』が 2023 年 1 月 6 日(金)より公開となります。バイオテロによるウイルスによる恐怖と、墜落の恐怖に包まれる乗客たちの運命は? 手に汗握る展開の連続です。

本作の魅力や、元パイロットとしてリアリティを感じた部分などを、ジャンボ機の飛行時間で世界記録を持つ航空評論家の杉江弘さんにお話を伺いました。

▲杉江弘さん

――まずは本作をご覧になった感想を教えていただけますか。

航空映画はアメリカがほとんどなので、韓国の航空映画というのを聞いたことが無くて、まずどんな映画なんだろうと興味を惹かれました。そしてバイオテロがテーマになっていることで、僕は会社で安全推進部に所属していたので、色々な事を考えました。バイオテロというのは新手の犯罪なので、その対策ということは考えたことがありませんでした。そういう意味でとても新鮮なテーマでした。

また、映画の中で乗客がWifiを使って家族と連絡をとります。ネットが使えるので、自分たちが今どういう状況にいるのか知ることが出来るので、パイロットとは別に情報をつかんでいる。その事によってパニックも起きてしまいますが、この描写は今の時代ならではだなと思いました。

――杉江さんからご覧になってリアリティを感じたシーンはどんな所ですか?

自分がこの映画のパイロットだったらどうするだろうと考えながら観ていました。身体が前に倒れるとそのまま操縦桿にあたってしまうシーンがありました。高度とかコースというのは自動操縦で決めてくれるのですが、操縦桿に決められた以上の力がかかると、自動操縦機能が停止してしまいます。そして、地上1,000メートルくらいの場所までダイビングしてしまいますが、この描写の仕方はとてもリアルだと思いました。実際にああやって操縦桿に力が加わるとそうなってしまう。どれだけ技術が発達して、自動操縦が便利になっても起こりうる事態なわけです。

※次の質問は、一部ネタバレを含みます※

――逆に実際にはあり得ないものの、映画として面白かったシーンを教えてください。

飛行機がホノルルに行くことをやめて、成田空港に向かいますよね。その時に、日本政府の方針として自衛隊機が威嚇射撃をします。これは、今の時代にはやらないことになっています。そのきっかけとなったのが、1983年の大韓航空機撃墜事件です。大韓航空のボーイング747が、旧ソ連の領空を侵犯したために、戦闘機により撃墜されて、全員が死亡してしまいました。その事件があって、国際的に飛行機が領空侵犯したからといって威嚇射撃したり攻撃したりしてはいけないということに決まりました。現在ではこうした事態には緊急周波数という国際的に決められた周波数を使います。もしくは管制塔から連絡をします。なので、このシーンは映画ならではの展開といえます。

――杉江さんが本作の操縦士だったらどんな対応をとりますか?

航空機というのは、3分間で全ての空気が入れ替わるくらい循環が良いんですね。コロナウィルスにしても、この映画の様なバイオテロにしても、対象となる乗客から離れていればすぐに感染してしまうということはありません。映画の中でも描かれていましたが、飛行機の前方と後方で離れていれば大丈夫だと。僕がこの状況のパイロットだったら、さらに空気循環をよくする為の行動をとります。一つは機内高度というのを上げること。そうすると、飛行機の中の空気がどんどん外に出ていきます。また、ファンが飛行機についているのでファンをまわしてさらに換気をしていく。この2つはパイロットが出来ることです。

――ジャンボジェット飛行時間で世界一の記録をお持ちですが、なぜそれほどの時間、飛行機を操縦出来たのでしょうか?

航空身体検査というのがありますが、日本の検査が世界で一番厳しいんですね。その検査にクリアして免許を取得しないと操縦することは出来ません。60数個の項目があって、少し不整脈があるだけでも半年や一年操縦が許されないことがあります。僕が定年まで飛ぶことが出来たのは、健康であったことが一番だと思います。

ジャンボジェット飛行時間で世界一の記録というのも、記録を目指してやっていたわけではないですし、普通に考えたらアメリカのパイロットが一番かなと思うのですが、僕は飛行機が大好きだったこともあって、とにかく操縦をたくさんしていました。一時期は社長よりも忙しかったと思います(笑)。

――そんな長いご経験の中で、大変だったことはたくさんあると思いますが、特にピンチだったことはありますか?

3回ほどあるのですが、ベトナム戦争の時にアメリカの戦闘機と衝突スレスレになったことですね。とても恐い思いをしました。今は戦争をしている上空を飛ぶ事は出来ないのですが。あとは、車でも使う様なナビが飛行機には3つ付いていて、1つが故障しても他がカバーしてくれます。その3つとも異常を起こしてしまって、自分がどこにいてどこに飛べばいいのか分からない状況になりました。車だったら、いったん止まって考えることが出来ますが、飛行機は止まれませんから非常に苦労しました。最後は、同じ様に操縦士と副操縦士にそれぞれついているコンピューターがフリーズしてしまったことで、これはJALグループ全体でも初めての事件だったそうで、その時も恐かったですね。

――それはそれは本当に恐いですね…。すごいエピソードをありがとうございます。飛行機内での事件を描いた作品はこの他にもありますが、杉江さんが好きな 作品があれば教えてください。

『フライト・ゲーム』(2014)は、犯人が要求した金額を払わないと乗客を一人ずつ殺すと脅迫します。それをリーアム・ニーソンが演じる航空保安官が阻止していきますが、その展開が本作と同じ様にスリルがあって面白いです。『フライト』(2012)は実際にあった飛行機事故をモデルに映画化していて、実際はまず助からない状況なのだけれど、映画なので飛行機が一回転して助かります。それはリアルではないのですが、そこまでは実際の事件と同じでとても見どころがあります。

『ハドソン川の奇跡』(2016)も一部フィクションの部分もありますが、実際の事件をベースにしています。この映画のフィクションの部分というのは、主人公のサレンバーガー機長が聴聞会にかけられて、激しい追及を受けている所です。アメリカでは故意とか意図的な犯罪でない限り、パイロットがどんな緊急的な操縦をしたとしても犯人扱いをされることがありません。監督のクリント・イーストウッドが映画的な盛り上がりのために、本人(サレンバーガー機長)に許可をとって演出しています。どの映画もそれぞれ見どころが多く面白いですし、この『非常宣言』も同じ様におすすめですので、ぜひご覧になっていただきたいです。

――今日は本当に貴重なお話をありがとうございました。

【ストーリー】娘とハワイへ向かう飛行機恐怖症のパク・ジェヒョク(イ・ビョンホン)は、空港で執拗にふたりにつきまとう謎の若い男(イム・シワン)が、同じ便に搭乗したことを知り不安がよぎる。KI501 便はハワイに向け飛び立つが、離陸後間もなくして、1人の乗客男性が死亡。直後に、次々と乗客が原因不明で死亡し、機内は恐怖とパニックの渦に包まれていく。一方、地上では、妻とのハワイ旅行をキャンセルしたベテラン刑事のク・イノ (ソン・ガンホ)が警察署にいた。飛行機へのバイオテロの犯行予告動画がアップされ、捜査を開始するが、その飛行機は妻が搭乗した便だったことを知る。また、テロの知らせを受けたキム・スッキ国土交通大臣(チョン・ドヨン)は、緊急着陸のために国内外に交渉を開始する。ヒョンス副操縦士(キム・ナムギル)は、乗客の命を守るため奮闘するが、飛行を続けるタイムリミットが迫り、「非常宣言」を発動。しかし、機体はついに操縦不能となり、地上へと急降下していく。見えないウイルスによる恐怖と、墜落の恐怖。高度28,000 フィート上空の愛する人を救う方法はあるのか—?!

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