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宇宙、トランプ、国際法(中編)(梟録)



今回は松田芳和さんのブログ『梟録』からご寄稿いただきました。


宇宙、トランプ、国際法(中編)(梟録)


(前編はこちら)

http://wanntuer54.hatenablog.com/entry/2019/02/11/161400


Ⅱ.SPD-3による対応方針


 トランプ政権は、このような問題状況に対応するため、SPD-3により、各関係省庁に対する指令や政策方針を明らかにした。


 まず第1に、STMシステムの転換である。SPD-3では、STMは宇宙環境における運用の安全性、安定性、持続可能性を向上させるために、活動における計画、調整、軌道上の同調(synchronization)を意味するものとしている。現在および将来のリスクに対処するためにSTMを改善し、国家安全保障上の配慮と商業宇宙産業の発展を促すように、国際的な安全基準の形成を促進するとしている。


 STM構築の重要な点は、SSAデータの相互運用性を向上させ、より大きなデータ共有を可能にすることであろう。SPD-3では、STMのための、米国主導の最低限の安全基準とベストプラクティスを開発するとしており、政府機関は、デブリの動きを米国企業に対してだけではなく他の国にも周知し、国際的な基準等を形成することに貢献すべきである、としている。


 その際、SSAデータの保管領域(データリポジトリ)を公開するシステムを確立するとしている。すべての国の宇宙活動の安全を保つためには、宇宙空間に存在する物体の正確かつタイムリーな追跡が不可欠だからである。ただし、このデータリポジトリは全面公開ではなく、データの所有者が存在したり、国家安全保障情報を含んでいたりすれば、公開しないとしている。


 第2に、低減措置に関する規制改革である。宇宙における現在および将来のオペレーティング環境を維持するために、21世紀にふさわしい新しい低減措置の規定が必要であるとしている。その際、低減措置に関する基準やガイドラインには、人工衛星の設計から使用終了までの宇宙活動の全過程に対する規定が含まれていなければならないとしている。自国の宇宙活動に関する国家の義務を定めた、宇宙条約第6条の「許可及び継続的監督」に従った措置になるようにしている。米国国内の法律や国際的な義務に沿って、定期的に規制基準を評価し、宇宙活動の許認可に関する適切な規制環境を維持すべきとしている。


 第3に、メガコンへの対応である。SPD-3では、衛星やコンステレーションの所有者は、衛星同士の接触を防ぐために軌道の利用方法を調整することや、計画されたマヌーバ及び衛星軌道位置データの共有に関する通知、米国の国家安全保障や外交政策上の利益あるいは国際義務に及ぼす影響等を考慮する必要があるとしている。


 また、グローバルな文脈におけるSTMのための戦略や軌道上の接触を防ぐための規定、衝突リスクを低減するための標準的な技術を開発すべきであるとしている。コンステレーションにおける衛星群をライセンス化し、世界的に共通化するグローバルなベストプラクティスの開発戦略に取り組むとしている。このような方針は、メガコンに対する特別な規制を定めることを念頭に置いているようである。


 第4に、STMやデブリ低減措置に関する国際標準の形成である。前述した問題を確実に解決するためには、米国だけでなく、他の宇宙活動国もすべての国の共通の利益のために、宇宙活動に関するベストプラクティスを採用することが不可欠となる。SPD-3では、米国はその国際的な協議のために、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)やその他さまざまな国際機関を活用するとしており、国際協調の立場を表明している。国際社会に対して米国が原則を示し、他国がこれを認めるように促していこうとしている。


 デブリ低減の観点からは、まずは米国の国内において、デブリの現在の状況をより詳しく把握できるようになるSSAの向上とSTMの構築を図ること、デブリ低減措置に関する規制を改革することが重要となる。それを踏まえて、これらの国際標準の形成のためには、どのような課題があるのかといったことも重要となる。


これ以降では、以上のような問題とSPD-3による対応の方針について、現段階で論じられていることを踏まえながら、より詳細な検討を加える。


Ⅲ.STMシステムの構築


(1)国防総省による通告システムの限界


 現在、米国の空軍宇宙軍団(Air Force Space Command)が、米国戦略軍(United States Strategic Command)の指揮下にあり、宇宙物体に脅威を与えるようなデブリを追跡している。SSAカタログは、国防総省の宇宙監視ネットワーク(SSN)のデータに基づいて、空軍宇宙軍団(Air Force Space Command)の「第18宇宙管制通信隊」(18th Space Control Squadron)によって維持されている。


 2010年、米国空軍は、SBSS Block 10衛星の追跡機能を追加した。2014年および2017年8月には、静止軌道上の状況認識プログラムの一部として、軌道上の物体を監視するために4つの衛星を打ち上げた*5。2009年の米露の人工衛星衝突後、政策を変更し、米国空軍はそれ以来、世界中のすべての衛星通信事業者に接近情報を通告し*6 、毎日数百の衝突の可能性を通告している。


*5:Space-Based Space Surveillance (SBSS) Block 10,

http://www.dote.osd.mil/pub/reports/FY2011/pdf/af/2011sbss.pdf

Geosynchronous Space Situational Awareness Program, Official United States Air Force Website

http://www.afspc.af.mil/About-Us/Fact-Sheets/Article/730802/geosynchronous-space-situational-awareness-program-gssap/


*6:Commerce Department’s space mission: tracking junk in low-Earth orbit, Washington Examiner(5 1 2018),

https://www.washingtonexaminer.com/policy/technology/commerce-departments-space-mission-tracking-junk-in-low-earth-orbit


 1,400ある衛星の約75%は操縦が可能となっており、潜在的な衝突を避けるために平均して3日ごとに移動操縦を行っていると、空軍宇宙軍団のレイモンド司令官は述べている。また、宇宙ステーションに乗っている乗組員は、危険な破片が検知されたときに、避難しなければならないこともあった。ジョージ・ザムカ(宇宙飛行士)は、「ミッション中、軌道上のデブリからシャトルの窓を保護するために、上方に、あるいは前後逆に移動操作した。それでも、デブリが窓に衝突し、亀裂が入った」と語った*7 。


*7:Gone to pieces: Trump administration hopes to track and limit the debris threatening the space industry?, USA TODAY(6 18 2018), https://www.usatoday.com/story/news/politics/2018/06/18/trump-orders-control-space-junk/709710002/


 以上のように、宇宙空間に存在する物体に関する情報提供は、潜在的に衝突のおそれがある場合に、国防総省がその対象者に個別的に一方的に行うことになっている。しかし、今後求められるSSA能力は、このような国防総省の任務を超えるものとなりつつある*8 。例えば、衛星の数が増加すると、国防総省が民間企業に衝突回避の警告に費やす時間が増加する。商業宇宙活動の安全性に対する要求の増大とその複雑化は、米軍の国家安全保障に関する本来の任務を阻害することになる。その一方で、国防総省の任務である国家の安全保障と宇宙資産の保護の強化が、ますます必要とされているのである*9 。


*8:As mega-constellations loom, US seeks to manage space debris problem 6/18/2018 arstechnica, Ars Technica(6 18 2018), https://arstechnica.com/science/2018/06/as-space-gets-more-crowded-us-seeks-to-ensure-a-safe-environment/


*9:President Donald J. Trump is Achieving a Safe and Secure Future in Space, FACT SHEETS(6 18 2018), https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/president-donald-j-trump-achieving-safe-secure-future-space/


 

(2)商務省による新たなSTMシステム


 SPD-3は、衛星の運用事業者へのSSAデータの提供に関する管轄権限を、商務省に移転し、データの一般公開を図ることとした。これによって、衛星の運用事業者は、政府機関からの回避指示を待つことなく公開データから衛星運用者が衝突予測をし、自力でマヌーバができるようになることが期待される。スコット・ペース博士(ジョージ・ワシントン大学)によると、民間企業に「よりタイムリーかつ迅速な情報アクセス」を提供し、衛星経路の安全を図った計画を立てることができるようになる。これは、運用に必要な燃料を節約すること、他の物体を避けるためにより少ない操縦で済むことを意味する。また、ロケットの打ち上げをより柔軟に計画することができるようにもなる*10 。他方で、国防総省が、宇宙における安全保障上の脅威と米国の宇宙資産を保護することに集中できるようになる*11 。


*10:Trump’s space council orders a traffic control system for objects in space, THE VERGE(6 19 2018),

https://www.theverge.com/2018/6/19/17475940/trump-space-council-traffic-control-system-junk.


*11:How Does Space Policy Directive 3 Affect Space Traffic Management?, CSIS(6 19 2018), https://www.csis.org/analysis/how-does-space-policy-directive-3-affect-space-traffic-management


なお、宇宙空間上で他の物体との衝突を回避するために、打上げ時刻を調節することは、国連ガイドラインに定められたデブリ低減措置である。


 この方針については、専門家の間で評価が分かれている。米国戦略軍司令官のハイテン米空軍元次官は、管轄権源の移行は「良い考えであり、大統領令を支持する」と述べた。また、同司令官は、「商務省のような民間企業との関わりがある機関にSTMを任せれば、国防総省の資源が解放される」と述べた*12 。一方、このアプローチの最大の欠点は、データの共有に関する国家安全保障による制限と国防総省システムの能力制限によって、依然として無力なものになるといった指摘がある*13 。国防総省が構築したシステムに引き続き依存することで、商務省がサービスを改善できる程度は限定的になるといわれている*14 。一般的に言えば、軍隊組織は民間企業にすべてのデータを提供する傾向にはないので、商務省への管轄権限の移行にはこのような課題が残るのである*15 。


*12:NASA, Defense Department Support Giving Space Traffic Management Role to Commerce, SPACE NEWS(6 24 2018),

https://spacenews.com/nasa-defense-department-support-giving-space-traffic-management-role-to-commerce/


*13:Commerce Department’s space mission: tracking junk in low-Earth orbit, Washington Examiner(5 1 2018),

https://www.washingtonexaminer.com/policy/technology/commerce-departments-space-mission-tracking-junk-in-low-earth-orbit


*14:Commerce Department’s space mission: tracking junk in low-Earth orbit, Washington Examiner(5 1 2018),

https://www.washingtonexaminer.com/policy/technology/commerce-departments-space-mission-tracking-junk-in-low-earth-orbit


*15:Commerce Department’s space mission: tracking junk in low-Earth orbit, Washington Examiner(5 1 2018),

https://www.washingtonexaminer.com/policy/technology/commerce-departments-space-mission-tracking-junk-in-low-earth-orbit


 SPD-3の核心は、データにさらにアクセスしやすくすることである*16 。商務省は国防総省のカタログから情報の保有を強化するために、商業的および国際的な情報源から、SSA用の「オープンなリポジトリ」の構築に取り組む予定である。


*16:Trump’s space council orders a traffic control system for objects in space, THE VERGE(6 19 2018),

https://www.theverge.com/2018/6/19/17475940/trump-space-council-traffic-control-system-junk


 また、運輸省と商務省は、STMに関する基準とベストプラクティスの開発にも取り組む。商務省のロス長官によると、STMと民間企業活動の調整について議論するため、2019年1月までに国際的な宇宙活動の規制に関する会議を開催し、議論を進める。


商務省にSSA・STMの責任を与えることについては、一部の民主党議員の反対があったが、下院の科学・宇宙・技術委員会はこれに関係するAmerican Space SAFE Management Act(H.R.6226)を今年6月に承認した*17 。同法案は、SSA・STMの責任を商務省に割り当て、NASAにSTMの科学技術計画を策定する権限を与えている。また、商務省にSTMの社会実験を開発するよう呼びかけている。


*17:HOUSE COMMITTEE CLEARS CIVIL SPACE SITUATIONAL AWARENESS LEGISLATION, SPACE POLICY ONLINE(6 27 2018),

https://spacepolicyonline.com/news/house-committee-clears-civil-space-situational-awareness-legislation/


 

(3)意義


 新しいSTMは、「混雑した宇宙環境の課題に取り組むための新しい国家政策」である*18 。ロス長官は、「SSA・STMのベストプラクティスの確立は、安全性を高め、米国旗の下で民間企業が活動することにインセンティブを与え、米国の民間企業に損害をもたらす集団から保護するために必要である。・・・・・・宇宙における米国のリーダーシップを維持するために、我々はSTMに関する新しいアプローチを開発し、国家が現在および将来のオペレーショナルリスクに対応できるようにしていく」と述べている*19 。


*18:As mega-constellations loom, US seeks to manage space debris problem, Ars Technica(6 18 2018),

https://arstechnica.com/science/2018/06/as-space-gets-more-crowded-us-seeks-to-ensure-a-safe-environment/


*19:Remarks by Secretary Wilbur L. Ross at the National Space Symposium 2018, Commerce.Gov(4 17 2018),

https://www.commerce.gov/news/secretary-speeches/2018/04/remarks-secretary-wilbur-l-ross-national-space-symposium-2018


 宇宙空間で物体が互いに衝突しないようにすることは、衛星の運用事業者等にとって重要なことである。また、STMが構築されれば、宇宙活動を妨害する者に対し他の国が米国の衛星の活動を妨害しようとするとき、米国がその行為を把握していることが相手に伝わって牽制を図ることができるようになる*20 。SSAの向上と包括的なSTMの構築は、米国の軍事的な優位のためにも不可欠となる。


*20:「米空軍の“宇宙能力”から探るトランプの「宇宙軍」とは? - 宇宙戦闘はあり得るのか」Business Insider Japan(2018年6月25日)、https://www.businessinsider.jp/post-169961


 また、トランプ政権が、STMの管轄権限を商務省に移行する決断をしたことも注目される。商務省への移行は、商業活動の活性化に米国の復興を賭けるトランプの意向に合致するものといえる。今後の宇宙活動は、民間的で商業的な側面のある事業が強力に推進されることになるであろう。


 しかし、STMシステムがより効果的なものになるためには、把握が技術的に困難な微小デブリへの対策と、物体に関するデータの国際的な共有をどのように図るのかが明らかにされなければならない。


 

(4)微小デブリという課題


 AGI社(宇宙空間に存在する物体を分析・追跡するために民間企業や政府機関にソフトウェアを提供する会社)によると、今日の技術では10cm以上の物体を追跡することができるが、公的なカタログでは地球を周回する物体の約4%しか把握できていない。NASAのブライデンスタイン長官によれば、デブリに働く引き込みの力は、「危険であり、予測不能」であるという*21 。10cm以上のデブリは2万個以上あり、およそ毎時2万マイルという強烈な速度で地球を周回している。デブリ自体が破裂を起こしている可能性もあり、もっと小さいものは60万個あると推定されている。


*21:House Panel Hears Talk of Space Junk and Business in the Stars, Courthouse New(6 22 2018),

https://www.courthousenews.com/house-panel-hears-talk-of-space-junk-and-business-in-the-stars/


 デブリの位置と経路を包括的に示すことは現時点では不可能である。商務省の責任は、「公的および私的利用のための」SSAの「基礎レベル」を確立することになっている。物体のさまざまなサイズ、形、軌道、高度の正確な把握が、SSA・STMを効果的なものにする*22 。


*22:Commerce Department’s space mission: tracking junk in low-Earth orbit, Washington Examiner(5 1 2018),

https://www.washingtonexaminer.com/policy/technology/commerce-departments-space-mission-tracking-junk-in-low-earth-orbit


 ブライアン・ウィーデン氏(米国セキュアワールド財団)は、現在のデブリの把握方法は「一定の追跡よりもスポットチェック」の方が多く、「現時点で確実に追跡することができない1cmまでのデブリが50万個ほどあると思う」と述べている。また、John Crassidis教授(ニュージャージー州立大学バファロー校)は次のように指摘する。デブリの速度や方向を知ることは詳細な計算に依存するため、物体の経路を決定することは困難であり、また、デブリを追跡するレーダーシステムは統合されていないので、中央ハブ機能がなく、サービスの対象にできる範囲にはギャップがあるという*23 。軌道マップの構築をほぼ不可能にしているデータ結合の課題も含めて、厳しい技術的限界があるという*24 。


*23:Commerce Department’s space mission: tracking junk in low-Earth orbit, Washington Examiner(5 1 2018),

https://www.washingtonexaminer.com/policy/technology/commerce-departments-space-mission-tracking-junk-in-low-earth-orbit


*24:Trump orders the Commerce Department to create a space junk database, Washington Examiner(6 18 2018),

https://www.washingtonexaminer.com/news/white-house/trump-orders-the-commerce-department-to-create-a-space-junk-database?_amp=true


 ウィーデン氏によると、すべてコントロールされている航空交通を参考に計算すれば、地球を周回する2万個以上のデブリのうち2,000個以下しか操縦できない場合、その交通システムは安全性をより強固なものにしなければならない。2010年のオバマ政権の宇宙政策では、宇宙交通を強化することが掲げられたが、それに関する研究が実施されただけで、実際に強化策が実施されることはなかった。ただし、ウィーデン氏は、このオバマ政権の政策は、「トランプ政権の政策につながる多くの背景研究と議論と情報」を提供していると述べている。


 持続可能な交通システムは宇宙産業の急速な変化に適応しなければならないが、SPD-3はその適応に十分でないという懸念がある。商業技術を宇宙交通管理システムに取り入れる余地を残しているが、その意味がはっきりしないのである*25 。


*25:Trump’s space council orders a traffic control system for objects in space, THE VERGE(6 19 2018),

https://www.theverge.com/2018/6/19/17475940/trump-space-council-traffic-control-system-junk


 以上のように、STMの構築には微小デブリの把握の問題があるが、米国の国家宇宙評議会は、微小デブリをも追跡することができると考えている。SPD-3は、ペイントチップのサイズの金属の小片から8トンのロケットのステージまでの物体を管理するために、政府機関に「最先端の枠組み」を構築するように指示している。


 トランプ政権としては、微小デブリ対策に積極的である。ロス長官は、微小デブリの監視に取り組むと明言している。約62万個の「重大な損害または破壊」を引き起こす可能性がある物体の調査に言及している*26 。また、ロッキード・マーティン社は、「スペースフェンス」と呼ばれるシステムをほぼ完成しており、空軍のカタログを「現在のものから10倍」に向上させるとしている*27 。


*26:Gone to pieces: Trump administration hopes to track and limit the debris threatening the space industry?, USA TODAY(6 18 2018),

https://www.usatoday.com/story/news/politics/2018/06/18/trump-orders-control-space-junk/709710002/


*27:President Trump signs space junk directive aimed at cleaning up the cosmos, CNBC(6 18 2018),

https://www.cnbc.com/2018/06/18/national-space-council-trump-signs-space-debris-directive.html


 

(5)国際的連携の課題


 微小デブリが把握可能となれば、デブリ低減措置を実施すべき場面が多くなるであろう。例えば、微小デブリの分布状況が分かれば、衝突の予見可能性を高められ、運用している衛星等の衝突回避の措置を実施することや、微小デブリを把握している国は、当該デブリが衛星等と衝突する可能性がある場合、当該衛星を運用している国(者)に通告することが求められるであろう。


 現在、70の国が宇宙で運用している資産を保有しており、今後そのような保有国は増えるだろう。国務省は、STMのための国際的な透明性をどのように高めるかについて、拘束力のない指針となるものを開発するために、国際的な議論を進めるとしている。また、ロス長官は、追跡対象の範囲を広げる方法を検討すると述べた*28 。商務省が国防総省のデータを単に再利用するだけでなく、民間企業や他国の情報を活用してSSA・STMシステムを構築すると思われる。そのため、国際的な連携が必要となり、STMに関して「国際的な規範を形作る」(shape international norms)ことが求められよう*29 。


*28:America Wants to Protect the World From Space Junk, Bloomberg(4 18 2018), https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-04-17/america-wants-to-be-earth-s-space-traffic-cop


*29:Trump’s space council orders a traffic control system for objects in space, THE VERGE(6 19 2018),

https://www.theverge.com/2018/6/19/17475940/trump-space-council-traffic-control-system-junk


 以上のように、トランプ政権はSTMに関して国家間の透明性の確保を視野に入れており、他国が運用する宇宙物体をどのように取り扱うべきかについて、国際法が取り扱う領域に及ぶ。


(後編につづく)

http://wanntuer54.hatenablog.com/entry/2019/02/11/161450


 

執筆: この記事は松田芳和さんのブログ『梟録』からご寄稿いただきました。


寄稿いただいた記事は2019年6月25日時点のものです。


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