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裏社会インタビュー:「不正請求を繰り返す整骨院院長」に話を聞いた



どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。


よく眼にするようになった整骨院の看板。ここ十数年で急成長し、着実に店舗数を増やしている。なぜここまでに至ったのか。


それには医療という商売に携わったことのない素人にはわかるはずもない仕組みがある。整骨院が儲かる裏付けを取るべく、筆者は今回、脱サラ勝ち組の整骨院院長・武井氏(仮名/51歳)にコンタクトを取りました。


彼が語った整骨院業界のオイシイ金儲けのカラクリとは?



健康保険の医療費通知が高額すぎる


丸野(以下、丸)「以前、整骨院に通ったときに健康保険の通知を見ると、高額な医療費がかかっていて驚いたんですが……


武井氏「でも、あなたが支払ったのは、数百円でしょ? じゃあ、いいじゃないですか


丸「ちょっと機械で首を引っ張って、少し揉まれただけなのに……。じゃあ、国保にはあの高額な医療費を請求しているわけですよね?」


武井氏「まあ、そうなりますよね。整骨院はかなり儲かりますから……


丸「そんなにおいしい仕事なんですか?



 

武井氏「正直、この商売は毎日新聞や赤旗がどんどん叩いてくるほど、政治的な癒着がありますよ。某厚生労働省副大臣に整骨師の協会からの献金が送られたり、こんな問題が一部のメディアでは取りあげられています」


丸「そうなんですか! どういった経緯で、武井さんは院長までになったんですか?」


武井氏「食品会社をリストラされたときに、世話になっていた先輩からお声がかかったんです」


卒業までの費用は450万円


丸「その方から、柔整師の仕事を勧められたんですか?


武井氏「整骨院を3軒も経営されていて、“院を増やそうと思ってるから手伝え”と。先輩の話を訊くと、ズブの素人でも、柔整師の仕事は難しくない、と。しかもスポンサーさえいれば、脱サラで勝ち組になれる確率がかなり高いと聞きました。医師とは違い、鍼灸師や柔整師は国の認可を受けているにもかかわらず、国家資格を取得するのに3年しかかからないんです」



丸「へぇ、そうなんですか」


武井氏「さらに、厚生省認定の専門学校に入学して、カリキュラムをこなすのみ。ほとんどの学校が昼夜の2部制なので、修業として整骨院で実際に働きながら通うこともできます。専門学校なので、入学費・授業料・その他含め、卒業までの費用が450万円。それを先輩が出してくれたんです。“絶対に儲かるから! そのときに返してくれればいい”と。昼間の授業以外は、先輩の整骨院でバイトして、現場の経験を積みました


丸「揉んだりもするんですか?」


武井氏「揉みますよ、免許がなくても。何事も経験だから。スタッフから揉み方を教わって、揉みます。駅前にある院で“こんにちは~!”とか元気な声を出しているヤツっているじゃないですか。あんなの免許を持っていないヤツばっかりです。免許貸しで、名前のプレートを付けとけばバレやしません」


丸「怖いですね」



鍼灸師や柔整師の資格は3年で取れる


丸「それから、オーナーの先輩と開業の準備にとりかかるわけですね」


武井氏「はい。まずは、柔道整復師協会の協会員になります。この組合こそが、資格をお金に変える方法を伝授してくれるんです。そこから保健所に開院申請をします。手続きはとても簡単で、書類を整えて開院する店舗を登録するだけでいいから、普通の商売よりも開業は楽ですね」


丸「いいことずくめじゃないですか。そんなに簡単に開業できるのに、どうして儲かるんですか?



肩こりと腰痛程度では保険請求してはいけない


武井氏「本当のことを言うと、肩こりと腰痛なんかじゃ保険請求してはいけないんです。本当は、骨折と捻挫、脱臼や打撲みたいな外傷性の施術じゃないと保険適用にはなりません」


丸「本当ですか?!」


武井氏「整骨院の場合は、整骨院が患者に代わって、医療費を健康保険に請求する“受領委任払い”があるんですよ。これが非常においしい。整骨院側は、保険証番号と印鑑、本人の自筆サインがあれば、レセプト(診療報酬明細書)を勝手に作成して、保険外請求を手続きするんです。病名のカルテはほぼ改ざん。肩は、左肩と右肩、首、腰、これだけで最高4部位の架空請求ができるわけです。自己負担分を患者が支払えば、請求権は患者の手から放れ、水増し請求できるようになるんです


丸「あくどいですね」


武井氏「このときは、患者にレシート類などは一切渡しません。後から不正が露呈してしまう可能性があるからです。で、患者の元に届いた医療費通知には、丸野さんがやられたような高額の治療費が記載されるわけです。このダーティーワークを引き受けるのが、柔整師協会です」



<※写真はイメージです>


丸「あ~そこで登場するわけですね」


武井氏「健康保険組合や国保によって短月から3ヵ月後など、それが支払われるまでの期間は様々ですが、レセプトを月1回協会に送って、国への請求作業を約3~5%の手数料で代行してもらうんです。うまく立ち回ってくれるので、足をすくわれない。請求した施術費用は、一旦協会を通して、入金される仕組みです。取ったもの勝ちのシステムができていて、資金力がある整骨院の経営者は、できるだけ綺麗な院を建て、患者を誘い込むわけです


丸「恐ろしいですね」


武井氏「だから、患者の奪い合いです。本当に。莫大な額の支給申請ができるわけですからね。協会は他人事ですがね。柔整師の腕は大した差がないので、人柄と元気よくをウリにするわけです


丸「なるほど、だから必要以上に患者に対する態度がすごくいいんですか」



武井氏「新規開院して、集客を促進するためには《20分お試しマッサージ券》とかよくあるでしょ。“来院の際にこのクーポンと保険証をご持参ください”って書く。窓口で一銭ももらわなくたって、一筆もらい、保険証情報を控えて100円ショップで買ってきた三文判押して、4部位の請求。これも詐欺行為です。とにかく保険情報が欲しいんですよ。僕なんて、たくさん友人を招いて、保険証番号を拝借したこともありますよ」


まだまだある稼ぎ方


丸「まだ、あるんじゃないですか、儲け方?」


武井氏「さすがライターさんですね。ありますよ。事故専門の示談屋さんと組んで、自動車保険の会社から見舞金と慰謝料を引っ張ったりはしてますね。そういう整骨院は、店の至るところに“交通事故で通院中している患者様へ。保険会社から治療の状況を尋ねられても、安易に返答しないようにしてください。保険金が下りなくなります”という脅し文句が躍る紙が貼ってありますよ」



丸「怖いぃぃぃ~」


武井氏「他にも、海外への中古治療器のリサイクル販売。まぁ効かないんですけどね。十数年前に、東京と京都で、社団法人の協会が年間20億円規模の架空請求で摘発されたこともあるんだけど、未だに受領委任払いには何の制限も制約もないし。それに、最近接骨院が減って、整骨院が増えたでしょ? 整骨は、東洋医学と西洋医学を用いたマルチ療法みたいな謳い文句なんですが、実態は接骨院の名目ではやりづらい、カイロプラクティックや耳つぼダイエットなんかも扱えるように、言葉の響きを良くしただけなんですよ



最後に武井氏は、はっきりと言った。

「柔道整復の効能に実体はない。スタッフの笑顔とは真逆に、深い闇が広がっているのが整骨針灸業界なんです」と。


(C)写真AC


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