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[閲覧注意] 犯罪者インタビュー:「元薬物中毒の長距離トラッカー」に話を聞いてみた



※編注・本記事には覚せい剤を使用する際の克明な記述が含まれます。ご注意ください。


どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。


反社会勢力や芸能人以外の一般人や若年層に拡がりを見せている薬物汚染。厚生労働省の平成28年度の覚醒剤・麻薬等・大麻事犯の検挙状況件数は、13,841名。薬物押収量も最大となりました。


税関のレポートでも密輸手口はますます悪質化・巧妙化しているそうで、中国雲南省を中心に輸入が拡大しているとの情報もあります。その背景には、貧しい村人を無理やり脅したり、拉致してきた子供奴隷に精製作業をさせている組織もあるという中国製の薬物問題も横たわっています。



こうした様々な問題を抱える違法薬物。そして再犯率50%以上といわれ、常用すると社会復帰が難しいと言われる薬物常習者。その中にも血のにじむような努力の果てにきちんと社会復帰を果たした人々もいます。


今回は、覚醒剤の常習者だった久本良治さん(仮名/36歳)にインタビューをして、どのように社会復帰を果たしたのかを聞いてみました。


長距離運転手の薬物汚染はかなり深刻


丸野(以下、丸)「薬物に手を出したキッカケは何だったんですか?」


久本さん「トラックの運転手っていうのは、やっぱり過密スケジュールで疲れが出る仕事なんですよ。それで、疲れ知らずの同僚から、ポン(※覚醒剤)を分けてもらったんですわ


「ということは、長距離のトラック運転手の覚醒剤常習率は高いということですか?」



久本さん「そうですね。すべてとは言いませんが、不眠不休で運転する体力仕事ですからね。責任とストレスが二重で圧しかかってくるでしょう? よく同僚が茶封筒に入ったビニール袋を取り出して、打つところを見てたんですわ。同じように同僚が打ってくれてね。氷砂糖みたいな覚醒剤の結晶をスプーンにのせて、水を垂らして下からライターで炙る。で、テルモちゃん(※注射器の意味)に移して、同僚が僕の左腕を力強く握って内側の皮膚を擦る。すぐに浮き出た血管に斜めに針を入れて、内筒を引張っぱる。注射器に血を逆流させて、そのままシュ~と腕にシャブを入れられました


「で、どんな感じになるんですか?」


久本さん「初めは、何にも起こらへん。でもすぐ体中に冷たいメントールが駆け巡るような感じがして……。鳥肌がうわっと一気に立ったんです。僕は合わなくて死んだらどうしようって思いました。でも、その後ですわ。猛烈に幸せな感じがして、空に浮き上がるような感じになりました。無限のエネルギーが漲(みなぎ)って、超人になったような気分です」



「それが忘れられなくなると……?」


久本さん「ええ、そうです。それからは売人を紹介してもらい、自分で買いに行くようになりました。仕事中、街のいたるところに販売所があって、街を見る眼が変わりましたね」


「よく、使用量が増えると聞きますが、本当に増えていくものなんですか?」


久本さん毎回、パケ(※0.05グラムの覚醒剤が入った5センチ×4センチのチャック式ビニール袋)を2つずつ買っていたものが、耐性がつくんでしょうね。言うてる間に、2倍、3倍と増えましたよ。で、“ホクホク(※覚醒剤を打ちたて)”で仕事に精を出すわけです、寝んでもええから。また働くためにシャブに手を出す。その悪循環ですわ」


「なるほど」



久本さん「夏場はみんな半袖で仕事せんと暑うてやってられんのですけど、ポンプの跡を見られてまう。せやから、ずっと長袖着たままで仕事してました。これがしんどい。でも仕事せんとシャブ買えん。1パケ、13,000円ですから。シャブがほしいから借金をしはじめたわけです。シャブで、500万円の借金をこしらえました」


「切れると禁断症状が出るんですか?」


久本さんもう景色が歪んで見えます。幻聴、幻覚は当たり前。それよりも、誰かに追われているような感覚に陥るのがひどかったですね。幻覚とか幻聴が最高潮を迎えたときは、電柱にとまっているカラスが公安警察の手先に見えるようになってました。夜明けに信号待ちしてると、ゴミ漁ってるカラスが“久本をみつけた”“本部に至急連絡しろ”“対象者がコチラの様子を窺っている”と言ってる。ただただ“カー、カー”と鳴いてるだけやのに(笑)」


完全にイカれてますね



久本さん「そうですよね(笑)。特殊な訓練を受けた公安所属のカラスから逃げようとして、ハンドルミスを起こして、トラックで電柱にぶつかりました。事故を起こしたわけです。現場検証には尊敬している運送会社の先輩が立ち会ってくれて、“居眠り運転”で誤魔化して。(警察には)シャブやってるのがバレなかったんですけど、その先輩にバレまして……


「先輩はどうでした?」


久本さん「先輩は、シャブで廃人同様になったトラッカーを幾度となく目の当たりにしてきたそうで、もう半殺しになるほど殴られましたね。それから先輩が週末を過ごすログハウスに連れていかれて、監禁されました。山深い中に建っていて、先輩が、僕のことを熱い風呂に沈め、“シャブ抜き”をはじめました。3時間も4時間も熱い風呂の中で汗をかかされ、水をガブガブ飲まされ続け、意識が朦朧とした中で、鍵付きの部屋に閉じ込められました。その中で、禁断症状にのたうち回って、クソや小便を撒き散らして、もがき苦しんでいました」



「それが“シャブ抜き”ですか。壮絶ですね」


久本さん「乱用をやめて、完全に体内からメタンフェタミンの成分が消えたとしても、何かのキッカケや仲間からの囁き、“フラッシュバック”がもたらす禁断症状が出て、その苦しみから逃げ出そうと再びシャブを打つと元の地獄に戻る。その繰り返しで再犯率が高い。でも、“おまえは大丈夫、抜け出せるから!”と先輩が熱く語りかけてくれたんです。なんでここまでしてまで俺のことを助けてくれようとしてるんやろう、と思ったんですけど、実は先輩も元シャブの常習者だったそうです」


「そうだったんですか」



久本さん「先輩は、10年前にシャブに狂って、嫁さんに暴力をふるい、3つになった子供に包丁を向けたそうです。今、その子は兄夫婦に実子として育てられています。子供を失った哀しみは想像を絶するそうです。シャブで失ったものの大きさを知っているからこそ、必死の想いで先輩は僕を救い出そうとしてくれたんです」


「先輩にはそんな過去が……」


久本さん「私がクスリをやめられたのは、先輩と同じく、今までの生活をすべてリセットしたからです。引っ越して、シャブを買う場所も昔の仲間もすべて忘れ去りました。仕事も変えましたし。それくらいの気持ちがないと決してやめられるものではないですね、シャブは……。でも、やめないと、地獄が待ち受けています」




久本さんが新天地に選んだのは愛知県にある葬儀屋。就職し、そこで出会った年上の妻と結婚し、一児をもうけて、笑顔があふれる日々を送っているそうです。

薬物というのは、人のすべてを奪い取ってしまうというのが、今回のお話を聞いてよくわかりました。


(C)写真AC


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(執筆者: 丸野裕行) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


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