2001年から2008年に放送され、「うんちく王決定戦」や「しりとり竜王戦」、「話術王シリーズ」など人気企画を生み出した生放送の深夜バラエティー番組『虎の門』(テレビ朝日系)がAbemaTVで今年5月より復活。

当時のテレビ朝日の深夜バラエティーと言えば、『内村プロデュース』、『「ぷっ」すま』、『ココリコ黄金伝説』、『銭形金太郎』、『堂本剛の正直しんどい』、現在も続いている『アメトーーク!』など、多くのヒット番組が肩を並べていた。

そんな中で『虎の門』は「生放送でくだらないことを真剣にやる」にこだわった番組だった。ゴールデンにも進出した「うんちく王決定戦」では、くりぃむしちゅーの上田晋也さんがブレイク。カンニング竹山さんやアンタッチャブル、バカリズムさんなど、実力のある芸人たちの才能を見出してきた。

今回は、そんな番組の歴史を見続け、AbemaTV『虎の門』でもMCを務めるいとうせいこうさんにインタビュー。メディアの変化や今後やりたいことなど話を聞いた。

深夜番組はテレ朝の天下「今はちょっと落ち着いちゃったんじゃないの?」

――今は地上波では終わっていく長寿番組が多い時期ですが、そんな中で『虎の門』がネットテレビで復活というのも面白いですよね。

いとう:面白いし、おかしいよね。復活は『虎の門』をやってきたスタッフが「またいつかやりたいよね」ってちょこちょこ会ったり、同じような番組を散発的にやってみたりしていたことが大きいと思うんですよ。やっぱりスタッフは『虎の門』で学んだことの大きさや、現場の面白さがわかっているから。それがものすごい財産なんだけど、わりと今は予算の問題でその財産を手放さざるを得ない番組が多いのが悲しいところですけどね。

地上波で『虎の門』が終わった後に同じスタッフで『ジャガイモン』という番組をかっちゃん(勝俣州和)と僕でやっていたの。『ジャガイモン』はCSの番組だし、とにかくお金がないんですよ。そうしたら、「『虎の門』が好きだから」って言ってくれるスタッフが、大道具や小道具を破格の値段で作ってくれたり、手作りしたりして、その上で僕たちがやっていた。そういうことが、番組を続けられる理由としてすごく大きいのかも。「なんとかまたやりたいね」といつまでも思っている人たちがいる。

――私も深夜時代によく『虎の門』を観ていました。深夜番組はテレ朝の一人勝ち状態だったなと思います。『内村プロデュース』『「ぷっ」すま』『いきなり!黄金伝説。』(深夜時代はココリコ黄金伝説)『銭形金太郎』とか、毎日テレ朝の深夜バラエティーを観ていましたよ(笑)。

いとう:テレ朝の天下だったよね。そこが「ちょっと落ち着いちゃったんじゃないの?」と、最近テレ朝の人に話すんだよね。「今どうすれば尖ったものができるのか?」と言ったときに、ひとつはやっぱり『虎の門』みたいな番組をやっておかなきゃいけなかったねって。本当は、ああいう生放送は続けていなきゃいけなかった。サイズが小さくなってもいいから。例えば30分番組でもいいから、夜中にみんなが集まって作り続けていると、そこから絶対に何か企画が生まれるじゃないですか。それ自体が企画会議だから。残念ながら、それがなくなっちゃった。あれが痛いなって思う。

だから、『虎の門』が復活できたことはけっこう大きなことだと、僕は勝手に思っている。まず、士気が上がる。芸人たちと一緒に、今一番面白いと思えることをやっちゃっていいんだって。普通なら、ちょっと危なくて使いにくいと思う芸人をキャスティングするとか。盛り上がるきっかけになるといいなと思っています。『くりぃむナンチャラ』(テレビ朝日系)もテレビ部門のギャラクシー賞を獲っていたじゃない。

番組スタッフ:「漫才のオチの最後に『もうええわ』ってツッコミを言わなかったら相方はどうするか」の企画で獲っていましたね。

いとう:くだらないよね(笑)。やっぱり、深夜番組はそういうことをやってほしい。くたくたになって帰ってきて、テレビを観たらくだらないことをやっていて、それが面白くてさ。ニヤニヤしながら寝るわけじゃないですか。そういうことを僕もやりたい。

過去には4か国語で副音声……技術力の無駄遣いでエンタメするのがテレビ

――AbemaTV版の『虎の門』は昨年の一夜復活を経て今年5月からレギュラー化しました。ちょうど半年経ちますが、いかがですか?

いとう:どういう風にネットと親和性をもたせてやっていくのかなという課題はあって。元々、地上波時代に初回から生放送で視聴者参加型にしていたんですよ。電話を使ったモバイル投票を、ものすごく早い段階から意味もなくやっていた。それは「絶対そういう時代がくるから!」と僕も言って、無理やり入れてもらっていたんだけど。それが今度はネットの時代になって、もっとリアルタイムで参加できるようになった。でも、実際ネットでやろうとすると、システム的に昔よりちょっと時間がかかっちゃうんだよ。

――えっ、ネットなのに時間かかっちゃうんですか! 意外です。

いとう:意外にネットより電話アンケートの方がまだ速いんですよ。ITの世界には、外に出しようもない技術っていっぱいあるから、いい策を知っている人がいたら逆に教えて欲しい。「こんなことができるんだけど」って言ってくれれば、「それすぐにやろうよ!」ってなるかもしれない。例えばQRコードをずっと映し続けていて中の情報が変わっていって何かできるとか、いろんなことができると思うんですよ。それをいちいちやりたい。『虎の門』は、『技術の実験もしているんだけど、バカバカしいよね』って言われながら作ってきた、楽しいみんなのエンターテイメントだから。

――無駄に技術力を駆使するという(笑)。

いとう:そうそう! 無駄に技術力を使う。無駄にトリノオリンピック(2006年)の会場から生中継したこともありましたよ。芸人たちがフィギュアスケートをやっている振りをする「エアフィギュア」という企画があって、そのタイトルベースを、本当に開催中のトリノオリンピックの聖火台の中継映像にして「さあ、トリノオリンピックからお送りしております」とナレーションしつつ、スタジオでは思わず笑ってしまうバカバカしいことをやっていた。そういう大仰なことができるのが、テレビのひとつの面白さなんだよね。ネットはそれをやる必要はなくて、むしろ親近感のあることをやるべきなんだけど、AbemaTVは両方のメディアをあわせているから、そういうことの落差を毎回楽しみたいなとは思っています。

あと『虎の門』は生放送が一番面白いので、本当はAbemaTVでも3本に1本くらいは生放送でやりたい。そのときに、常に視聴者が参加している状態を作りたいです。みんなの気持ちや評価がグラフみたいにずーっと下に表示されているとか。ネットだと悪口みたいなものが出てきそうだけど、それ自体もこっちが面白くしちゃいますよ。「全然お前ウケてないぞ!」ってイジって笑いに変える。最終的にみんなで一緒に笑いを作っていけることが、一番いいなと考えています。

――AbemaTV版になって企画の印象は?

いとう:『声優耳打ちしりとり』なんて、よっぽどいろいろ考えた末だと思うよ。ひねくれた変な企画だもん(笑)。だって、まず耳打ちしていることがアナログでおかしいじゃない。耳打ちの場面のバカバカしさは『虎の門』じゃないとできない。電話やメール、LINEで送ってそれを読んでもらえばいいだけだけど、それを耳打ちでやることがおかしい。

(C)テレビ朝日 (画像は過去の放送より)https://abematimes.com/posts/4995860

――せいこうさんも企画の提案はされているんですか?

いとう:これまでもいくつか案を出したりしています。それを、テレビではどう撮ると面白くなるかを彼らスタッフが考えてくれる。やっぱり彼らがプロだから、それはいつも面白い。「うんちく王」のときも、間に視聴者投票を入れるのは「絶対やろうよ」と言いました。あと、ゴールデンで1時間半くらい、「うんちく王」をやるという狂気の企画がテレビ朝日で1回だけあって。そのときに「絶対副音声をやろう!」って言って、英語・イタリア語・中国語・ドイツ語の4か国語くらい副音声でやった。ドイツ語で観ている人なんてめったにいないのに、ずーっとスタジオの脇でちゃんと訳しているんだよね、同時通訳で(笑)。それも面白かったんだよなぁ。

僕は副音声が好きで、今も僕はみうらじゅんさんと“副音サー”と名乗っている。今年もテレビ東京の『第41回隅田川花火大会』の副音声をやらせてもらいました。

――観ました! 本当にずーっと喋っていましたよね(笑)。

いとう:副音声は本当に面白いんだって! ずーっと関係ないことを喋るっていう。普通の副音声って、映像の内容に合わせちゃうじゃない。そうすると、それはメインの音声と変わらないわけよ。メインの番組をそのまま観る層じゃない人たちに興味を持ってもらいたいから、あれをやっているわけです。そういうメディア的なテレビがまだやれること、ネットのモニターから観たときにやれることっていっぱいあるから、それを考えて僕らが提案して、それをエンターテイメントにしたい。そういった実験をしたいよね。

――せいこうさんは地上波の番組にも多数出演されていますが、ネット番組と違うところは?

いとう:今はネット番組が逆にテレビ化している。実は危ないなと思っているんです。ネット番組はネットっぽいことをやっていた方が面白いんだけど、地上波のテレビとあんまり変わりがなくなっちゃうんじゃないかなと思っていて。

僕はずっとNHK Eテレの子ども向け番組(『ビットワールド』 ※『天才ビットくん』から続投)を15年くらいやっているんですよ。それはずっとCGを使ってやっていて、生放送のときはデータ放送のリモコンを使って全部参加できるし、ケータイやPCを使って参加できるゲームとドラマを全部結びつけてやっている。いかにもNHKらしい実験をしているんだけど。それをやっていると、けっこう今のデジタル放送でできることってまだまだいっぱいあるんですよ。家にあるテレビのリモコンを使って、双方向のやりとりができるの。ものすごい速さで。本当はそれをもっとテレビが食いついてやってほしい。ネットも面白いんだけど「大人数でそれをやるともっと面白いんだよ」って地上波のテレビがやる。

それでネットの方は、もっとテレビでやれない、「有名人じゃないと」「何かコンセプトがないと番組が成り立たない」などはまったく抜きに、ただ面白いと思った人を集めて何かやるとか、そういうことをやってほしいです。

『虎の門』は笑いのフリースタイルバトル

――AbemaTV版の『虎の門』の楽しみ方は?

いとう:AbemaTV版はもっとユーザーの参加度を高くしていきたいと思っているので、意見をバンバン書いてもらって、自分たちが出て欲しい人とかも視聴者コメントで書いてくれたらいいと思う。そういう意味では、視聴者が遊べる道具の一つだと考えてもらいたい。

――なるほど。

いとう:いただいた意見を、プロが面白さやくだらなさを見せながら作り上げる。芸人たちがその場であんなに面白いことを考えるって本当にすごいからさ。フリースタイルバトルがラップで流行っているのと同じわけなんですよ。笑いでフリースタイルをやっているから。そういう意味では「すげえ!カッコイイな!」と思ってくれる人がいっぱいいるといいなと思っています。

――貴重なお話をありがとうございました!

他にも、「視聴者からもやってほしい企画を募集したい!」と熱望するせいこうさん。『虎の門』をきっかけに、企画力がある人を見つけ出して、芸人だけでなく「テレビを作る人を育てたい」と語り、本当にテレビが大好きなんだなということが伝わってきた。

実現して欲しい企画がある人はぜひ提案してみては? 『虎の門』から未来の放送作家が生まれるかも……!

[撮影:野原誠治]

伝説の深夜バラエティー『虎の門』(AbemaTV)
新企画は、様々なジャンルに詳しい若手芸人達が登場し、超マニアックな知識を熱くプレゼン!
日曜隔週よる10時から、テレビ朝日×AbemaTV「バラステ枠」で放送中
次回は11月4日(日)よる10時〜
https://goo.gl/8jk9Eo
※2週間見逃し配信中!

―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』

情報提供元:ガジェット通信
記事名:「昔はテレ朝の天下だった!?「『虎の門』は“笑い”のフリースタイルバトル」いとうせいこうがネットテレビで挑戦を続ける理由