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がんの標準治療を受けない危険性を、あなたは知っていますか?(がん治療で悩むあなたに贈る言葉)



今回は大須賀 覚さんのブログ『がん治療で悩むあなたに贈る言葉』からご寄稿いただきました。

※元記事のタイトルは「がんの標準治療を受けない危険性」です。


がんの標準治療を受けない危険性を、あなたは知っていますか?(がん治療で悩むあなたに贈る言葉)


本当に、本当に、皆さんに知って欲しいことがあって、今回は強い思いを持って、この記事を書きます。是非読んでいただければと思います。


ネットや書籍には、がん治療に関した大量の情報があふれています。本当に大量です。そしてその情報の中には、病院で行われている標準治療(科学的証拠に基づく最善の治療)を否定して、根拠の明確でない治療を勧めるものが多くあります。


「手術は受けるべきではない」「抗がん剤は患者を殺す」などといって、その代わりに代替療法(効果が証明されていない治療)を勧めます。癌に効くという食品や、食事方法やら、体温を上げるやら、癌の専門家からみれば呆れるものばかりです。


これはとてつもなく怖いことで、ネットに広がる情報を信じて、標準治療を放棄してしまい、代替療法を中心に治療を進めてしまい、急激にがんが進行してしまうケースが実際に多く見られています。情報は人の命を簡単に奪います。


今回は、実際に標準治療を選択せずに、代替療法を選択してしまった場合に、どのぐらいのデメリットが生じてしまうのか、実際の患者さんのデータをもとに検証した2つの研究論文を紹介して、その危険性を解説したいと思います。


代替療法のみを選ぶ危険性


最初に紹介するのはJNCIという権威ある雑誌に載った論文*1 です。この論文では、アメリカで標準治療を行わずに代替療法のみを行った患者281例の検討を行っています。患者は転移を伴わない状態で発見された患者で、乳がん・前立腺がん・肺がん・大腸がんのいづれかと診断された人です。まず、全患者の治療後の経過を、通常の標準治療を行った患者と比較したのが下の図です。


*1:「Use of Alternative Medicine for Cancer and Its Impact on Survival 」2017年8月10日『JNCI』

https://academic.oup.com/jnci/article/110/1/121/4064136



このグラフの見方ですが、縦軸が生存されている患者さんの割合を示しています。それに対して横軸は月数です。最初の0ヶ月の診断時点では100%の患者さんが生存されています。月が経つにつれて徐々に線が下に落ちているのは、この時点で亡くなられた人がいることを意味しています。


二つの治療を受けた場合の差は歴然としています。標準治療を受けた場合には6年(72ヶ月)経った時点で、約75%の患者さんが生存されています。それに対して、代替療法のみを選んだ患者さんは50%の方しか生存していません。


さらにがん種別のデータもお示しします。



左が肺がん患者で、右が大腸がんの患者のデータです。大腸がんではその差はさらに大きなものとなっていて、6年の時点で標準治療群では80%と、ほとんどの人が生存されているのに対して、代替療法のみを選んだ患者さんは約35%の方しか生存されておらず、多くの方が6年の間に亡くなられてしまったことがわかります。


この論文は、がん患者が標準治療を行わない選択をすると、長期生存率が明らかに低くなってしまう事実を明らかにしています。


情報に惑わされる危険性


もう一つの論文を紹介します。これはつい最近にJAMA Oncologyという有名誌に掲載された論文*2 です。この論文ではアメリカで、1032例の標準治療のみを受けた患者と、258例の標準治療を受けたが代替療法も受けた患者との、治療成績を比較しています。この2群の患者が持つバックグラウンド(年齢・がん種類・進行度・人種・保険種類・診断時期など)は一致させていて、治療に影響を及ぼす背景に違いはないようにしてあります。


*2:「Complementary Medicine, Refusal of Conventional Cancer Therapy, and Survival Among Patients With Curable Cancers」2018年10月『JAMA Oncology』

https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/article-abstract/2687972


この論文では完全に代替療法のみを選択したのではなく、標準治療+代替療法を選択した人の成績がどうかを検討しています。



その結果は、上の図のように、標準治療に比べて、代替療法を取り入れた治療を行った人の方が治療成績が悪いことが示されています。死亡リスクは2倍になっていることが指摘されています。


代替療法は効果があまり期待できないとしても、なぜ両方の治療を行った人の方が悪い結果になったのでしょうか?この理由は、受けた標準治療の内容を見るとわかります。


代替療法も選択した人には、標準治療の一部を拒否する人が多く、ちゃんと標準治療を受けなかったことがこの論文では示されています。代替療法も選択した人の7%が手術を拒否、34.1%が抗がん剤治療を拒否、53%が放射線治療を拒否しており、この標準治療をしっかりと受けなかったことが悪い結果につながったと、この論文は結論付けています。


これは実際に日本でもたくさん見られている事象です。代替療法を勧める人々には標準治療を否定する人が多くいます。「抗がん剤は毒だ」「手術は免疫力を弱めて、癌が進行する」など、明確な根拠のない話が山ほどついてきます。


それらの情報に暴露したことで、化学療法や放射線治療に対して否定的な見解を持ち、その結果として抗がん剤治療を行わなかったり、手術を適切に受けなかったりして、治療が不十分になってしまい、癌が進行してしまうというのは実際に日本でも良く見られることです。


間違った情報を信じてしまい、標準治療を適切に行わないと、患者に不利益を与えるということが、この論文でもわかります。


標準治療を第一に検討してください


標準治療というのは、人類の英知の結晶です。何十年という年月をかけて、何千〜何万という患者での検討を経て、現時点で最も効くと分かった治療方法です。その治療は確実に進歩しています。しかも、日本では保険適応されているため、自費の負担も少ないです。標準治療をまずは検討してください。


全世界で勧められているがん治療はこの標準治療です。WHO*3 でも、アメリカのNCI*4 でも、この科学的根拠による標準治療(手術・抗がん剤・放射線治療など)を第一に行うことを勧めています。


*3:「Cancer>Diagnosis and Treatment」『WHO』

http://www.who.int/cancer/treatment/en/


*4:「Cancer Treatment >Types of Cancer Treatment」『National Cancer Institute』

https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/types


未承認治療に過度の期待をしてはいけません


未承認治療を絶対に行ってはいけないとはいいません。がんはとても難しい病気です。残念ながら標準治療を行っても、全員が助かるわけではありません。そのため、他の未承認治療も含めて、できる限りのことをしたいという気持ちはもちろんわかります。


ただ、未承認治療の中に有効なものが隠れている確率は極めて低く(約0.1%以下)(詳しくは以前のブログ記事「未承認治療の何%が本当に効果を期待できるのか?*5 」をご覧ください)、それらを過度に期待してはいけません。


*5:「未承認治療の何%が本当に効果を期待できるのか?」2018年5月21日『がん治療で悩むあなたに贈る言葉』

http://satoru-blog.com/archives/347


保険診療している医師に相談してください


標準治療を行っている医師にまずは相談をしてください。そして、ご本人の治療に対しての疑問・不安・希望を伝えてください。医師はそれを踏まえて、一緒に治療を考えてくれると思います。


標準治療と一言にいっても、大変に多くのバリエーションがあります。どんな高齢者でも、どんな持病を持っている人でも、全員に同じ治療をしているわけではありません。


医師はその人に合わせた最善の治療を考えて行ってくれます。ネットに広がる情報に頼るのではなくて、専門の保険診療をしている医師に相談をしてください。


情報シェアは人の命を奪う


がんは難しい病気です。標準治療を行ったとしても、全員が助かるわけではありません。標準治療を行っても亡くなる人は残念ながらたくさんいます。誰かが亡くなったから良い治療ではないと、乱暴な話をする人が多いですが、全員が助かる、全員が助からないのような白黒のはっきりした簡単な世界の話ではなく、がん治療は確率的な話で考えないといけません。


とても難しい話になることが多いので、一般の方には理解しにくいことも多いと思います。それはしょうがないことです。ただ、ネットの情報を見た際に気をつけてもらいたいのは、標準治療を受けることを否定するようなものには大いに警戒してください。安易にそれらの情報をシェアして、拡散したりしないようにしてもらいたいです。そのクリック一つで行われる拡散の積み重ねが、多くのがん患者さんを実際に苦しめて、命を奪うことすらあります。


最後にお伝えしたいこと


ネット・書籍で広がるがん治療情報には注意をしてください。特に、標準治療を否定して代替療法を進めるものには警戒してください。この二つの論文が示したように、標準治療を適切に行わないことは大変な危険を伴います。根拠のある標準治療を第一に考えてください。保険診療をしている医師に相談するようにしてください。


もう一つお願いしたいのは、ネットに広がる信憑性のはっきりしない、がん治療情報を安易に拡散しないでください。本当に正しいのか、もう一度考えてもらいたいです。あなたが安易な気持ちでシェアした情報は、本当に貴重な人の命を奪う可能性があります。多くの人がこの問題をもっと知ってもらって、がん患者さんが安心して治療を行えるようになってもらいたいと願っています。


執筆: この記事は大須賀 覚さんのブログ『がん治療で悩むあなたに贈る言葉』からご寄稿いただきました。

※元記事のタイトルは「がんの標準治療を受けない危険性」です。


寄稿いただいた記事は2018年10月30日時点のものです。


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