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「お話ってどんなことをお話したらいいの?」幼妻にコミュ術をレクチャー! 妻同士の対面で語られた注目の内容…… ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~



ホームシックで帰りたい!でもなかなか里帰りできない理由


さて、昨年皇太子妃になったちい姫こと明石の女御は、ずっと実家に帰ってきていませんでした。入内してから約1年。皇太子のお気に入りで、里帰りの許可が下りなかったのです。


気苦労も多く、慣れない宮中暮らしで彼女はホームシックにかかり、「お家に帰りたい、お父さまお母さまが恋しい」と辛がってばかり。しっかりしているとはいえ、12歳くらいの子が初めて親元を離れて生活していたのですから、無理もありません。


辛い苦しいと思っていた夏頃、ついに女御は体調を崩します。それでもなかなか許可が下りずに困っていたところ、実はご懐妊であることが判明。皇太子にとっては最初の子です。


オメデタは喜ばしいことですが、何と言ってもまだローティーン。大人の体に成長しきっておらず、お産のリスクは非常に高くなります。理由を聞いて皇太子も許可を出し、ようやっと六条院に帰ることができました。


「会話の仕方わからない」幼妻にコミュ術レクチャー


明石の上と共に久々に六条院に帰ってきた女御は、ちい姫時代のお部屋ではなく、女三の宮の寝殿の東側を居室にしました。寝殿は最も格の高い殿舎ですから、プリンセスたる皇女と皇太子妃が住まうには最適な場所です。


紫の上は久しぶりの対面のついでに「せっかくなので、宮さまにもご挨拶をいたしましょう。前からそう思ってきたのですが、これを機に仲良くしていただけたら嬉しいわ」


源氏は2つ返事でOKし、紫の上は髪まで洗って念入りに仕度を始めます。でもこれは宮よりも、明石の上への配慮。かなり仲良くなったとは言え、やはりどうしても意識される相手なのでしょう。


源氏はその間に宮のところへ出向き、紫の上が挨拶に来る旨を伝えます。宮は「恥ずかしい。お話って、どんなことをお話したらいいの?」。ええ~~~~~……。


それもそのはず、たぶん宮の今までの生活では、女房やお父さま(朱雀院)から話しかけられて受け答えすることはあっても、見知らぬ人と”会話”するなんていうことはなかったに違いない。加えて、ユーモアとかウイットなどを面白がるどころか、すべて真に受けてしまうような天然ちゃんなお方なのです。


源氏はまたもや面食らいます。「こっちの方が恥ずかしいよ」とは思うものの、紫の上がせっかく挨拶したいと言ってくれているわけだし、その厚意を無にするのも申し訳ない。でも、宮のこんな様子を見られるのは相当マズイなあ。


「お話というのは、相手の言葉に適切に応じていけば自然と成立するものです。優しいお姉さまのような人だから、よそよそしくせず心を開いてお会い下さいね」。源氏もここへ来て、コミュニケーションの初歩を教えなければならないとは思わなかったでしょう。トホホ。


「今夜は苦情が出ないはず」絶望する妻と真逆な夫の行動


自分から言いだしたものの、寝殿へ向かおうとする紫の上の胸中は鬱屈としたものでした。


「今の今まで、光源氏の正妻と自分でも思い、世間にもそう思われてきたのに。ついに私は寝殿に住むことなく、新たにやってきた高貴な幼妻に挨拶しようとしている……」。寝殿は主人と正妻が住むところ、何故ここまで来てこの屈辱を味あわなければならないのか。


落ち度があると言えば、まるでさらわれるように源氏の手元で育てられ、そのまま夫婦になってしまったこと。源氏はきちんと結婚の形を取ってくれたけど、親元で世間へのお披露目をするような結婚式ではなかったせいで、こんなことに……。紫の上自身には責任のないことととはいえ、なんともやるせない気分です。


いろいろ考えても疲れるだけ。それならできるだけ穏やかに、優しくと心がけているものの、何気ないお習字の手習いに選ぶ和歌は心変わりや失恋の歌ばかり。無意識にそんなものばかり選んでいる自分に、彼女自身もハッとします。


紫の上は見られないよう紙を隠していましたが、源氏はめざとくそれを見つけて、いつも通り「そんなことはない。むしろ変わったのはあなたのほうだ」


それはもちろん本当の気持ちで、実際に源氏は宮が輿入れしてから、紫の上に惚れ直したといっていいほど。その聡明さや優しさは、彼女をより一層輝かせ、毎日会っているにもかかわらず「どうしてこんなに美しい人がいるのか」と感動を禁じえません。源氏の目には、去年よりは今年、昨日よりは今日……と日に日に優雅さと艶麗さを備えていくように見えます。


しかし、そう思っているにも関わらず、源氏はまたまた朧月夜の元へエスケープ。奥さん2人が対面して会話するなら、今夜はそのどちらからも苦情が出ないだろうというわけです。


「初めての時よりも新鮮だった」美熟女・朧月夜の抗えぬ魅力に負け、自制しなくてはという意識とは裏腹に、源氏は浮気に走ります。懲りないねえ。


妻同士の対面!語られた注目の内容は?


寝殿を訪れた紫の上は、まず女御と明石の上に再会。実母が世話をするようになっても、紫の上と女御の絆は深く、実の親子以上の親しみを持っています。


そしていよいよ女三の宮との初顔合わせ。いざ会ってみれば、宮は無邪気で、おっとりした可愛らしい女の子という感じです。女御(ちい姫)は宮より少し年下ですが、あちらは大人ぽくなって美しい感じだったのに……。


紫の上は自然といたわる気持ちになり、互いにいとこ同士である血筋の縁などを話したあと「宮さまは絵巻はお好きですか?」とか「私もお人形遊びが大好きで、なかなかやめられませんでした」など、宮が関心を示しそうな話題を振ります。


妻同士の対面は明石の上に次いで2度目。その時はちい姫を中心に、大人の女性同士のリスペクトがあったわけですが、今回は他愛のない娯楽の話題に終始。


誰でも初対面の相手との会話の話題選びは難しいものですが、宮の様子からして、折り合えそうなのは絵巻やお人形の話ということになったのでしょう。娘の女御とだってもうそんな話はしないのに。ましてや、明石の上とは相当な差です。


紫の上の気遣いも知らず、宮はただおっとりと「殿のおっしゃった通り、お姉さまみたいな優しい方」と気を許し、打ち解けて話をしました。一応、会話にはなったようです。よかった。


更に紫の上は宮の乳母を呼んで、これからは是非親しくお付き合いをさせていただきたい、気になる点があれば何でも言ってほしい、と気遣いをみせます。


行き届いた配慮に乳母も恐縮し「大変ありがたいお言葉です。出家された朱雀院さまも、どうか他人行儀でなく親心を持って接していただければと……」と、その態度に信頼を寄せます。


紫の上は朱雀院からも念押しされているので、源氏と共にこの宮の保護者的な立場も受け持たざるを得ないのです。「本当に、その節は恐れ多いお手紙を頂戴しましたのに、大してお力にもなれず申し訳ないことです」などと言う他ありませんでした。


丸く収まり好循環生まれる、しかしその内情は…


これを機に紫の上と女三の宮には交流が生まれ、何かにつけて手紙をやり取りする間柄になりました。


何かとセレブのゴシップが好きな世間は「宮さまがお輿入れされて、紫の上さまはどうなるだろう」などゲスの勘ぐりをしていましたが、結果的に源氏は以前にもまして紫の上を大事にし、その紫の上は宮を立てる好循環に。丸く収まってウワサのしがいもなくなり、自然と収束していきます。


これも「仕方のない事態なのだから、穏やかに優しく」ありたいと考える紫の上の機転がもたらした良い結果、と言えるでしょう。それは彼女が妻として果たすべき義務であり、一種の美学のようなものです。しかしその分、彼女自身の辛さや苦しみはやり場をなくし、心の中はひどく疲れて傷ついています。


そばで見ている源氏には紫の上のちょっとした仕草にも、その辛さがにじむよう。申し訳無さも手伝って、ますます彼女への愛おしさが湧き出てきます。このまま源氏40歳の年は数々の祝い事に彩られて暮れ、年明けにはいよいよ女御(ちい姫)の臨月を迎えることになります。


簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。

3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html

源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/


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(執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


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