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【書籍】本気で馬鹿馬鹿しいから笑える『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』


%e5%86%99%e7%9c%9f-2017-06-26-21-33-23_f先に言っておきます。誤解を恐れず言えば、この本、実にしょーもないです。かなりくだらなくて馬鹿馬鹿しいのですが、キッチリ徹底してやってます。畏敬の念すらおぼえます。


「全力で無駄なことをやりきる」ということに、久しぶりに出会えた感あるこの書籍のタイトルは『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』

なんとなく実用書っぽいタイトルこそ付いているものの、おそらく全く役に立ちません。


この本にはあらゆる作家、文化人の文体や口調をトレース、エミュレートした“カップ焼きそばの作り方”が書かれています。例をあげてみましょう。


もしも村上春樹がカップ焼きそばの容器にある「作り方」を書いたら。


きみがカップ焼きそばを作ろうとしている事実について、僕は何も興味を持っていないし、何かを言う権利もない。エレベーターの階数表示を眺めるように、ただ見ているだけだ。


             *


勝手に液体ソースとかやくを取り出せばいいし、容器にお湯を入れて三分待てばいい。その間、きみが何をしようが自由だ。少なくとも、何もしない時間がそこに存在している。好むと好まざるとにかかわらず。


             *

 

読みかけの本を開いてもいいし、買ったばかりのレコードを聞いてもいい。同居人の退屈な話に耳を傾けたっていい。それも悪くない選択だ。結局のところ、五分間待てばいいのだ。それ以上でもそれ以下でもない。


             *

 

ただ、一つだけ確実に言えることがある。


             *

 

完璧な湯切りは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。


古くは『2ちゃんねる』や『はてなダイアリー』でも“爆発コピペ”として作家風の文体いじりが多数登場しました。「背後で爆発音がした」という文章を作家ごとにアレンジするのですが、その筆頭として登場するのが村上春樹氏であり村上龍氏でした。現在ではその“戯れ”が「カップ焼きそばの作り方」としてtwitter上で続いています。

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この本はそうした“戯れ”を1冊にまとめたものなのです。もうひと方、紹介してみましょう。


もしも太宰 治がカップ焼きそばの容器にある「作り方」を書いたら。


第一の手記

 申し上げます。申し上げます。私はお腹が空いてしまいました。このままでは得意のお道化芝居もままなりません。空腹に耐えかね、私は台所の戸棚を出鱈目に開けました。

 これは、ヘノチモン。

 これは、パビナール。

 これは、カルチモン。

 うわっはっは、と私は可笑しくなりました。これは真っ当な人間の生活ではありません。



第二の手記


 私は賭けに出て、最後の戸棚を開きました。カップ焼きそばがありました。

 カップ焼きそばは、まずお湯を入れなければいけません。私に立ちはだかったこの敢然たる事実は、私を湯の沸騰へと向かわせました。

 点線まで蓋を開け、かやくを振りかけて、お湯をかける。そうれ、俺ならできる。自分で自分を鼓舞しながら、私はお湯を注ぎ込みました。

 私に湯切りをする資格があるのでしょうか。きっと、あるのです。あるはずなのです。

「許してくれ」

 そう呟きながら、私はお湯を捨てました。


第三の手記

カップ焼きそば。


良い湯切りをしたあとで一杯のカップ焼きそばを啜る。

麺から立ち上がる湯気が顔に当たって

あったかいのさ。

どうにか、なる。


こんな感じです。ほかにも松本清張、沢木耕太郎、百田尚樹、糸井重里などなど、ひたすらこんな感じで続きます。その数、そろいもそろってなんと100人分。内訳はこちらです。


作家系:62人

評論家系:6人

ミュージシャン系:2人

文体が特徴的なもの:18種

その他(口調・画像パロディ):10種


ちなみにこの「画像パロディ」を手掛けているのは“イタコマンガ家”としても名高い(?)田中圭一先生。コンセプトが一貫しすぎています。

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個人的に「本当ひどくて好き」だと思ったのは「池上彰のそうだったのか! 学べるカップ焼きそば」と「イケダハヤト まだカップ焼きそばで消耗しているの」、「[対談]村上龍 × 坂本龍一」「ヒカキン カップ焼きそばを食べたらすごかったw」あたり。怒られるんじゃないかって思います(笑)。


100パターンもあると、おそらく知っている文体にきっと出会うでしょう。出会って爆笑するか失笑するかはわかりませんが、あなたの日常に思わぬ潤いを与えてくれるような気がします。


『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)

神田桂一・菊池 良/著

定価:980円(税込)

発売:2017/6/7


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