アプリのイメージ

人間は誰しも自分の感覚を基準に考えてしまうものだ。これは無意識な自然の傾向であり、意識していても自分とは異なる立場の人の見方を理解するのは難しい。

こうした傾向が現れるのは、国ごとの文化や家庭の習慣といったバックグラウンドについても、身体的な障害のようなハンディキャップについても同様だ。

前者は相手の文化に関する知識と寛容な心を身に着けて対応するしかないが、後者については体験によって多少なりとも理解できることがある。

体験の例としては、車椅子体験や妊婦体験などが有名だ。車椅子を使えば坂道や段差を上るのがいかに大変かが分かるし、視点の低さゆえに自動販売機や流し台で遭遇するトラブルにも気が付く。

遺伝や目の怪我によって見え方が健常者と異なる人の状況を体験するには、VRやARといった技術を利用するのが有効だと考えられている。

LightHouse for the Blindは来月18日、サンフランシスコで小さなカンファレンスを開催する予定だ。ここで、視覚に異常がある状態を再現できるアプリケーションのリリースが予定されている。

視力の障害を経験する

メガネをかけたままでも使える

メガネをかけたままでも使えるVRゴーグル

中には視覚に異常を抱えているデザイナーもいるが、多くのデザイナーは正常な視力を持っている。そうした多数のデザイナーにとって、自分がデザインしたものが他の人からどのように見えているのかを想像するのは難しい。

自動車のような乗り物や建造物、インテリアにソフトウェアのインターフェイスといったものをデザインする人々は、正常な視力を持つ人にとって使いやすいデザインを作る。だが、ときにはそれが特定の人々にとって非常に使いにくいものになっていることもある。

見栄えを良くするために選んだ看板の配色が、ある色を認識できない人にとっては読めない状態になっているかもしれない。近眼では気づかないような文字サイズで設定画面を作ってしまっていることも、よくある話だ。

LightHouseのEyewareは、そうした人々に障害がある人の見る世界を体験させる。

VR・ARという選択肢

これまでにも、視力の専門家は障害を抱える患者の視界を再現するための工夫を行ってきた。彼らは、特殊なレンズを使ったゴーグルやプラスチックのフィルターを組み合わせるアナログな方法を採用していた。

こうした方法にも意味はあるが、疾患ごとに一つのアナログデバイスを用意しなければいけないのが欠点だ。多数の状態を次々に試すのは難しい。

Eyewareは、アナログな方法の代わりにVRとARを活用する。Eyewareはリアルタイムに障害がある人の見ている世界をシミュレーションし、ユーザに見せことができる。

VRやARをこの目的に使うのは、Eyewareが初めてだ。Theia Immersive Systemsが開発したこのアプリケーションは、ユーザにこれらの技術の効率性と利便性を示すことになるだろう。

Eyewareアプリの役割

虫眼鏡でスマートフォンを見る男性

フォントサイズの指定も重要だ

Eyewareアプリの機能

Theia Immersive Systemsが開発したEyewareアプリは、リアルの世界にフィルターをかけることで視覚に異常がある状態を再現する。言ってみれば、写真編集アプリの持つフィルター機能を強化したような効果だ。

ただ、このフィルターは旅先で食べたものをおいしそうに見せたり、肌をきれいに見せたりするために設計されたものではない。それぞれ、疾患の影響でどのように見えるものが歪むかに基いている。

先天性の色覚異常や緑内障、糖尿病性網膜症といった疾患に合わせて見え方を変化させるのだ。

EyewareはCardboardやその他のヘッドセットで使用する。VRとARの技術を組み合わせて作られたこのアプリは、正常な視力を持つユーザに新しい気付きを与えるだろう。

なぜアプリなのか

このアプリによって視覚に問題を抱えた状態を経験することは、彼らがデザインする製品に変化をもたらすことになる。また、このアプリを通して製作途中の製品をチェックすれば潜在的な不便さを早い段階で修正することにも繋がるはずだ。

言葉や写真、あるいは映像によって疾患による見え方の違いを伝えるのは難しい。白内障による見え方の微妙な変化から網膜症による大きな変化まで、視力に影響を与える程度や性質には多様なバリエーションが存在するからだ。

知識を得て経験を積んだデザイナーならば、正常な視覚を持たない人からどのように自身の作品が見えるかを推測することはできる。しかし、そうした人にとって使いやすい状態を探るのは簡単なことではない。

だからこそ、Eyewareを使う意味がある。Eyewareでリアルタイムに見え方を確認しながら調整することで、多くの人にとって見やすいデザインを製品として提供することが可能となる。

 

VR・AR技術の新しい活用例として、面白い試みだ。将来はデザイン段階でこうしたアプリを使うのが当然になるのかもしれない。

障害を抱える少数の人にとっても使いやすいデザインが積極的に採用される社会は、健常者にとっても快適なのではないだろうか。

 

参照元サイト名:LightHouse
URL:http://lighthouse-sf.org/blog/see-your-designs-through-someone-elses-eyes-a-new-virtual-reality-experience/

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情報提供元:VR Inside
記事名:「VRとARで目の異常を体験できるアプリケーション