バーチャルな世界を現実のように楽しめるのがVR。
ただ現在のところ、一般的なVRデバイスで現実のように楽しめるのは「ビジュアル」と「サウンド」。
注目を集めているのが「触感」で、これから対応するVRデバイスが登場するという段階。
なので、現時点ではバーチャルな物体を触って楽しむ…というのは難しい状態だ。
ただ、我々はこの現実世界を「視覚」「聴覚」「触覚」だけで感じ取っているわけではない。
五感にはあと「嗅覚」と「味覚」が残っている!
この記事では残る2つのうち、「嗅覚」を取り上げたい。
記憶と密接な結びつき!?意外と影響が強い嗅覚とは
「嗅覚」とは、「匂い」を感じ取る感覚のこと。
我々が「食べ物の味」と思っているものの大半は実は「嗅覚」によって感じ取っている。
筆者はかつて日本酒利き酒師やビールのソムリエと言われるビア・テイスターとして活動していたが、その勉強の際、食べ物の味の8割は嗅覚によって感じ取っていると学んだ。
誰もがこれを実感できるのは風邪の時で、鼻が詰まってしまうと「甘い」「酸っぱい」といった感覚はわかるのに、食べ物の味はわからなくなってしまう。
これが「嗅覚」ナシで「味覚」オンリーの状態。
このため、VRによって「嗅覚」が実現すれば、疑似的にではあるがある程度「味」も楽しめるという状態になりそうだ。
また、「嗅覚」は記憶と密接に結びついていると言われている。
このため、「おにぎりに巻かれている海苔の匂い」を嗅ぐと小学校の運動会や遠足のことを思い出してしまう…なんてことが起こる。
これを活用すれば、エンターテイメント分野においてノスタルジーを刺激するVRコンテンツなども作れそうだ。
たとえば、駄菓子屋のお菓子の匂いを再現することで、ユーザーは子どものころのあの日を思い出して胸がしめつけられる…なんてVRコンテンツも作れるだろう。
VRを持っていなくても映画館で体感できる!4DX映画
実はこうした「嗅覚」のVRは、夢物語や研究中の話ではなく、既に実用化され、商品として一般に出回っている。
その代表的なものが「4DX映画」だ。
「4DX映画」とは、上映施設に様々なギミックを仕込んで映画を「鑑賞するもの」から「体感するもの」へと変える仕組みのこと。
ギミックには、座席が前後上下左右に動いたりバイブしたりといったモーションギミック、劇場内に風を送り込むギミック、劇場内に煙幕やシャボン玉を出すギミック、顔に風圧や水のミストを吹きかけるギミック…などといったが用意されている。
このギミックの中のひとつとして、劇場内に香りを噴き出すというギミック…つまり「嗅覚VR」的なギミックが存在しているのだ!
ただ、映画によってどのギミックが採用されるかはわからず、映画によっては全く使われないギミックもあるため、「4DX映画」を観に行ったからといって必ず「嗅覚VR」ギミックを体験できるとは限らない。
筆者が最近観た中だと、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」では「嗅覚VR」ギミックが使われていた。
…映画が映画なので、爆発の匂いなどに使われていて、あまり素敵な気分にはなれなかったが…。(ちなみに、映画そのものは超おもしろかった!)
実はすでにある!?VR嗅覚デバイス「VAQSO VR」「FeelReal」「Nosulus Rift」!
4DX映画で「嗅覚VR」が実現している通り、コンテンツ内の展開に応じて匂いを作り出すという技術そのものは、未知のものではない。
わかりやすく説明するためザックリ乱暴にいってしまえば、コピー機がトナーを混ぜ合わせるように、コンテンツの展開に応じて香料を混ぜ合わせて放出すればよい。
つまり、十分実用できるものだ。
このため、実は既にVR嗅覚デバイスが存在している!
2017年内にリリース予定!PSVRでも使える「VAQSO VR」
お菓子の「スニッカーズ」と同サイズのデバイスを、「HTC VIVE」や「プレイステーションVR(PSVR)」「OculusRift」といった従来のVRヘッドセットの下に磁石で装着。
ワイヤレスでコンテンツと連動し、コンテンツの展開に応じて内蔵する匂いのカートリッジから匂いを放出する。
まだリリースはされていないが、2017年冬のリリースを目標としているため、意外と早く体験することができそうだ。
匂い以外に風や湿気、熱も再現!「FeelReal」
匂いだけではなく、風や湿気、熱なども再現できるというマスク型のデバイス。
マスクの内側に匂いや風や湿気、熱を出すための機構を用意。
「VAQSO VR」同様、匂いを出すためにはカートリッジが必要となっている。
「サウスパーク」ゲームのキャンペーンとして使われた!?「Nosulus Rift」
ゲーム「South Park: The Fractures But Whole」のキャンペーンに用いられた「嗅覚VR」デバイス。
キャンペーンではシニカルな笑いに満ちた「サウスパーク」作品らしく、ゲーム内でのおならの匂いを体験できるというものだった。
Bluetoothによってコンテンツと連携。
もちろん、匂いはカートリッジによって交換できる。
触感VRや嗅覚VRが普及すれば自宅でエステ可能な時代に!?
「嗅覚VR」デバイスは、「技術としてはスゴイけど、実際にコンテンツの魅力がアップするの?」と思う人もいるかもしれない。
特に「4DX映画」の場合、映画内の環境を再現することに留まってしまっているため、「なくてもいい」と思う人もいるだろう。
だがVRヘッドセットとの連携によって、「4DX映画」のような「不特定多数での匂い体験」から、「個人的な匂い体験」に変わる時、大きくVRコンテンツの価値がアップするハズ!
たとえば「サマーレッスン」でヒロインの宮本ひかりちゃんが近づいた時、ほのかに石鹸の香りがしたら…?
さらには「VR彼女」で…と考えると、もうコレ、スゴイことにならないワケがない!
また、実用用途で考えた場合も、嗅覚VRデバイスと、振動を生み出せる触感VRデバイスとを組み合わせて、自宅でリラクゼーション体験やエステ体験ができるVRコンテンツなども開発できそうだ。
ただそのためには、VR嗅覚デバイスが普及した上で、各VRコンテンツ側も対応する必要がある。
個人的に「嗅覚VR」を楽しめるのはまだまだ先のことかもしれないが、娯楽として楽しむ意味でも、ビジネスとして期待する意味でも興味深く見守っていきたい!
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