starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

徹底検証!2017年、VRとARはどちらが「買い」なのか?


2016年はVRヘッドセットおよびVRコンテンツが一挙に華開いた「VR元年」である一方で、「ポケモンGO」が世界的な成功したことでARにも注目が集まった。


最近のVR/ARビジネスニュースでは、度々「VRとARのどちらが将来性があるか」について、例えばApple CEOのTim Cookの発言が紹介されることがある。VRとARはともに成長が見込まれるテクノロジーではあるものも、両者を比較するような報道が続くと、比較に関してシロクロつけたくなるものである。


本記事では、複数の調査機関から発表されたレポートを参照しながら、「結局、VRとARのどちらが買いなのか?」という疑問に対して、答えを探していく。


成長予測から見るVRとAR


グラフ1:三菱総合研究所が発表したVR/AR市場予測

グラフ1:三菱総合研究所が発表したVR/AR市場予測


2016年5月20日、三菱総合研究所は「VR/AR技術の将来展望」と題されたレポートを発表した。その内容は、タイトルにある通り、VR/ARの市場予測である。


同レポートによるとVRとARの世界市場規模は、2020年にはVRが60億ドル・ARが420億ドル、2025年にはVRが80億ドル・ARが800億ドルほどに成長すると予測している(グラフ1)。この予測値を信じるならば、2020年にはARはVRの7倍、2025年には実に10倍の市場規模になる(註)。


ARがVRを大きく凌駕する理由には、VRデバイスがVRヘッドセットのみで普及するのに対して、ARデバイスはスマホやタブレット、さらにはHololensのようなメガネ型デバイスにも実装できるという広範な普及領域を持っていること、さらには街頭に表示するAR広告のようにリアルな世界に広大な潜在的市場を有していること、といったことが挙げられている。


同レポートの予測が信憑性が高いとすると、2016年時点ではVRはARに先行しているが、数年のうちにARの方が圧倒的に普及することになる。


三菱総合研究所発表「VR/AR技術の将来展望」

http://www.mri.co.jp/opinion/column/tech/tech_20160520.html


(註)グラフの数値は、本記事執筆ライター自身が上記研究所に問い合わせて確認した。


ハイプサイクルから見るVRとAR


ハイプサイクルとは何か


グラフ2:ハイプサイクルの概念図

グラフ2:ハイプサイクルの概念図


テクノロジーが社会に普及する場合、重要なのはユーザーのテクノロジーに対する理解度だ。PCやスマホのような社会に定着したテクノロジーは、まずユーザーにそのテクノロジーの存在が知られ、次いで長所・短所が理解され、最後には当たり前のモノになっていく、というように段階的に普及する。


アメリカの調査会社ガートナーは、最新テクノロジーが市場においてどのような理解度の段階にあるかを示す「ハイプサイクル」を毎年発表している。


VRとARは、近年のハイプサイクルにおいて毎年、その市場理解度の段階が評価されている。このハイプサイクルに基づいてVRとARの普及度を見ると、市場予測では見えない局面をうかがえる。


それぞれのハイプサイクルを見る前に、簡単にハイプサイクルの各段階を説明する。一般にテクノロジーは、5つの市場理解度の段階を経て、社会に定着する。その5段階が以下である(グラフ2)。



  • 黎明期:新テクノロジーが発表され、注目を浴びる時期

  • 「過度な期待」のピーク期:注目を浴びるあまり、過度な期待が寄せられる時期

  • 幻滅期:過度な期待が裏切られ、関心が薄らぐ時期

  • 啓蒙活動期:テクノロジーの可能性が適切に理解され始める時期

  • 安定期:社会に定着し、次世代テクノロジーの開発も始まる時期


ハイプサイクルにおいては、横軸が市場理解度、縦軸が市場の期待度とした座標平面に、注目すべきテクノロジーがプロットされる。ハイプサイクルを用いると、テクノロジーが発明された直後の黎明期から「過度な期待」のピーク期にかけては市場の期待度が急激に上昇するが、理解が進むにつれて期待がしぼんで幻滅期に入り、やがてテクノロジーの適切な使い方が分かるにつれて期待度が緩やかに再上昇し、社会に定着する、というプロセスを直観的に可視化できるのだ。


夜明けを迎えたVR、夜明け前のAR


グラフ3:2016年のハイプサイクル

グラフ3:2016年のハイプサイクル


2016年8月25日、ガートナーは2016年版のハイプサイクルを発表した(グラフ3)。VRとARは、「仮想現実」と「拡張現実」という名称で同サイクル上にプロットされている。


VRは、ハイプサイクル上にプロットされたテクノロジーのなかで唯一、啓蒙活動期を迎えている。このことは、VRには幻滅するようなマイナス材料がないこと、そして徐々に理解が進んでいることを意味している。ハイプサイクルから見ても、2016年は「VR元年」だったのだ。


ARは、未だ幻滅期の坂をくだっている。とは言っても、間もなく幻滅の坂の底に至り、啓蒙活動期に向かう兆候もうかがえる。


近年、ARが幻滅の坂を転がっていた理由には、Google Glassの登場とフェードアウトが指摘できよう。同デバイスは発表された当時、ポスト・スマホのデバイス・プラットフォームになることを期待されたこともあったのだが、結局はコンシューマー版をリリースしないで今日に至っている。


だが、さらに注意を要するのは、ARは未だ幻滅の底に至ってないので、まだ幻滅する余地が残されている、ということだ。


ガートナー 2016年度ハイプサイクル

https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20160825-01.html


2017年、何が「買い」なのか


安定成長のVR


以上に引用した市場予測とハイプサイクルの両方を考慮して、VRの今後の市場動向を一言で言うならば「安定成長」であろう。


VRに関して、これから大きく失望してしまうような要因は少ない。主要なVRヘッドセットはリリースされ、VRコンテンツも順調に開発されており、まさに盤石の体制が整ったと言える。だが裏を返せば、今後、2016年に経験したような急速な成長は見込めないのではなかろうか


歴史的に見て、ITプロダクトが流通するプラットフォームの形成には、ネットワーク効果が作用する。ネットワーク効果とは、ネットワークの加入者数が、ネットワークの価値に影響を及ぼす現象のことだ(註)。ネットワーク効果が作用した最も分かり易い例は、PC OSにおけるWindowsの普及である。WindowsはMacに比べて圧倒的に優れているわけではないが、ユーザーを増やすことに成功した結果、プロダクトの性能とは関係なく圧倒的なシェアを獲得できた。つまり、ただ単に使っているヒトが多いというだけで(大きなネットワークを形成できただけで)、市場を支配できるのだ。同様の例は、スマホOSにも見られ、かつて語られた「第三のOS」が実現しなかったのも、ネットワーク効果が強く作用していたからだ。


Oculus Rift、VIVE、PS VR、Daydream View、そしてGear VRとおよそ今日の技術レベルで普及する可能性のあったVRヘッドセットは、すべて出揃い、それぞれ一定のシェアを獲得しつつある。今後、仮に(画素数や視野角といった)スペック的に優れたVRヘッドセットをリリースしても、まさにネットワーク効果が働くので、シェアを延ばすのは困難が予想される。


総合的に見れば、2017年のVR市場は、ハードウェアの淘汰が進み、VRコンテンツの開発競争が激化するだろう。ハードウェア市場の膨張が一段落するので、市場成長は2016年ほどではないだろう。


(註)ネットワーク効果については、以下を参照。wikipedia 「ネットワーク外部性」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E5%A4%96%E9%83%A8%E6%80%A7


「ルネサンス前夜」のAR


ARの今後の市場動向を一言で言えば「ルネサンス前夜」だ。


Google Glassの一件で幻滅されたARだが、今年は「ポケモンGO」によってユーザーの注目を再び集めることに成功した。そんなARを啓蒙活動期に引き上げるようなデバイスの第一候補は、言うまでもなくHololensだ。続く候補は、噂の絶えないApple製のARデバイス(iPhoneにAR機能が実装される可能性もある)、そして謎に包まれているMagic Leapだ。


すでに開発版とエンタープライズ版がリリースされているHololensが、2017年のAR市場を牽引すると見るのが最も自然であろう。そうなると、ARデバイスはVRヘッドセットとは反対にビジネスユースから普及していくのかも知れない。


また、日増しにリリースの可能性が高くなってきているApple製ARデバイス(機能)には、一挙にコンシューマーに普及するポテンシャルが秘められている。Appleの支持層と現在のiPhoneユーザーが、ARデバイスになだれ込むことは容易に予想できるからだ。


いずれにしろ、2017年、AR市場は大きく開花する可能性が高い


もっとも、こうしたARデバイスは、ユーザーを失望させてしまう要因を少なからずはらんでいる。今年リリースされたVRヘッドセットの場合、ゲームというシンプルにVRエクスペリエンスをユーザーに体験させるコンテンツに恵まれていた。翻って、ARデバイス候補に関しては、果たしてユーザーにその魅力を伝えるコンテンツが現れるのか、という疑念が残る。


結局、どちらか?


以上、多角的にVR/ARの市場動向を考察して来たが、改めて「結局、VRとARのどちらが買いなのか」に立ち返ろう。


2017年は、AR市場が大きく動く。投資をするならばARだろう。しかし、リスクも伴う。


当然ながら以上の考察を信用するか否かは、本記事リーダー各位の判断に委ねられている。


ちなみに、ガートナーは2016年10月31日、2017年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10を発表したのだが、そのなかにはAIやブロックチェーンと並んで、VRとARがリストアップされており、どちらの成長も見込んでいる。


ガートナーが発表したテクノロジ・トレンドのトップ10のプレスリリース

https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20161031-01.html


Copyright ©2016 VR Inside All Rights Reserved.

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.