VR体験をよりリアルなものにするために、VR空間でモノに触ることができる触覚(ハプティック)技術の研究が行われています。

多くの場合、グローブ型のデバイスを手に装着して触覚を再現するやり方が多いですが、ドローンを使って触覚を生み出すという、ユニークな研究が発表されました。


ドローンを使ってVR空間に触覚を生み出す?

この研究は

・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン

・ダルムシュタット大学

・ウェルズリー大学

・デュースブルク=エッセン大学

・レーゲンスブルク大学

の共同によるものです。

これらの機関が発表した論文「VRHapticDrones: Providing Haptics in Virtual Reality through Quadcopters(クアッドコプターによるVRへの触覚の提供)」では、ドローンによってVR空間に触覚を生み出すための手法を提案しています。

カスタムしたドローンが、VR空間内の「モノ」の役割を果たす

「VRHapticDrones」で使用するドローンは、Parrot社製の「Rolling Spider」ですが、ドローンにはユーザーが触ることができる様々な形状のサーフェスを取り付けることができます。

このドローンはユーザーの動きを追跡して、VR空間内にあるオブジェクトの位置と同期します。

ユーザーはVR空間内のモノに触れると、同時にドローンに触れることになり、あたかもVR空間内でモノに触っているかのような感覚になります。

この手法によって再現できる触覚は様々で、たとえばコーヒーカップやイスなどの静止物、もしくは野生動物などの動くものにも対応しています。

トラッキング用デバイスでユーザーの動きを正確に把握

このシステムではユーザーの身体全体の動きをトラッキングする必要があります。

そのため、本システムには6DoF(6自由度方向)のトラッキングが可能なMotive OptiTrackソフトウェアと、専用カメラのOptiTrack Flex 3カメラを12台使用しています。

また、ユーザーが装着するOculus RiftにはトラッキングセンサーのLeap Motionが取り付けられており、この組み合わせによって4m x 4m x 3mの広範囲にわたって、ユーザーの手や身体の動きを把握します。

トラッキングの精度はサンプルレート100の信号伝送が可能で、ミリ単位でのズレの殆どない正確な計測が可能とのことです。

3種類の触覚を再現可能

論文では、この手法によって再現できる触覚は3種類あると述べており、受動、能動、そして静止状態の触覚を再現できます。

この3つの触覚を実際に体験するために、研究者らは専用のVR体験を制作しました。内容は以下のようになります。

VRの水中で様々な触覚を体験するデモ

デモ用のVR体験では、視界が薄ぼんやりした海中を再現しており、そこには光り輝く球体の生物が浮かんでいます。

ユーザーが手を伸ばして球体に触ると、球体に手が触れた感覚が伝わります。これはユーザーが現実世界でフワフワと(受動的に)浮かんでいるドローンに触れたためです。

そして次のシーンではサメが登場し、ユーザーに向かって(能動的に)泳いできます。

サメの鼻の部分に触ると感触がありますが、この時触ったドローンの先端にはサメの鼻を模した形状の物体が装着されており、これを触ることで本当にサメに触れたかのような感覚があります。

また、VR体験の終盤では、釣り糸にぶら下がったワームが(静止的に)VR空間内に登場します。これを掴んで持ち上げたり、持ったまま動くこともできます。

このように、ドローンによって様々なシチュエーションでの触覚を再現できるので、VR体験中のリアリティがより向上します。



どんな分野で実用可能に?

この手法はユニークなアプローチを取っていますが、ゲームをはじめ様々な業界で実用できるものだと、論文では紹介しています。

特にVRゲームでは、VR空間内の様々なモノに触れることが多いので、たとえばアトラクション施設のVR体験などでは活用できそうです。また論文では、

本手法の実用シナリオとして、たとえば建築やデザインなどが考えられる。車のデザイナーなどはVRHapticDronesのメリットを享受することが可能だ。デザインを行う過程において、たとえば顧客がVR空間内の車に(受動的に)触れることが可能であり、オーダー前の参考材料にできる。

と、述べています。

ですが、本手法はまだ実用レベルには至っておらず、現時点でユーザーの身体をトラッキングするには身体の各所にマーカーを取り付ける必要があり、手間を要します。

また、ドローン操作の複雑さもあり、デモ体験時にはドローンを1台しか使用できませんでした。

ですが、Bluetooth接続により、一度に5台までのドローンを同時飛行させることが可能とのことで、操作方法の改善によってVR空間で更に多くのモノに触れることが可能になります。

VRの触覚技術は様々な企業や機関が研究を行っていますが、ドローンを使って触覚を生み出すというアイデアはユニークですね。今後の発展が楽しみです。

まとめ

ドローンを使って、VR空間に触覚を生み出すというユニークな研究が発表されました。

使用するドローンには、ユーザーが触れることができるサーフェスを取り付け、ドローンの動きをVR空間内のモノと同期させます。これによって、VR空間内のオブジェクトに触れると、まるで実際に触ったかのような感覚が得られます。

静止物や動くもの、またユーザーが能動的に触る際など、様々な状況での触覚を再現できるとのことで、VR体験のリアリティをより向上させる技術です。

まだ様々な面で改善を必要とする技術ですが、本手法を用いた様々な実用ケースも考えられます。今後どのように発展していくのか気になります。

参考サイト:VRScout









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情報提供元:VR Inside
記事名:「ドローンでVRに触覚を生み出す!様々なタイプの触覚を再現!