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沈没船を引き上げずにVRでバーチャル探検を可能にする取り組み


メアリー・ローズの船体

1982年に引き上げが行われたメアリー・ローズの船体


深い海の底に沈んでしまった船を引き揚げるのは容易なことではない。


特に古い時代の船は航海記録が失われて沈没した地域がはっきりしていなかったり、海流によって記録にある地点から流されてしまっている可能性も高い。


運良く沈んでいる場所を特定できたとしても、引き揚げ作業には大きなコストがかかってしまう。そのため、財宝が積まれている、非常に高い歴史的価値があるなどの特別な理由がなければ場所が分かっても沈んだままにされることが多い。


沈んだままでは調査も難しく、「船の残骸があるけれど、由来は分からず正体不明」というパターンも珍しくない。


だが、VR技術を使えばダイビングのライセンスがなくても沈んでしまった船を見ることができるようになりそうだ。


サルベージの代わりに


メアリー・ローズの船体から排水する様子

メアリー・ローズの船体から排水する様子(The Timesより)


メアリー・ローズ


イギリスは日本と同じく島国で、日本が戦国時代だった1500年代には既に大規模な艦隊を整備していた。


1545年にイギリス艦隊の旗艦としてフランスの艦隊と戦い、沈没したメアリー・ローズは当時のイギリスの国力を示す軍艦(キャラック船)だ。全長は30メートルを超えており、当時の船としては大型である。


このメアリー・ローズは1982年に遺物が引き揚げられ、船名がそのまま付けられたメアリー・ローズ博物館に展示されている。


イングランドの歴史環境保護を行う公共機構Historic Englandによれば、引き揚げて展示するというスタイルが取られるのはこの船が最後になるかもしれないという。


VRを使った探検


メアリー・ローズのように船体を引き揚げて博物館に展示すれば、一般の来館者も気軽に貴重な歴史資料を見ることができる。


ただ、沈没船のサルベージには非常に大きなコストがかかる。多くの作業者が必要で、彼らへの支払いが必要なだけでなく危険を伴うこともある。


そこで、VRヘッドセットを使って沈没船を探検することを可能にするアプローチが考えられている。


VRコンテンツを製作するだけなら、メアリー・ローズの引き揚げプロジェクトほどには費用もかからず、人員も削減できるだろう。


Historic Englandの海洋考古学者を束ねるMark Dunkleyは、メアリー・ローズのプロジェクト完了までに長い時間がかかったことを指摘する。


「VR技術を使うのは、私たちに可能な、現実的なことを行うためです。


メアリー・ローズの引き揚げは私がまだ少年だった1980年代に行われましたが、そのプロジェクトの最終段階となる博物館が完成したのは昨年になってからです。


このように大規模なサルベージ計画が再び行われることはないでしょう。だから、引き揚げの代わりにVRで沈没船を保存しているのです」


VR化の現状


保護されている沈没船マップ

保護されている沈没船マップ


現在、5隻の艦艇(HMS Invincible、HMS Colossal、HMT Arfon、Coronation、HMS/m A1)をVRで探検できる。


さらに、現在もその数を増やすための取り組みは続けられているという。


イングランドの沖には、他にも17世紀から18世紀頃のものとみられる大砲で武装した商船やドイツ軍のUボート(第一次世界大戦で多くの商船やイギリスの戦艦・装甲巡洋艦などを沈めた潜水艦)を含む53の沈没船が保護されている。


保護されたこれらの遺物を無許可で調査したり取り除いたりすると違法になってしまうが、まだ艦名も特定できていないものが多い。さらに、潮の満ち干きや土砂によって遺物がダメージを受けてしまう可能性もある。


沈んだままでは大砲や大砲の玉といった海水による侵食に強く形の残りやすいものの外側しか見ることができないため、特定が難しいという。


Historic Englandの提供するOculusRiftを使うか、または安価なCardboardによってこれらのVRツアーを体験できる。


ブラウザからも、Historic EnglandのサイトでVRツアーの閲覧が可能だ。


遺物を保存する


水深の浅い場所では気象条件によって影響を受けやすいが、深い海の底や海底の泥の下は比較的安定した環境だと言える。


水に弱い素材や錆びやすい金属の保存には適さないが、風雨に晒される地上に比べて保存状態が良い遺物も少なくない。だが、長く海に沈んだままにしておけば徐々に崩壊が進んでいってしまう。


引き揚げて管理することができないならばHistoric EnglandのようにVRでそれを残すという取り組みも必要かもしれない。


 


日本では、第二次世界大戦で活躍した潜水艦伊58の特定を目指す海中探査映像の中継がちょうど明日から行われるようだ。


海底という人の目が届きにくい場所に沈んでしまった歴史の遺物にも、ロボットやVRといった技術の力で再び光が当たる時代が到来している。


 


参照元サイト名:Historic England

URL:https://historicengland.org.uk/get-involved/visit/protected-wreck-dive-trails/


参照元サイト名:The Telegraph

URL:http://www.telegraph.co.uk/news/2017/08/19/no-mary-rose-style-excavation-ships-will-explored-using-vr-instead/


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