ARヘルメットに助けられながらガスタービンを組み立てるエンジニア

ARヘルメットに助けられながらガスタービンを組み立てるエンジニア

鉄道・交通関連や生産設備などの広い分野に跨る事業を展開するドイツの企業シーメンス(Siemens AG)は、ロサンゼルスのスタートアップ企業Daqriが開発した産業用ARヘルメットのテストを昨年の夏に行っている。

その結果は非常に肯定的なものだったらしく、今後数ヶ月で前回よりも大規模にARヘルメットの導入に向けたテストを実施するという。

昨年のテスト

DaqriのSmart Helmet

テストに使用されたDaqriのSmart Helmet

昨年シーメンスが実施したテストは非常に小規模なもので、「導入に向けたテストを行うかどうかを決める事前検証」といったところだ。

ベルリンのテストセンターで行われたこのテストでは、わずか4人のエンジニアが被験者としてAR表示機能を持つスマートヘルメットを着用した。

彼らがARによるサポートを受けながら行ったのは、1,000ポンドの強力なガスバーナーを組み立てる作業だ。このバーナーはガスタービンの重要なパーツであり、構造も複雑だ。

ヘルメットは段階を踏んでガスタービンの組み立て方を示し、パーツの三次元構造を表示した。

テスト結果

シーメンスでAR/VRに関わる研究開発を監督するVossnackerは、「非常に肯定的な結果が得られました」とコメントしている。

過去にガスバーナーを組み立てた経験のないエンジニアの一人は、45分で組み立てを終えたという。

被験者はもちろん素人ではなくエンジニアだが、もしARによるサポートがなければバーナーの組み立てはもっと時間のかかる作業だ。

Vossnackerによれば、初めてなら丸一日かかるという。

現場での有用性

 

ARヘルメットを使えば紙のマニュアルやタブレット端末を手で操作しながら作業する必要がないため、作業を止めずにマニュアルを確認でき、大幅なスピードアップに繋がる。

Vossnackerはもう一つ重要な点として、Daqriのヘルメットが現場で使えるだけの耐久性を有していることを挙げた。

「当社の作業員たちは、ホコリや泥にまみれ、低温や高温に晒される過酷な環境で働いています。

当社は非常に頑丈なツールを必要としていますが、そうした環境で使うのに適したデバイスはあまり存在しません」

利用イメージ

ガスタービンのように多数の部品から構成される複雑な機械では、組み立てに利用したパーツのシリアルナンバーを正確に追跡することが重要だ。

各パーツに割り振られたシリアルナンバーを管理していれば、パーツの寿命を予測して故障する前に交換の予定を立てることができる。

トラブルが起きたときの検証でも、このナンバーが役に立つ。

伝統的な組み立ての工程では、組み立て作業者が使用したパーツのシリアルナンバーを手作業でメモし、スキャンして管理チームに送るという方法が採用されている。

だが、このプロセスではしばしばミスが起きてきた。メモを紛失したり、ナンバーを転記するときに間違えたり、データベースへの入力から漏れてしまうこともあるだろう。

ARヘルメットは音声認識に対応しているので、作業者が読み上げたシリアルナンバーを記録することが可能だ。

記録されたナンバーはまとめて印刷することも、データとしてそのままメールに添付して送信することもできる。

他の業務での利用

ARヘルメットを付けた作業者

ARヘルメットを付けた作業者

昨年のテストで、シーメンスはARヘルメットが組み立て作業の高速化に役立つことを示す結果を得ている。

次に計画されているテストでは、組み立て以外の業務にもARヘルメットが有効かを調査する予定だ。

テストの規模

昨年のテストに参加したエンジニアはわずか4人だったが、次回のテストは前回よりも大規模なものになる予定だ。

参加するエンジニアは数十人規模になるという。

テスト内容

シーメンスの組み立て作業者がどんなに丁寧に作業をしたとしても、定期的にガスタービンを止めて点検や摩耗した部品の交換を行わなければならない。

これを怠れば大きな事故に繋がる可能性がある重要なプロセスだが、ガスタービンを止めれば停電が起きてしまう。

停電は可能な限り短く済ませたいというのがシーメンスや電気を利用する消費者の本音だ。

今後数ヶ月で行われるテストでは、ARヘルメットの使用によって停電の時間を短縮することができるかを確認するという。

教育への利用

教育と言えばARよりもVR技術を使ったトレーニングがメジャーだが、VossnackerはARヘルメットを教育に使うことにも関心を持っている。

発電所を管理する業務では、必要なスタッフを雇用し、教育しなければならない。

ARヘルメットを使うことで現場に居ながら分からないことを調べられるようになり、すぐに発電所に慣れることができるという。

VRで現場をシミュレーションしながらのトレーニングはマニュアルを読むよりも実践的だが、ARを使ったトレーニングはそれ以上に効果的なのかもしれない。

 

VossnackerがThe Wall Street Journalに語っているように、ビジネスをする上で時間は常に重要だ。

DaqriのARヘルメットによって組み立てやメンテナンスに必要な時間を短縮できるならば、導入を検討するという企業も多いのではないだろうか。

ただ、このARヘルメットは多数のセンサーを搭載した高性能デバイスなだけに15,000ドル(165万円)と高価だ。

特に従業員の教育に関しては、VRならばもっと安価に現場をシミュレーションしたトレーニングが可能だ。ARには未熟な状態でも実業務に出せるという強みがあるが、デバイスの金額には大きな開きがある。

節約できる時間に対して高いと見るか妥当と見るかは、その企業の考え方次第である。

 

参照元サイト名:The Wall Street Journal
URL:https://blogs.wsj.com/cio/2017/07/31/siemens-expands-testing-of-augmented-reality-helmet/

参照元サイト名:VR Room
URL:https://www.vrroom.buzz/vr-news/products/siemens-expands-testing-ar-helmet

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情報提供元:VR Inside
記事名:「シーメンスがARヘルメットの試験規模を拡大