「ゆりかごから墓場まで」という言葉がある。

元はイギリスにおける、国民全員への無料医療サービスや国民皆保険制度を含んだ社会福祉政策のスローガンだが、iモードの立役者の一人である夏野剛氏もこの言葉を使っている。

夏野剛氏が使ったのは、「生まれた時に携帯電話の番号が振り当てられ、死ぬ時にオールリセットできる」という構想を表してのこと。

つまり、人間一人の一生とともにあるサービスとしてiモードをイメージしていたわけだ。

いまでは、iモード携帯よりスマートフォンの方が主流となってしまったが、携帯電話によるインターネットサービスは「ゆりかごから墓場まで」とはいかないまでも、人の一生の大部分においてなくてはならないものとなった。

そんな中、VRも、人の一生の中でカバーする領域を広げつつある

そこでこの記事では、「ゆりかごから墓場まで」の「墓場」の方、つまり「葬祭業界」とVRの関わりについて紹介したい。

 

日本人のお寺離れ!?話題を呼んだAmazonの新サービス

日本は無宗教な国と言われるが、葬祭のことを考えた場合、主流が「仏教」であることに改めて気づかされる。

どんな宗教の方式で葬儀を上げるかはもちろん個々人の自由であるものの、現代の日本において葬儀を行う場合、お坊さんを呼んで戒名をつけてもらい弔う…という形式が一般的だろう。

ただ、この一般的な形式も、衰退が進みつつある
寺院消滅 寺院消滅
鵜飼 秀徳氏著の「寺院消滅」によれば、 日本全国にある約7万7000の寺院のうち、約2万の寺院が住職不在だとという。

この背景にはお寺とのかかわりを持たない世代の増加が影響している。

核家族化によってそもそも親戚付き合いが減っていたり、都市部で一人暮らしを選択したため家の行事に出ることが減ったりといった理由で、法事に出席した経験を持たないという人は、読者の中にもおられるのではないだろうか。

結果として、家族が亡くなった際にどうすればいいかわからない、葬儀の依頼方法がわからない、葬儀の金額がわからないといった人も少なくない。
[お坊さん便] 法事法要手配チケット (移動なし) [お坊さん便] 法事法要手配チケット (移動なし)
こうした層に対応したサービスとして、2015年末に「お坊さん便」というサービスがAmazonでの販売を開始している。

3万5000円の固定料金でお坊さんを手配できるというサービスで、「宗教行為を商品化している」と仏教団体から批判を浴びた

確かに旧来の習慣である「お布施」には、「個人を大切にする想い」を反映するという宗教的側面があるため、3万5000円という固定料金制は完全にビジネスとして割り切ったように見える…というところはあるかもしれない

ただその一方で、寺院が衰退しつつあり、また人間の生き方、宗教観というものが変わっていく中「これまでの形のままでいいのか?」という課題もある。

 

他人事ではない!?高齢化社会と終活

VR 高齢化
自分が死ぬことはもちろんのこと、家族や身近な人の死など、考えて気持ちのいいものではない

だからなるべくなら考えずに過ごしたい。

寺院や宗教的な行事などが疎遠になってくると尚更そう思ってしまうところだが、そうもいかない。

なぜなら、未来の日本を待っているのは高齢化社会だからだ。

弔い方や自分の死だけでなく、介護や認知症とどう向き合うか?

いわゆる「終活」について、今からでも改めて考えておいた方がいいと言えるだろう。

昨今、墓を建てずに自宅で骨壺を保管する「手元供養」や、インターネットでお墓参りする「サイバー霊園」など、従来の宗教観から離れた新たなサービスも登場している。

そして、中には、VRを使った葬祭サービスもある

 

VR・ARを使った葬祭業界のサービス

360°パノラマVR会館見学

VR 葬祭

出典元:e葬祭

360°パノラマVR会館見学は、葬儀業界様向け業務支援サイト「e葬祭」が提供する、葬祭業者向けのサービスだ。

葬祭を行う会館の内部を360°パノラマ画像形式で作成してくれるという内容。

葬祭業者がWEBなどで公開することによって、利用者が事前に会館の中を遠隔で下見可能となる。

いってみれば不動産の内覧と同様のサービスだが、不動産は、新しい家への引っ越しというポジティブな側面が強い。

会館の下見というと腰が重い…という人も少なくないことを考えると、手軽に下見できるようになるというのはありがたい。

VR霊園体験

出典元:公益財団法人新生田上霊園

公益財団法人新生田上霊園のホームページ上では、VRで霊園の見学が可能になっている。

金額が大きいだけでなく、まさしく末永く利用することになることもあって、誰しもが霊園選びには慎重になるはず。

できれば様々な霊園を比較・検討したいところだろうが、1日に何か所も見回ることができるかというと、そうもいかない。

そんな時、WEB上からVRで体験できるというのは便利だ。

もちろん、最終的には実際に霊園に行って決めることにはなるだろうが、比較検討段階では強い味方になってくれる

ARでの墓参りが可能なSPOT MESSAGE

SPOT MESSAGEは、指定のスポットでメッセージを公開することができるというスマートフォン向けのARアプリだ。

利用方法のひとつとして葬祭用途が提案されている

葬祭用途でSPOT MESSAGEを利用する場合、自分のお墓をスポットとして、遺言メッセージを残しておくことで、お墓参りに訪れた遺族に対して、生前の思いを伝えることが可能

メッセージを動画や静止画形式で残しておけば、お墓とオーバーラップしたAR表示も可能だ。

「自分の死後、家族の心は大丈夫かな…?」と心配に思う人にとっては、家族を励ますための死後のコミュニケーションとして有用といえるだろう。

 

元気なうちに死について考えおいた方がいい!?

筆者はまさに寺院との関わりもまったくない、無宗教な人間だったため、家族の死後、どのように葬儀が進行するのか、そこにいくらお金がかかるのかという知識がまったくなかった。

このため、数年前に家族が亡くなった際には、初めてで戸惑うことばかり

葬儀の過程において納得の行かない経験もし、「こうしたことは、生きている内から備えておかねばならないんだな」…と痛感させられた

自分も家族も元気なうちに「死」について考える…というのは気が向かないだろうが、病やケガなどで倒れてしまってからでは、一層「死」が不吉に感じられ、何も考えられなくなってしまう

そうなっていない内に、自分や家族がどう生き、どう死にたいのか、考えておいたほうがいいだろう。

Copyright © 2017 VR Inside All Rights Reserved.

情報提供元:VR Inside
記事名:「葬祭業界におけるVR・AR事例まとめ!お寺離れする日本人と終活という課題