共同通信が伝えた「ラジオのAM放送廃止を要請へFM一本化、民放連」のニュースは、ネットや新聞各紙で話題になり、ラジオリスナーを愕然とさせました。AMラジオ放送局の根幹を揺るがす今回の1件。なぜ、こんなことになったのか、事実関係を整理し、その背景や今後を考えてみましょう。

AMラジオ廃止ではなくFM波に転換

2019年3月22日に、共同通信が伝えた「AMラジオ放送廃止」というニュースは、正確には事実と異なります。「廃止」という言葉だけが一人歩きをして、国内のAMラジオ放送が無くなると誤解してしまった人もいるようですが、その心配はいりません。日本が国の法制度として、AMラジオ放送を廃止するのではないからです。

今回の1件は「廃止」でなければ何なのでしょうか。民放AMラジオ放送局の多くの考えは、「AM波を止めてFM波に転換したい」なのです。AM波もFM波も両方続けたいとするAMラジオ放送局もあるので、「FM1本化」も正確ではありません。

ニュースから5日後の2019年3月27日に、総務省の有識者会議が開催され、その席上で、業界団体である民放連(日本民間放送連盟)が、「ラジオの将来に関する要望」の1つとして「FM補完中継局制度の見直し」を出しました。

共同通信の記事はこれをスクープしたのです。その要望の内容は以下の通りです。1つは、FM補完中継局制度を見直し、AMラジオ放送からFMラジオ放送への転換や、両放送の併用を可能とするよう制度を整備するというものです。

AMラジオ放送を長期間にわたり停波

2つめは、遅くとも2028年の再免許時までに、AMラジオ放送事業者の経営判断によって、AM波からFM波への転換や両波の併用を全国的に可能とすること。

3つめは、全国的な制度整備に向けた諸課題を洗い出しつつ、2023年の再免許時を目途に、AMラジオ放送を一部地域で実証実験として、長期間にわたり停波できるよう総務省は必要な制度的措置を行うというものです。

要望の中に出てきた文言を整理していきましょう。まずは「FM補完中継局制度」です。いわゆるワイドFMのことで、2014年から開始したこの制度は、2013年に総務省の有識者会議「放送ネットワークの強靭化に関する検討会」が、「AMラジオ放送について、現在は外国波混信対策に限定されているFM波の利用を、難聴対策や災害対策にも利用可能とすることが適当である」という取りまとめの提言を受けて、制度化されたものです。

ワイドFMは「AMラジオ放送局の放送エリアにおいて、難聴対策や災害対策のために、新たにFMラジオ放送用として使用可能とした周波数(90.0~94.9MHz)により、AMラジオ放送の番組を放送するもの」です。

AMラジオ放送局の親局をFM波でカバーする、主たる補完中継局になります。そのため、独自のコールサインは持っていません。なので、親局が廃局した場合は、同時にFM補完中継局も無くなってしまうのです。

2023年のAMラジオ再免許時がポイント

そのため「制度を整備する」として、以下のことが考えられます。1つは、AM波の免許を返上しても、FM波の免許は維持できるようにするというもの。もう1つは、AM波の免許は維持するが常時休止(停波)として、FM波は補完のまま番組を放送する。もしくは、FM波を補完ではなくするというものです。

「再免許時」という言葉にも注目したいところです。地上基幹放送局の免許の有効期間は原則5年。現行の免許は2023年10月31日をもって満了します。

つまり、2023年11月の再免許時までには、何らかの動きがあることになります。なぜかというと、再免許申請時には、向こう5年間の事業計画を提出するため、具体的な内容を記述する必要があるからです。2028年ではなく、2023年の再免許時がポイントになります。

続いて「AM放送事業者の経営判断によって」と記載されているのは、法律で強制しないということです。「全国的に可能」であるものの、一部報道で「北海道などエリアが広い地域は除く」とあったように、制度によって転換の制限はしないという意味になります。(文/掛原雅行)

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情報提供元:ラジオライフ
記事名:「AMラジオ廃止問題は2023年の再免許時がポイント