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「どちらが大きい?」人は唸り声で犬のサイズを推測できるか【研究結果】


犬の唸り声と人間の情報分析能力を調査

唸っている黒い小型犬

犬が唸るという行動は直接的な攻撃行動ではありません。犬が唸り声を出すのは、目の前にいる相手が脅威だと感じた時に「これ以上近づくと攻撃するぞ」という警告です。実際に攻撃行動をしなくてすむように、犬が交渉をしていると言っても良いでしょう。

また過去の研究から、犬が唸る声は犬の体格を反映しており、聞き手(人間も含めて)はその声から犬についての情報を得ることがわかっています。

では、目の前の脅威の度合いによって犬が発する唸り声は変化するのでしょうか?変化するとしたら、人間はその声から犬についての情報を正しく受け取ることができるのでしょうか?

この点について、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究チームが調査のための実験を行ない、その結果が発表されました。

2つの唸り声を聞いてどちらが大きいかを推測

唸っているボーダーコリー

この調査は、オンラインアンケートの手法で一般募集された人々311名が参加しました。調査は参加者に犬の唸り声を聞かせて、声についての質問への回答を求めるという形式です。

参加者に聞かせる犬の唸り声は、2016年に行われた別の研究のために録音されたものが使用されました。犬にとって見知らぬ人が、犬をジッと見つめながら少し距離を詰めるという「軽度のストレス状況」を作り、犬が発した20〜30秒間の唸り声を録音したものです。

犬に近づく人は成人男性と成人女性で、それぞれ体格の大きい人と小さい人が含まれています。犬にとって最も脅威の度合いが高いのは体格の大きい男性で、脅威度が低いのは体格の小さい女性であろうという想定です。

声を録音された犬は合計56頭で、雑種の他に22犬種が含まれ体のサイズもさまざまです。犬の唸り声は2頭分ずつのペアに編集されて、オンラインアンケートに使用されました。

参加者はペアになっている2頭の声を聞いた後に、2つの唸り声のうちどちらの犬が大きいかを回答します。ペアになっている音声は違う犬同士の場合もありますが、同じ犬が違う相手(男性か女性か、相手の体格が大きいか小さいか)に唸っている音声のペアも含まれています。

犬は唸る相手によって声が変わり、人間は惑わされるという結果

唸っている茶色い犬

2頭のペアが明らかに違うサイズの犬同士で合った場合、参加者は確実に大きい犬を認識することができました。また全ての参加者が、ピッチや周波数がより低い声、唸っている時間がより長い声をより大きい犬だと認識しました。ここまでは容易に想像がつきます。

しかし同じ犬が違う相手に唸った時の声と、参加者の回答は興味深いものでした。犬に対して威嚇行動を取ったのが男性だった場合と女性だった場合、参加者は女性に対して発せられた声を、より大きい犬のものだと認識しました。

また威嚇行動を取った人がどちらも男性、またはどちらも女性だった場合は、体格が大きい人への唸り声の方が大きい犬だと認識されたといいます。

実際には同一の犬なのに、どちらかがより大きいと判断されたのは唸り声がより低く長い声の方でした。このことから犬は目の前の相手の脅威度によって、唸り声のピッチや長さを変えていることがわかりました。

より長い唸り声は、より強い攻撃性とより否定的な感情と関連していることが過去の研究からわかっています。研究チームは「脅威度が高いほど、つまり体格の大きい男性に対する唸り声ほど長くなるだろう」と予測していました。

脅威度によって唸り声が変わることは予測した通りでしたが、女性に対する唸り声の方が強い攻撃性を示したことは予測に反していました。研究者はこのことについて、女性は感情的なシグナルにより敏感であるため、犬は過去の経験から女性は強い威嚇によってより簡単に撃退できると予想したのだろうと述べています。

この調査結果から、犬は目の前の相手の脅威度によって、声の高さ、唸る時間を変えられることが明らかになったといいます。

人間はその声の変化に惑わされ、声によって実際よりも大きい犬が唸っていると認識してしまう場合もありますが、ほとんどの場合は犬が唸る声から犬の大きさを予測できることもわかりました。

まとめ

唸っているラブラドール

人間は犬の唸り声がより低く長い場合に、その犬がより大きいと認識するという調査結果をご紹介しました。

また犬が目の前の相手に警告の唸り声を発する時、相手の脅威度によって声を変化させるが、相手が女性である場合と体格がより大きい場合により深く長い唸り声を発するということもわかり、人間はその声に違いに惑わされてしまう場合もあるようです。

犬が唸るという行動は単純に攻撃行動と誤解されることも少なくありませんが、この研究のように犬の行動と人間の理解度の双方が調査され明らかになることで、より良いコミュニケーションにつながることが期待されます。

《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s00265-024-03452-9


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