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クトゥルフ神話の民よ……!2023年は「ダゴン」商業誌掲載100周年って気づいてた?今だから振り返る本作の魅力


筆者の家から発掘されたラヴクラフト全集

 今年は2023年、皆様初詣などはもうお済みでしょうか?筆者は毎年近所にある歴史ある神社でお参りをするのが恒例となっておりまして、今年も神様に新年のご挨拶をちゃんと済ませてきました。

 そして、突然ですが「神様」といえば「神話」、「神話」といえば……そう「クトゥルフ神話」ですよ、皆さん……!!!!

 というのも年末年始で大片付けをしていてたまたま「ラヴクラフト全集」が出てきたんです。怪奇・幻想小説家のハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890年~1937年)といえば、クトゥルフ神話の生みの親。本書にはクトゥルフ神話はもちろんのこと、彼が書き上げた怪奇・幻想小説が多数収録されています。

 そんな本書が実家に1巻だけあり、残りは自宅にというなかなか不思議な状態で出てきました。しかも一部は歯抜け状態だったため、悔しくなってAmazonで追加購入してしまいました、まだ家の中ちゃんと探してないのに。

 筆者とクトゥルフ神話との付き合いは10代からなので、足掛け30年以上ずっとこの神話の虜ということになります。ダークファンタジー好きになったのは確実にラヴクラフト御大のせいなのだと言っても過言ではありません。

 大掃除での再会を経て、久々に読んでみたんですけどやっぱり面白いなあ、と思ってしまいました。今時のホラーなどとはちょっと違って非常に古典的な内容で、文章もとにかくクセがあって読みにくいなあとは思うのですが、言いようのない恐怖と狂気、そして忍び寄る不安を感じる文章で、今尚この作品を愛してやまない方達が多くいるのは理解できます。

■ ラヴクラフトにとって2023年は記念すべき年……!?

 さて、2023年にどういう関係があるんだよ、と仰りたい皆様……。なんとこの「ラヴクラフト全集」などに掲載されている怪奇小説「ダゴン」という短編が、雑誌「Weird Tales(ウィアード・テイルズ)」に掲載されたのが1923年10月号。掲載から100周年という記念の年なのです。

怪奇小説「ダゴン」

 実は「ダゴン」は、同人誌「The Vagrant(ザ・ヴェイグラント)」の1919年11月号にて最初に発表されています。雑誌「ウィアード・テイルズ」への掲載は遅れること4年後の1923年。しかしなぜ後者が注目されるかというと商業雑誌であったためです。

 商業雑誌「ウィアード・テイルズ」への「ダゴン」の掲載は、ラヴクラフトにとっての「プロ作家デビュー」。つまり2023年はダゴン商業誌発表100周年と同時に、ラヴクラフトにとってもプロデビュー100周年ということになるのです。

 なお、怪奇小説「ダゴン」はラヴクラフトにとっての初期作品という扱いには世間一般かわりはないのですが、クトゥルフ神話に関する立ち位置は諸説あります。

 「クトゥルフ神話の元となるエッセンスをもった作品」や、「クトゥルフ神話の最初の作品」、はたまた「複数あるクトゥルフ神話初期作品の中の一つ」と紹介されることがあり、扱いはばらばら。とはいえ、本稿ではクトゥルフ神話に関わる初期作品の一つとして触れていきます。

【追記】
ラヴクラフトの商業デビューについて「ホーム・ブルー」というご意見をいただきました。
確かにファンの間において様々な諸説がございまして非常に判断が難しい話題です。「ホーム・ブルー」掲載の「死体蘇生者ハーバード・ウェスト」は初の連載作品ではありますが、一般的なラヴクラフトの実質的な商業デビューは「ダゴン」および「ウィアード・テイルズ」という論説に従ったものとなります。筆者はラヴクラフトファンでありますが、研究者ではないため本件の問題につきましては後の研究者の判定を待つことに致します。

■ 「ダゴン」に影響うけた作品は日本にも多い

 「ダゴン」の作品自体についてですが、最近ですと呪術廻戦にもそれをイメージしているであろう陀艮ってキャラが出てきます。そのほかにもダゴンをモチーフにした怪物って多くゲームやアニメに登場してきますので、割とイメージしやすいのではないかなと。

 本来ダゴンはメソポタミア神話に出てくる神様の名前ではあるのですが、クトゥルフ神話ではこのダゴンは海に潜む巨大な海棲不明生物に置き換わっています。

 主人公が第一次世界大戦の最中に捕虜となるも脱走、気がつくと不思議な陸地へと流れ着くのですが、そこで見た不気味なオベリスクとそこに書かれた不気味な絵とそっくりの怪物が現れ、色々あって恐怖にかられた主人公は必死にその場を逃げ出します。だが陸地へと戻ってきた主人公は恐怖と狂気のなか、自室の窓から身を投げ出そうとしていますが、手記を残しており……という内容。

 話としては恐ろしく短く、短編としてはもう少し長く読みたいと思う反面、言いようのない恐怖と、自分が見たものを理解できず、精神を崩壊させていく内容が描かれており、なんともいえない不気味な感触を読者に残します。

 時代背景がちょうどラヴクラフト御大が生きていた時代であったことと、彼自身の恐怖症による不思議な世界観を表した作品なのかな、と読み返してみて思いました。そして一度読み始めると、そういやあれはどんな作品だったっけ……と全集を取っ替え引っ替えしてしまって割と仕事がちゃんと進んでいません、これには困った。

 単純な怖さではなく、理解し難い宇宙的恐怖をモチーフに今尚愛されるクトゥルフ神話を書き上げていったH.P.ラヴクラフト。そんな彼を一躍コズミックホラーの教祖へと押し上げた雑誌ウイアード・テイルズにこの作品が掲載されてちょうど100周年の本年。

 クトゥルフ神話をモチーフにした作品は本当にたくさん出ていまして、映像作品、漫画、小説とたくさんのクトゥルフ神話が描かれてきました。

 最近のクトゥルフ神話系作品をみて興味を持たれた方、ぜひ一度本家の「ラヴクラフト全集」もしくは「クトゥルー(暗黒神話体系シリーズ)」(こちらはラヴクラフト以外の作品も掲載されています)を読んでみてはいかがでしょうか?

「ラヴクラフト全集」の3巻に掲載されています

 今回ご紹介した「ダゴン」は「ラヴクラフト全集」の3巻に掲載されています。でも筆者としてはぜひ全集の1巻からじっくり触ってみていただきたいと思っています。

※追記を更新しました(2023年1月7日15時03分)

【上村健太郎:筆者プロフィール】
神奈川出身、東京在住。オンラインゲーム業界において長らくプロモーションやプロデュースなどを担当し、数多くのタイトルを立ち上げ、そして終了させてきた苦い経験の持ち主。
私生活では妻と二匹のビーグル犬よりも地位の低い生活を満喫中。

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