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折れた刃が体内にあるのに臓器が一切傷つかなかった「奇跡の男性」が医学誌に報告される!


体内に残ったナイフが臓器を一切傷つけずに右腹から左腰まですり抜ける奇妙な症例が報告されました。

診断を受けたのは22歳のネパール人男性で、酔っ払い同士のケンカで右腹部を刺された後、傷口の縫合処置を受けたという。

しかし翌日に痛みが左腰に移っていたため、病院にかけつけたところ、そこから長さ15センチの刃が見つかったのです。

驚くべきはナイフの刃が右腹から左腰に移動する中で、臓器をまったく傷つけていないことでした。

症例報告の詳細はネパール・シャンカラプール病院(Shankarapur Hospital)により、2023年9月2日付で医学雑誌『Cureus』に掲載されています。

 

目次

  • 折れたナイフの刃が右腹から左腰に移動
  • 臓器を傷つけずに剣で身体を貫いた奇術師「ミリン・ダヨ」

折れたナイフの刃が右腹から左腰に移動

事件はネパール人男性(22)が酔っ払い同士のケンカで、右上腹部を刺されたことに始まります。

男性はかなり酔っていたため、当時の出来事をよく覚えていませんでした。

それでも刺された直後に近くの小規模な医療センターに搬送され、そこで刺し傷の縫合措置を受けています。

担当した医師は傷口の詳しい診察をすることも、縫合処置の記録もつけることなく、術後に男性を家に帰したそうです。

男性が受けた縫合手術の跡
Credit: Shankarapur Hospital, Cureus(2023)

ところが一夜明けた翌日、男性はナイフで刺された右腹ではなく、左腰の上部に鈍い痛みを覚えました。

異変を感じた男性はより大きなシャンカラプール病院の救急外来を受診し、医師の診察を受けます。

そして腹部のレントゲン写真を撮った結果、驚くべきものが見つかりました。

なんと長さ約15センチの折れたナイフの刃が痛みのある左腰にあったのです。

レントゲン撮影で見つかった約15cmのナイフの刃
Credit: Shankarapur Hospital, Cureus(2023)

その出どころは言うまでもなく明らかでした。

前日のケンカで刺されたナイフの刃が男性の知らぬ間に折れて右の脇腹内に残り、それが左腰まで移動していたと考えられます。

男性が酔っ払っていたことに加え、縫合を担当した医師が傷口を詳しく診察しなかったため、ナイフの刃が体内に入り込んでいたことに気づかなかったのでしょう。

しかしシャンカラプール病院の医師チームが最も驚いたことは、ナイフが体の右側から左側に移動する中で、中の臓器をまったく傷つけていないことでした。

そのおかげか、男性には胃腸の損傷による吐き気や下痢の症状、腸の損傷で内側の粘膜が炎症を起こす腹膜炎も見られていません。

その他、腸音や筋肉組織にも異常はなく、血行状態にも何ら問題はありませんでした。

ただ唯一生じていたのがナイフの存在による左腰の圧痛でしたが、どうやって臓器を傷つけずにそこまで移動したのか見当がつかないと医師チームは話しています。

開腹手術で取り出されたナイフの刃
Credit: Shankarapur Hospital, Cureus(2023)

肝臓の前面に長さ1センチ程の小さな切り傷がありましたが、これは肝臓(お腹の右上)と傷口の位置から、刺されたときにできたものと見られています。

患者の誤飲などにより腹部から折りたたみナイフやハサミ、針が見つかる事例はありますが、それらの鋭利な異物が体内を一切傷つけずに移動したケースは知られていません。

まさに折れたナイフの刃は幽霊のように男性の体内をすり抜けていったのです。

しかしそんなこと本当にあり得るのでしょうか?

実は歴史上には、臓器を傷つけずに刃物で身体を貫くフォーマンスをしていた男性がおり、これは映像記録で残されています。

臓器を傷つけずに剣で身体を貫いた奇術師「ミリン・ダヨ」

理論上、腹部に並ぶ臓器や血管の隙間をうまく通り抜けることができれば、ナイフが臓器を傷つけずに移動することは確かに不可能ではないかもしれません。

しかしそれはあくまで理屈であって、現実で起こり得るとはなかなか想像しがたいものがあります。

ところが、こうした事象を狙ってやってのけた驚くべき人物の記録が残っています。

それはかつてオランダに実在したミリン・ダヨ(Mirin Dajo:1912〜1948)という奇術師です。

彼は1945年から1947年にかけて、胴体のさまざまな部位に西洋の長剣を突き刺して貫通させるパフォーマンスを行いました。

普通に考えれば大変なことになりそうですが、剣を突き刺されたミリン・ダヨは死ぬどころか、出血多量や臓器の重傷さえ一切負うことがなかったのです。当然ながら剣を刺したように見せかけているだけの、何らかのトリックを疑う声が多く上がりました。

しかし1947年、ミリン・ダヨはスイス・チューリッヒ大学病院で医師たちを前にこのパフォーマンスを行い、さらに医師たちにレントゲン写真まで撮らせる公開検査を行ったのです。

このレントゲン写真を見る限り、確かに剣は真っ直ぐに身体を貫いています。

長剣を貫通させるミリン・ダヨ(左)公開検査で撮影されたレントゲン写真(右)
Credit: en.wikipedia

最終的に医師たちは、彼に剣が刺さっていることは事実であり、それに伴って「医学的に不可能な事象は起きていない」とする見解を示しました。

それによると、長剣を貫通させる際に心臓や肺、大動脈や大静脈の隙間を縫うように一定のスピードでゆっくり突き刺せば、臓器の損傷を避け、出血も防いだ状態で、身体を貫くことが可能なのだろうという。

(しかしその隙間を縫う方法は謎に包まれており、一説では事前に剣を通すピアスのような穴を開けていたという説もある)

ミリン・ダヨのパフォーマンス
Credit: en.wikipedia

もしかしたら今回の男性でも、ミリン・ダヨと同じようなことが体内で奇跡的に起きたのかもしれません。

男性は外科手術でナイフの刃を除去した後、特に追加の治療も必要なかったため、完全な回復を待って5日後には退院したといいます。

医学誌にも報告されるほどの驚くべき悪運の強さです。

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参考文献

Knife blade lodged in a man’s belly mysteriously ‘floated’to the other side of his body without causing damage https://www.livescience.com/health/surgery/knife-blade-lodged-in-a-mans-belly-mysteriously-floated-to-the-other-side-of-his-body-without-causing-damage

元論文

The Wandering Knife: A Case Report https://www.cureus.com/articles/179824-the-wandering-knife-a-case-report#!/
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