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ヘロインで快楽を感じなくなる「抗薬物ワクチン」が登場!


ワクチンで違法薬物と戦います。

米国のモンタナ大学(UM)の研究者たちは、麻薬として知られるヘロインや、米国において大規模な濫用が起きている鎮痛薬フェンタニルに対するワクチンを開発しました。

この抗薬物ワクチンを接種すると、私たちの体はヘロインやフェンタニルをあたかも「病原体」のような異物として認識するようになり、薬物を接種しても抗体が結合して脳に向かうのを阻止することが可能になります。

結果、薬物を接種したとしても快感を感じないようになり、薬物が脳に達して呼吸機能を麻痺させたり、依存症を発症することもなくなります。

新たなワクチンは既に動物実験で高い成果を上げており、研究者たちは2024年初めに臨床試験を行う予定とのこと。

しかし私たちの免疫システムは主に細菌やウイルスに対抗するように設計されており、ヘロインやフェンタニルのような小分子を敵と認識するようにはできていません。

新たなワクチンは、いったいどんな方法を使って、小さな分子を免疫システムに「敵」と教えたのでしょうか?

詳細は2023年8月29日にモンタナ大学のプレスリリースにて公開されています。

目次

  • 薬物を接種しても「ハイ」にならない抗薬物ワクチン
  • 免疫システムが反応しない薬物分子を認識させる技術

薬物を接種しても「ハイ」にならない抗薬物ワクチン

ヘロインを接種しても「ハイ」にならない抗ヘロインワクチン
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

ヘロインは麻薬の中でも最も危険な薬物とされており、接種すると常人が一生のうちに体感しうる全ての快楽を、一瞬で得られると言われています。

しかしそのぶん依存性も極めて高く、1度断薬した人が再び手を出してしまう再発率は90%にも及びます。

ヘロインによって体感した「一生分」の快楽は生涯にわたり脳に残り続け、またあの快楽を得たいと繰り返し渇望するようになるからです。

一方、フェンタニルは多くの国で鎮痛剤として処方されていましたが、近年になって米国を中心に娯楽目的での大規模な濫用が起きています。

アメリカ西岸地域の各地において「ゾンビ街」と呼ばれる地域が発生し、街中をフェンタニル中毒患者がゾンビ映画のように徘徊する様子が記録されています。

またフェンタニルはモルヒネの100倍、ヘロインの50倍も強力な合成オピオイドであり、体格によってはわずか2mg(米粒1つぶん)の量で死に至ります。

実際、2021年にはフェンタニルの過剰摂取によって10万人が死亡したと考えられています。

さらにフェンタニルは安価で入手することが可能であることから、違法薬物の売人もヘロイン中毒患者にフェンタニルに切り替えるように勧めるといった事態も起きています。

しかし薬物中毒を治すには現状、中毒患者自身の「我慢」に依存する断薬しか存在しません。

これまでに断薬を補助するいくつかの薬が開発されていますが、効果が限定的であり、断薬補助の薬を快楽を得るための手段として利用するといった事態も起きています。

そこで近年になって、違法な薬物の効果を打ち消す「抗薬物ワクチン」の開発が行われるようになってきました。

薬物に抗体が結合すると脳の関所である血液脳関門を突破できなくなります
Credit:Christine Robinson et al . Therapeutic and Prophylactic Vaccines to Counteract Fentanyl Use Disorders and Toxicity . Journal of Medicinal Chemistry (2020)

新たな抗薬物ワクチンに求められている機能は、体の免疫システムに対して特定の薬物をあたかも病原体のような異物と認識させ、薬物が体内に侵入した場合には抗体を結合させて、薬物が脳に到達するのを妨害することにあります。

薬物が脳に到達しなければ、人間は快楽を感じることもなくなります。

また過剰摂取による呼吸機能の麻痺も、薬物が脳に入らなければ防ぐことが可能です。

さらにワクチンは長期間にわたり持続的に効果を発揮することが期待されており、もし生涯にわたり効果を発揮できれば、二度と薬物で快楽を感じることもなくなるでしょう。

ウイルスと違ってヘロインやフェンタニルなどの薬物は進化(変異)によって構造が変わることがないため、一度開発してしまえば新たなワクチンを設計する手間もありません。

ただ問題は、私たちの免疫システムは主に病原菌やウイルスに対抗するために設計されているため、そのままでは薬物を認識できない点にありました。

免疫システムが反応しない薬物分子を認識させる技術

薬物の小分子をタンパク質粒子に結合させることで免疫システムがみつけられるようにします
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

なぜ私たちの免疫システムは薬物を認識できないのか?

原因はサイズにありました。

免疫システムが異物を認識できる大きさには限度があり、最低でも分子量6000以上の大きさがないと、異物として学習してくれないのです。

(※ワクチンに使われている細菌やウイルスの断片の分子量は数万もあるため問題ありません)

市販の頭痛薬や胃腸薬を飲んでもそれらの薬に免疫ができないのは、薬効成分の多くが分子量1000にも満たない小分子でできているからです。

ヘロインやフェンタニルの分子量はどちらも350前後であるため、そのままの状態で注射しても、ワクチンとして働くことはありません。

(※単なる薬物接種と同じです)

そこで研究者たちは、ヘロインやフェンタニルを模倣した小分子(ハプテン)を大きなタンパク質の粒子に結合させる方法を開発し、免疫システムに認識できるサイズにすることを思いつきます。

こうすることで、免疫システムにヘロインやフェンタニルを異物として認識させるチャンスが生まれます。

さらに今回の試みでは、ワクチンに混合される「アジュバント」も改良されました。

アジュバントとは、広い意味で「補助剤」のことを指し、薬の主成分の働きを高めるために加えられる成分です。

ワクチンの場合、免疫システムの学習を助け、効果を増強させる効果が期待されています。

既存のワクチンの多くはアジュバントとしてアルミニウム塩(ミョウバン)が用いられていましたが、今回はモンタナ大学が開発したINI-4001(TLR7/8)が使用され、性能を大きく向上させることに成功しています。

またマウス・ラット・ミニブタを用いた動物実験を行ったところ、ワクチンを注射された動物たちはフェンタニルに対する興味を失ったことが確認できました。

また強制的に過剰摂取させた場合、ワクチンを打たなかった動物は呼吸機能の麻痺によって死んでしまいましたが、ワクチンを売った動物のほとんどは生存することができました。

また動物たちの体内で何が起きているかを調べたところ、ワクチンによって作られた抗体が小さな薬物の分子に結合したことで、脳の関所となる血液脳関門を通過できなくなっていたことがわかりました。

最初は認識できなかった小さな分子でも、一度認識できてしまえば免疫システムが働いてくれたのです。

この結果は、抗薬物ワクチンによって動物たちの免疫システムが本来であれば認識できない薬物の小分子を異物として認識して、中和するための抗体を作り、脳への到達を妨げていたことを示します。

一方、ワクチンによって訓練された免疫システムが他の鎮痛剤や麻酔薬に反応しないかどうかを調べたところ、影響を与えていないことが示されました。

新型コロナウイルスのワクチンを接種してもインフルエンザウイルスに反応できないのと同じように、ヘロインやフェンタニルに対抗するために作られた抗薬物ワクチンは、手術で使う重要な薬の効果には影響を与えませんでした。

研究者たちは動物実験の成功を受けて現在、人体でのテストである臨床試験の準備を進めているとのこと。

最初のテストは2024年に計画されており、第一弾としてヘロインワクチンがテストされるようです。

もし抗薬物ワクチンが開発されれば、中毒患者たちに2つの道を提供できるでしょう。

1つはワクチンを接種して2度と薬物で快楽を感じないようにする方法、もう1つ90%もの再発率を意思の力だけで乗り切る方法です。

研究者たちは同様の手法でさまざまな違法薬物に対するワクチンを作ることもできると述べています。

もしかしたら未来の薬物中毒の治療は、現在の辛い断薬ではなく、注射1本で全て解決するかもしれません。

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参考文献

UM RESEARCHERS PREP FENTANYL, HEROIN VACCINES FOR HUMAN TRIALS https://www.umt.edu/news/2023/08/082923fent.php

元論文

A TLR7/8 agonist increases efficacy of anti-fentanyl vaccines in rodent and porcine models https://www.nature.com/articles/s41541-023-00697-9 Vaccines to treat opioid use disorders and to reduce opioid overdoses https://www.nature.com/articles/s41386-018-0197-3 Development of vaccines to treat opioid use disorders and reduce incidence of overdose https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0028390819300449
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