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実は治る?日本の糖尿病患者は100人に1人の割合で「寛解」していた!


糖尿病は「いったん罹ったら治らない」「薬は一生飲み続けなければならない」と言われるのが常でした。

しかし今回、新潟大学大学院の研究チームが日本全国の約4万7000人の糖尿病患者を調べた結果、100人に1人の割合で血糖値が正常まで改善する、薬が要らない状態になる等、症状が「寛解」していることが判明したのです。

「治癒」は病気が根本から治ることですが、「寛解」は再発の可能性はあるものの、症状や検査異常が消失した状態を指します。

糖尿病と診断されても生活習慣の改善と継続ができれば、健康な人と同じ一生を送れるかもしれません。

研究の詳細は、2023年5月8日付で医学雑誌『Diabetes, Obesity and Metabolism』に掲載されています。

目次

  • 糖尿病の症状が消える「寛解」の報告例は多々あった
  • 100人に1人の割合で糖尿病は「寛解」していた!

糖尿病の症状が消える「寛解」の報告例は多々あった

糖尿病はこれまで「一度発症すると一生の付き合いになる」と言われてきました。

主な症状には、疲労感や喉の渇き、頻尿、目のかすみ、立ちくらみ、皮膚の乾燥による痒み、免疫低下による感染症への罹患、傷が治りにくい、手足の感覚が低下するなど様々なものがあります。

これらと死ぬまで付き合っていくのは苦難でしかありません。

ところが実際には、糖尿病と診断された患者さんでも、食事療法や運動療法を含む生活習慣の改善、一時的な薬物治療、肥満外科手術による減量を通して、血糖値が正常近くまで改善し、症状が「寛解」するケースが度々報告されていました。

ちなみに、ここでいう糖尿病とは基本的にすべて「2型糖尿病」を指します。

糖尿病には1型と2型がありますが、患者の95%は2型であり、1型はかなり稀です。

1型は生まれつきの遺伝とは関係なく、膵臓のインスリン(糖の代謝を調節して血糖値を一定に保つホルモン)を分泌する細胞が壊れてしまうことで発症します。

2型は生まれつきの遺伝的な体質に、暴飲暴食や運動不足、肥満が加わることで発症する病気です。

(本記事では「糖尿病」と表記するものは、すべて「2型糖尿病」を指します)

日本人の糖尿病患者の95%は「2型糖尿病」
Credit: canva

糖尿病に関する「寛解」の報告例はこれまでにもありましたが、日本人において、どれ程の患者が「寛解」しているのか、どのような人が「寛解」しやすいのかは分かっていませんでした。

そこで研究チームは今回、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の臨床データに登録されている日本全国の糖尿病患者4万7320人を対象に調査を行いました。

さて、どれほどの割合で「寛解」は発生し、どんな人に「寛解」が起きやすくなっていたのでしょうか?

100人に1人の割合で糖尿病は「寛解」していた!

対象者は現在も通院中で、データ登録時に寛解の状態ではなく、血糖の指標であるHbA1c値(※)や体重が継続的に測定されている18歳以上の男女となっています。

(※ HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンのうち、どれくらいの割合が糖と結合しているかを示す検査値のこと)

全体の調査期間は1989年から2022年にわたり、その間に症状が寛解したか(具体的には薬物治療が中止され、正常な血糖値が3カ月以上続いたか)を追跡しました。

さらに「寛解」した人のうち、どのような人が長期間にわたり「寛解」状態を維持できたかも調べています。

分析の結果、追跡期間(平均5.3年)の間に3677人が寛解に至り、その頻度は1000人を1年追跡すると10.5人(約1%)となりました。

これは糖尿病患者全体のおよそ100人に1人の割合です。

また追跡開始時の患者さんの特徴を考慮したところ、

①男性

②40歳未満

③糖尿病と診断されてから1年未満

④HbA1c値が低い

⑤肥満度(BMI)が高い

⑥1年間の減量幅が5%以上

⑦薬物療法を受けていない人

において寛解の割合が高くなっていることが判明しました。

それぞれの臨床指標における1000人年あたりの寛解発生
Credit: 新潟大学 –糖尿病患者の100人に1人は「治っていた」~4万8千人の患者データ解析で明らかになった 「寛解」の頻度と条件~(2023)

その中でも、1000人/年あたりの寛解発生数は、薬物療法を受けていない人で21.7人、HbA1c値が低い人で27.8 人、1年間の減量幅が5%以上の人で25.0 人、1年間の減量幅が10%以上の人で48.2人と高くなっています。

特に1年間の体重変化については、BMIが0〜4.9%低下した場合を基準とすると、寛解の発生率はBMI5.0〜9.9%低下で2.2 倍、BMI10%以上の低下で4.7倍上昇とかなり高くなっていたのです。

BMIとは身長と体重の比率から肥満度を計算した体格指数のことで、体重(kg) ÷ 身長(m)2という式で計算されます。

この結果を見るとBMIを低い値へ改善させることは、糖尿病の寛解とかなり密接な関係があるようです。

反対に、体重が増加すると寛解が発生しにくくなる傾向も確認できました。

どんな人は糖尿病を「再発」しやすいのか?

さらに糖尿病が寛解した3677人を追跡すると、1年間寛解を維持した人は1187人にとどまり、3分の2にあたる2490人が再発(血糖値の再上昇)しています。

再発した患者さんの追跡開始時の特徴を分析すると、糖尿病と診断されてからの期間が長いこと、BMIが低いところから体重が増加した人において再発が起こりやすい傾向が見つかりました。

糖尿病の寛解とその継続には「早期の発見」と「体重管理」が重要なようです。

「早期発見」と「体重管理」が再発の予防に重要
Credit: canva

従来の医学では、日本人を含む東アジア人は欧米人に比べてインスリンを分泌する力が元から弱く、糖尿病の寛解は難しいのではないかと考えられてきました。

しかし本研究により、100人に1人の割合で寛解している実態が明らかになったことは驚くべき結果です。

この事実に医師や患者さんが意識的になり、「糖尿病は寛解できる」ものとして治療に励めば、その割合はもっと増えることが期待できます。

さらに寛解後も体重管理や適切な生活習慣を継続できれば、自分が糖尿病であったことすら忘れてしまう日々が訪れるかもしれません。

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参考文献

糖尿病患者の100人に1人は「治っていた」~4万8千人の患者データ解析で明らかになった 「寛解」の頻度と条件~ https://www.niigata-u.ac.jp/news/2023/416785/

元論文

Incidence and predictors of remission and relapse of type 2 diabetes mellitus in Japan: Analysis of a nationwide patient registry (JDDM73) https://dom-pubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/dom.15100
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