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研究者も困惑する観測史上最大の宇宙爆発!


これまでで人類が観測してきた中で「最大」の宇宙爆発が観測されました。

この報告を行ったのは、イギリスのサウサンプトン大学(University of Southampton)物理天文学部に所属するフィリップ・ワイズマン氏ら研究チームです。

最大の爆発という表現には、いろいろな意味の取り方があるでしょうが、ここで論じられているのはその明るさと持続時間です。

AT2021lwxとして知られるこの爆発は、既知の超新星の10倍以上の明るさであり、2020年に初めて検出されて以来、3年以上も燃え続けています。

現在でもこの爆発の正体は分かっていませんが、研究チームは、太陽の数千倍もある巨大なガス雲と超大質量ブラックホールが原因だと考えています。

詳細は、2023年4月11日付の科学誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に掲載されました。

目次

  • 観測史上最大の宇宙爆発
  • 「超新星の10倍」「潮汐破壊現象の3倍」の輝き
  • 超大質量ブラックホールが巨大なガス雲をゆっくりと消費している説

観測史上最大の宇宙爆発

宇宙爆発「AT2021lwx」は、2020年にカリフォルニアの光学観測装置ZTF(Zwicky Transient Facility)によって初めて発見されました。

この爆発は宇宙が誕生して60億年が経過したころ、地球から80億光年離れた場所で発生したようです。

そして爆発が観測されて以来、現在まで(つまり3年以上)燃え続けており、ワイズマン氏ら研究チームによって調査と研究が続けられています。

観測史上最大の宇宙爆発「AT2021lwx」が見つかる。イメージ
Credit:John A. Paice_Astronomers reveal the largest cosmic explosion ever seen(2023, University of Southampton)

しかし、記録上最大の爆発と言われても、「どういう意味で最大なのか?」と感じる人は多いでしょう。

ワイズマン氏によると、AT2021lwxは「太陽の約2兆倍明るい」とのこと。

しかし、AT2021lwxは記録上最も明るい爆発ではありません。

2022年、天文学者たちは「GRB 221009A」と呼ばれる観測史上最も明るい爆発(ガンマ線バースト)を目撃したからです。

それでもGRB 221009Aの持続時間は10時間ほどであり、AT2021lwxと比べると、ほんのわずかな時間だと言えます。

当然、3年以上も爆発が続いているAT2021lwxの方が、放出したエネルギーの合計がはるかに大きく、それゆえ研究チームは、AT2021lwxが観測史上「最大」の宇宙爆発であると述べているのです。

では、観測史上最大の爆発の正体は一体何なのでしょうか?

「超新星の10倍」「潮汐破壊現象の3倍」の輝き

天文学者たちは、AT2021lwxの正体として考えられるいくつかの説明を検討しました。

まず考えつくのは、これが超新星であるという説です。

超新星爆発。イメージ
Credit:Canva

太陽を含む「恒星」が迎える結末は、その重さで決まります。

特に太陽の8倍以上重い恒星は自らの重さに耐えられなくなり、超新星爆発という非常に大きな爆発を起こします。

これは宇宙でももっともポピュラーな天体の爆発現象なため、天文学者でなくともAT2021lwxは超新星爆発なのではないかという可能性は誰もがまっさきに思い浮かぶものでしょう。

しかし、超新星の輝きが続くのは、通常数カ月程度であり、爆発の規模も異なります。

AT2021lwxは、これまでに観測されたどの超新星よりも10倍も明るく、さらに長期間輝いているのです。

2つ目は、潮汐破壊現象(ちょうせきはかいげんしょう)」説です。

ブラックホールに飲み込まれた星が「スパゲッティ化」して消える瞬間を初めて観測!

潮汐破壊現象とは、恒星がブラックホールに近づくことでその重力によりバラバラに引き裂かれる現象のことであり、この時に強力な光を発生させます。

しかし潮汐破壊現象も数カ月で消えることが多く、爆発の規模も異なります

AT2021lwxは、既知の潮汐破壊現象の3倍も明るいのです。

こうしたことから、ワイズマン氏ら研究チームは、AT2021lwxが「超新星」もしくは「潮汐破壊現象」である可能性は低いと考えています。

超大質量ブラックホールが巨大なガス雲をゆっくりと消費している説

ワイズマン氏ら研究チームは、AT2021lwxに関する様々な説明を検討し、調査を続けた結果、別の理論を提案しています。

彼らの説は、「太陽の数千倍もの大きさをもつ巨大なガス雲が、超大質量ブラックホールによってゆっくりと消費されている」というもの。

ブラックホールの周囲に存在していた巨大なガス雲が、その軌道から外れてブラックホールに飲み込まれ、これによって巨大なエネルギーの放出が生じ続けているというのです。

この説からすると、AT2021lwxはクエーサーに似ているように感じられます。

クエーサーのイメージ
Credit:NASA(Wikipedia)_クエーサー

確かに宇宙でAT2021lwxと同等の輝きを持ち長期間持続している天体は、宇宙で最も明るい天体の1つであるクエーサーくらいです。

そしてクエーサーの正体は、銀河の中心にある超大質量ブラックホールだと考えられています。

このブラックホールが周囲のガスや塵を取り込むことで明るく輝いているのです。

しかしAT2021lwxが存在する場所には、銀河の存在を示す証拠が見つかっていません。

ワイズマン氏は、「AT2021lwxは3年前に何もないところから突然燃え上がり、今も燃え続けている。どこからともなく突然現れたのだ」と語っています。

観測史上最大の宇宙爆発「AT2021lwx」の正体は、未だ謎に包まれています。

今後チームは、彼らの理論を確かめるため、更なるデータ収集とシミュレーションを実施する予定です。

全ての画像を見る

参考文献

Astronomers reveal the largest cosmic explosion ever seen https://www.southampton.ac.uk/news/2023/05/largest-cosmic-explosion-ever-seen.page Astronomers ‘Puzzled’by The Largest Cosmic Explosion We’ve Observed https://www.sciencealert.com/astronomers-puzzled-by-the-largest-cosmic-explosion-weve-observed Huge cosmic explosion 8 billion light-years away is the largest EVER seen – and astronomers don’t know what’s caused it https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-12073525/Cosmic-explosion-8-billion-light-years-away-largest-seen-dont-know-caused-it.html

元論文

Multiwavelength observations of the extraordinary accretion event AT2021lwx https://academic.oup.com/mnras/article/522/3/3992/7115325
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