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経済格差が広がるほど「洪水の死亡率」が高くなっている


経済格差が”命の不平等”まで生んでしまうかもしれません。

スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)はこのほど、「経済格差」と「洪水災害の死亡率」の間に密接な関連性があることを発見しました。

報告によると、人々の所得が不均等に分布している国は、所得が均等に配分されている国に比べて、洪水時の死亡率が何倍も高かったのです。

これは災害時に必要な物資や洪水防止インフラが高所得地域にばかり集中し、低所得層は取り残されていることが原因と見られます。

研究の詳細は、2023年4月17日付で科学雑誌『Nature Sustainability』に掲載されました。

目次

  • 経済格差が大きい国ほど、洪水時の死亡率が高い
  • 経済格差が「命の不平等」を生んでいる

経済格差が大きい国ほど、洪水時の死亡率が高い

研究チームは今回、世界の中・高所得の67カ国を対象に、1990年から2018年の間に発生した573件の大規模な洪水災害について分析を行いました。

目的は、一人当たりのGDP(国内総生産)や被災地の人口規模などの要因をコントロールした上で、「経済格差」と「死亡率」の関連性を明らかにすることです。

「経済格差」と「洪水の死亡率」に関連性はある?
Credit: canva

その結果、経済格差が大きな国ほど、洪水時の死亡率が高くなっていることが分かりました。

国民の所得が不均等に分布している国では、所得がより均等に分布している国に比べて、死亡率の中央値が26倍も高くなっていたのです。

特にアメリカ大陸やアジア、アフリカの国々で洪水災害の死亡率が最も高く、ヨーロッパやオーストラリアでは死者数が少なくなっていました。

下の図を見れば分かるように、この結果は経済格差の程度と見事に一致しています。

カナダを除くアメリカ大陸や中国を中心とするアジア、アフリカの一部地域では国内の経済格差が大きく、ヨーロッパや北欧、オーストラリアは経済格差が比較的小さいです。

色が濃い地域ほど経済格差が大きい、ドットが大きいほど死亡率が高い
Credit: Sara Lindersson et al., Nature Sustainability(2023)

チームの統計分析によると、所得格差が3%ポイント上昇すると、洪水の死亡率が平均16%上昇していました。

研究主任のサラ・リンダーソン(Sara Lindersson)氏は「今回のデータは経済格差と死亡率の因果関係を直接立証するものではありませんが、洪水時の死亡率を説明するのに、経済的不平等が重大な要素となっていることを強く示唆している」と述べています。

では、なぜ経済格差が広がると洪水災害での死亡率が上がるのでしょうか?

経済格差が「命の不平等」を生んでいる

これまでの研究で、経済格差が災害時の命を守る行動にも不平等をもたらすことが示されています。

まず、国の経済格差が大きいということは、富が一部の少数者に集中しているせいで、人口の大部分が貧困状態にあることを意味します。

こうした人々は災害時に必要な物資の調達が難しく、車やその他の移動手段も限られているため、避難に間に合わないケースが多々あります。

それから、貧困層の住宅は災害に対して脆弱である一方で、富のある者の住宅は頑丈であったり、元から洪水の被害を受けにくい立地に建てられることが常です。

結果、災害時の物資や移動サービス、洪水防止インフラが高所得層に集中し、低所得層は取り残されてしまうため、より多くの人が被害を受けやすくなるのです。

3枚目の画像
Credit: canva

チームはその具体例として、2005年に大型ハリケーン・カトリーナに襲われた米南部ルイジアナ州・ニューオーリンズの被害を挙げています。

当時、ハリケーンによって堤防が決壊した後、最も深刻な洪水被害は低所得者層の暮らす地域で発生しました。

これらの地域の人々は交通手段へのアクセスが限られていたため、避難が間に合わず、多くの人がそのまま命を落とすことになったのです。

また低所得層の大部分が移動式住宅など、洪水に対して非常に脆弱な家に住んでいました。

加えて、これらの地域は市の工業地帯に近かったため、洪水後に深刻な大気汚染に見舞われたといいます。

これは経済的な格差がいかに”命の不平等”までをも生み出してしまうかの一例です。

さらにリンダーソン氏は、近年の気候変動により極端な降雨パターンが起きやすくなると予想される中で、低所得層の被害がこれまで以上に拡大する可能性を懸念しています。

「世界の多くの国々で経済資源の不均等な分配がますます進んでいることは、当局や政府だけでなく、研究者の間でも災害リスク軽減のためにもっと注目されるべきでしょう」

日本においても、潜在的に災害のリスクが高い地域は安く住めるという問題は存在するでしょう。

これまで、リスクはあっても実際に洪水などの災害が発生することは稀だった地域も、気候変動による極端な降雨パターンで被害が発生することは増えるかもしれません。

今後、こうした問題はよりはっきりと顕在化する恐れもあるため注意が必要でしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Wide income gaps lead to higher mortality rates during flood disasters https://www.uu.se/en/news/article/?id=20578&typ=artikel&lang=en#:~:text=A%20new%20study%20led%20by,more%20evenly%20distributed%20income%20levels.

元論文

The wider the gap between rich and poor the higher the flood mortality https://www.nature.com/articles/s41893-023-01107-7
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