日本が世界に誇る名車、ユーノス・ロードスター。そのエンジンはファミリアのトップグレードに載せられるエンジンを上手に改良したものだった。

ベテランカーマニアには先刻ご承知の話ではあるが、「ユーノス」とはかつて存在したマツダの販売店名称。3種だったマツダの販売店の拡充を図り「ユーノス」「オートザム」を新設、ユーノス店はプレミアム性を訴求することとなる。その販売車種第一弾が『ロードスター』である。




ロードスターのエンジンはB6-ZE [RS]と称する1.6ℓの4気筒エンジンで、新開発とされていたが、当時のファミリアのGTグレードに搭載されていたB6型のモディファイ版である。




ユーノス・ロードスターに半年ほど先駆けて登場した7代目ファミリアには4種のガソリン(+ディーゼルエンジン1種)が用意されていて、そのうちの上級版2種がDOHCヘッドを備えていた。それぞれ1494ccのB5型/1597ccのB6型とされていて、前者は7代目ファミリアで新たに登場したブランニューエンジン、後者は6代目ファミリアにも搭載されていたエンジンだった。

B5型1.5ℓ直列4気筒エンジン

B6型1.6ℓ直列4気筒エンジン@ファミリア

両機ともに、高回転化への対応策としてメインベアリング・サポートフレームによってベアリングキャップを抑え込む構造とし、さらにオイルパンはアルミ合金製としてブロック剛性の向上を図っている。

メインベアリング・サポートフレームとオイルパン

B5型は先行していたB6型と78mmのボア径を同じくし、シリンダーヘッドを共通化。勢いストロークはB6型の83.6mmから短縮して78.4mmに収まることとなった。DOHCヘッドのカムトレインはベルト式で、バルブ挟み角は50度。吸気バルブ径31mm/排気26.2mmをペントルーフ型燃焼室に収める。もちろん4バルブ(吸気2/排気2)である。




B6型はVICS(Variable Inertia Charging System)と称する可変吸気システムを備え、長短2種の吸気管をシャッターバルブで開閉することで有効長を使い分け慣性過給効果をねらう。しきい値は5500rpmで、これ以降はバルブを開く制御としていた。




使用燃料にも差が設けられた。B6型はハイオク仕様によって圧縮比を10.0としていたのに対し、B5型はレギュラー仕様で圧縮比を9.4にとどめている。ノックセンサを備えるのもB6型のみ。同じシリンダーヘッドを用いるだけに、明確な性格差をもたせたものと推測される。

B5/B6型のシリンダーヘッド

B6型のVICS

このようにB6型@ファミリアはフルパッケージとも言えるフラッグシップエンジンだったが、ユーノス・ロードスターへの搭載にあたっては、横置きから縦置きへの設計変更はもちろんのこと、いくつかのダイエットが敢行された。具体的にはレギュラーガソリン仕様に伴う圧縮比の低下とノックセンサの除去、VICSの不採用である。最高出力もファミリアの130ps/7000rpmに対して120ps/6500rpmと抑えられ、トルクもわずかながら低下した(14.1kgmから14.0kgm)が、これは対米仕様との共通化に加えてロードスターという車種に最適化したためと、当時のマツダは訴求している。




最高出力は発揮回転数とともに抑えられることになったが、スポーツカーに載せるだけに抜かりはなく、吸気バルブは上死点前5度〜下死点後51度で開き、排気バルブは下死点前53度〜上死点後15度で開くセッティング、つまりオーバラップを20度確保する高回転志向。バルブリフトは吸排気ともに7.8mmを確保した。




排気マニフォールドはステンレス製。高回転志向を助ける形状としているのは当然ながら、軽量化や音質、美観向上にも大きく寄与している。カムカバーも専用の仕立てとしているが、これは経営陣には内緒で進められたという。

B6ZE [RS]とトランスミッション

B6ZE [RS]

■ B6-ZE [RS]


気筒配列 直列4気筒


排気量 1597cc


内径×行程 78.0×83.6mm


圧縮比 9.4


最高出力 120ps/6500rpm


最大トルク 14.0kgm/5500rpm


給気方式 自然吸気


カム配置 DOHC


吸気弁/排気弁数 2/2


バルブ駆動方式 直接駆動


燃料噴射方式 PFI


VVT/VVL ×/×


(ユーノス・ロードスター)
情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | ユーノス・ロードスターの1.6ℓエンジン[B6-ZE RS]