ホンダ・フリードは、かつて日本を席巻したコンパクトミニバンの代表である、コンパクトボディに3列シート+1.5ℓハイブリッド+4WDを詰め込んだ盛りだくさんの超一流ミニバンのアウトラインを解説する。




レポート=佐野弘宗[本文]/山本晋也[写真解説] フォト=神村 聖

使い勝手や空間効率は超一流、改良で先進&快適装備が充実

かつて日本を席巻したコンパクトミニバンも、今やこのクルマとトヨタ・シエンタの2種類しかない。その外観から想像できるように、ミニバンとしての機能はフリードの圧勝。小さな車体に、成人男性6〜7人をまがりなりにも普通の姿勢で座らせるフリードのパッケージレイアウトは、何度見ても感心するほかない。パワートレーンは1.5ℓガソリンと1.5ℓハイブリッドの2種類。しかも、その両方に4WDが用意されるのも凄い。このサイズに3列シート+ハイブリッド+4DWを詰め込むのは、とんでもなく困難な作業だっただろう。

フリードにもシエンタ同様、2列シートのコンパクトワゴン仕様(車名はフリード+)も用意されるが、その超低床設計を最大限に生かした工夫も多い。特にボディ後半に広大な完全フラット空間と床下収納……が出現する車中泊モードは、それまで興味がまったくなかった人にも「一回、泊まってみようかな」と思わせるほどのインパクトがある。現在販売されているのはデビュー満3年の昨年秋に登場したマイナーチェンジモデルで、それ以前とはフェイスデザインが異なるほか、新グレード「クロスター」も選べるようになった。マイナーチェンジでは、他にも1.5ℓ車のCVTにブレーキ操作ステップダウン制御の追加、ホンダセンシングのACCのフィーリングアップ、パワステ制御のアップデートなども実施されている。

クラストップの走りと安定感、ハイブリッドは快適性が向上

フリード/フリード+の走りは、コンパクトミニバンあるいは5ナンバーハイトワゴンのどちらのジャンルで見たとして、間違いなくトップ級のデキと言って良い。ボディ剛性感は高く、ロールスピードも抑制されており、高機動時にも後輪を軸にした安心感はすこぶる高い。昨年のマイナーチェンジでの細かいアップデートも理にかなったものが多い。ACCによる半自動クルージングでも前が空くとスパッと強力に加速してくれるのは小気味良いし、パワステは接地感が向上した。また、エンジン本体も改良された1.5ℓのブレーキ連動ダウンシフト制御も、慣れるとブレーキひとつで変速機を操れるようになって便利だ。そんな1.5ℓはホンダらしいパワフルなエンジンで想像以上に良く走るので、2列のフリード+ならこれで十二分と言えるが、ミニバン仕様のフリードで頻繁にフル乗車するなら、やはり加速がより強力なハイブリッドが良いだろう。

7速ツインクラッチを組み合わせたi-DCDハイブリッドは発売当初はギクシャク感が否めなかったが、今では別物と言えるほど快適で柔軟になっている。ツインクラッチ特有のシフトショックをモーターアシストがうまく緩和して、小気味良さと滑らかさが絶妙に同居しているのだ。フィットの動向を見るに、このi-DCDは今後フェードアウトする可能性が高いが、それは素直にもったいないと思ってしまう。

ミリ波レーダーと単眼カメラを併用するシステム。衝突被害軽減ブレーキは対象が車両、歩行者にかかわらず約80㎞/h以下で作動する。約10~40㎞/hの範囲で歩行者との事故回避を支援するシステムも搭載される。

ボディカラー:プラチナホワイト・パールオプション装備:特別塗装色(3万3000円)/9インチプレミアムインターナビ〈VXM-207VFNi〉(23万1000円)/ドライブレコーダー〈DRH-197SM〉(2万7500円)/フロアカーペット

SUV風味の「CROSSTAR」、コンプリートカーの「Modulo X」以外の足元はスチールホイール+キャップが標準となる。低床ラゲッジ仕様のフリード+のテールゲートはロングタイプで、バンパー下から開くタイプとなるのが違い。

ダッシュボード上に横長のデジタルメーターを置くことで、視線移動を最小限に抑えたコックピットを生み出した。ステアリングはチルト&テレスコピックの調整が可能。インパネシフトはすぐに左手が届く絶妙な距離感だ。

1列目は、センターウォークスルーがしやすいサイズ。若干小ぶりに感じるが実際に座ると身体にフィットし、十分なホールド性を実感できる。ノーズの視認性は良好とは言えない。

フル乗車での積載時には、シート下のスペースも活用したい。3列目シートは跳ね上げ格納タイプで、格納時のシート間の幅は675㎜となっている。2列目は6対4分割に格納可能で、簡単な操作で折り畳める。このモードであれば、自転車を積載することも可能。なおキャプテンシート仕様は中央部分を貫くように利用することで、2m以上の長尺物にも対応できる。

インパネ中央に引き出しタイプのテーブル とドリンクホルダーを設定。同時利用も、別々 に使うこともできる設計となっている。
1列目席シートヒーターは4WDに標準装備。 FFには「Cパッケージ」としてロールサン シェードなどとセットで設定されている。
ルームミラーとは別に、室内確認用ミラー を全車に標準装備。後席の子どもの様子を 運転しながら確認できるのは便利だ。
室内スペースに余裕がある3列目は、サイ ドウインドウも大きく明るい空間だ。ドリ ンクホルダーも標準装備されている。

2020 年5 月、ついに「Modulo X」をマイナーチェンジ。フロントデザインを刷新しただけでなく、3 つのエアロフィンを設けることで、走行性能が向上。独自のスポーティかつ爽快な走りをより深化させている。

パワートレーンは、1.5ℓガソリンと1.5ℓワンモーターハイブリッドの2種。日常使いではハイブリッドに力を感じるが、ホンダのエンジニアによると全開加速ではガソリンがわずかに速いという。

フリードの6人乗りは2列目がキャプテンシート、7人乗りはベンチシートとなる。積載性では後者が有利なので、じっくり考えたい。フリード+のラゲッジスペースは、4WDでは少々上げ底になってしまう点に注意。

フリード 「HYBRID CROSSTAR・ Honda SENSING」

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パワートレーンはどちらも熟成極まって甲乙つけがたい。普段せいぜい4人乗りまでなら1.5ℓのコスパが高いが、ミニバンのフリードで頻繁に3列目に人が座るならハイブリッドが良い。実質20万円強高の「CROSSTAR」の特色はあくまでコスメだけでSUV的専用機能は皆無。ビジュアルが好みなら、良くも悪くも選んで後悔なし。
※本稿は2020年10月発売の「モーターファン別冊統括シリーズVol.128 2020年コンパクトカーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 ホンダ・フリード|コンパクトボディに3列シートで多人数乗車を見事に実現