BMW Motorradからビッグ・クルーザーが新登場。新開発された1.8Lのボクサーツインエンジンは、見るからに巨大である。大きく重厚な車体に跨り、溢れんばかりのビッグトルクを体感する走りはバイクのイメージを変えてくれる程の驚きがありそう。そのパフォーマンスがとても贅沢な乗り味を楽しませてくれることは間違いない。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力●ビー・エム・ダブリュー 株式会社

BMW Motorrad・R-18 First Edition.......2,976,500円

BMW Motorrad・R-18.......2,457,000円(ブラックストームメタリック)
BMW・R-18 CLASSIC.......価格未定(2021年発売)

 BMW Motorradと言えばボクサーエンジンを搭載するバイクとして古くから有名。クランクを縦置きにし、シリンダーが左右に突き出る水平対向の2気筒エンジンが、長年同社のブランドを象徴するパワーユニットとして、歴史に刻まれてきた。


 これまでの製品を振り返ると、常に先進性のある技術力を披露するメーカーとしても知られ、例えばフルフェアリングの装備。触媒マフラーやABSの標準装備化、ユニークなサスペンション機構の投入。そしてEVの開発等でも業界をリードして来た。


 1980年代のエンジンでは、縦置き直列マルチを90°横に寝かせて搭載したKシリーズへの移行にトライした経緯もあった。近年ではそれまで定着したツアラーに強い同社のキャラクターに変革をもたらしたスーパースポーツ・カテゴリーに新参入。


 今では6カテゴリーに及ぶ31機種もの豊富なバリエーションを展開。モータースポーツシーンへの販路拡大と共に新規ユーザーの獲得と顧客層の若返りを図る事にも積極的である。


 元来得意としたツアラーのカテゴリーでは直列6気筒を搭載するK1600が主力。しかしアドベンチャーのGSを筆頭に、Rシリーズは今も根強い人気をキープしているのである。


 同社のボクサーツインはなんと1923年のR-32から始まっており、時代と共に排気量は徐々に拡大され、これまでのRシリーズでは1250ccが最大排気量であった。


 今回R-18の登場は、同社史上最大のビッグボクサーを新規開発。まさに巨大なツインエンジンを搭載する最新の量産型クルーザーなのである。

 クルーザーと言えば1997年にR-1200Cが投入された事も思い出される。北米市場を意識したクルーザーながらも、ある程度スポーツ性の高さを踏まえたグッドハンドリングも兼ね備え、それがBMWらしい提案としてアピールしたが、残念ながら大ヒットするには至らなかった。


 今回のR-18は、これまで培ってきた、それもかつてのR-5やR-50を彷彿とさせる、クラシカルなスタイリングが印象的。黒い塗装に白のペンシルストライプ等、往年のRシリーズへのオマージュが込められているようだ。


 しかしそのスケール感はまさに別格。スポークホイールのフロントは19、リヤは16インチサイズ。全長はホンダのゴールドウイングに肉薄し、ホイールベースはそれを凌ぐ、堂々たるビッグサイズを誇る。車両重量も345kg に及ぶ巨漢なのである。


 新規開発された搭載エンジンは、ボア・ストロークが107.1×100mmというショートストロークタイプの水平対向2気筒。排気量は1,802cc 。気筒当たり901cc という排気量はボクサー史上最大。ハーレーダビッドソンのCVO に搭載されるミルウォーキーエイト117エンジンの気筒当たり961ccに次ぐビッグボリュームを誇っている。


 最大トルクは158Nmだが、その最大値を僅か3,000rpmで発揮している点が見逃せない大きな特長。しかも2,000rpmも回せば常に150Nm以上をキープする出力特性に仕上げられていると言うから驚かされてしまう。


 ボクサーツインで発揮されるそのハイパフォーマンスの高さと、そこからもたらされるであろう乗り味は、まさに独壇場の物である事は間違いないのである。

トルクの豊かさに酔いしれてしまう。

 試乗車を目の当たりにすると、漆黒の中にクロームメッキパーツの輝きがとても綺麗。燃料タンクやリヤフェンダーに描かれたホワイトのダブルピンストライプが、なんとも懐かしくかつ上質な印象を放っている。


 エッジをダブルステッチできちんと縫い上げられたセパレートタイプのダブルシートも高級な雰囲気を醸しだしている。そしてクロームメッキで鏡のような輝きを魅せるハンドルまわりも素敵。


 とかくバイクのハンドル回りは、色々なケーブル類がまとわりつき、雑然としているのに見慣れてしまっていたせいか、R-18の様にクラッチとブレーキの油圧パイプ以外は目に入らないデザインは改めて新鮮であり、なおかつ作り手のこだわりが伝わって来る。


 手法としては古くからあったが、ハンドルスイッチ等に関わるワイヤーハーネス(電気配線)がパイプバーハンドルの内側を通してあるため、見た目の雰囲気が整然と、実に“スッキリ”と見えるからである。


 全体のフォルムはロー&ロング。そしてこれまで見た事のない巨大なボクサーツインが鎮座している。およそバイク用とは思えない程そのエンジン・ボリュームは立派。


 全長は2,465mm、ホイールベースは1,725mmあり、参考のため同クラスのモデルを探るとハーレーダビッドソン・FXDR114や前述のホンダ・ゴールドウィングに匹敵。BMWラインナップの中でもひときはスケールの大きなバイクに仕上げられているのである。


 シート高は690mmと低く、腰を落とし込む感じで跨がると、足つき性が抜群に良く、足を広げてバイクから遠方の地面を捉えることも楽にできる。そのせいなのか、ズッシリと重たい巨体を支えるのにも特に不安は感じられなかった。


 視界の中に入ってくる左右両シリンダーがまるで“やじろべえ”のごとく、落ちつきのある安定性に寄与している感じで、車体を引き起こす等、ロール方向への挙動も緩慢。平坦な場所で扱う限り、それほど手強い印象は無い。


 ただし傾斜地で登坂路の上方向へ押し歩くとなると、非力な筆者の体力ではちょっと気合を入れた程度では不十分。345kgの巨体を扱う大変さを思い知ることになる。


 そんな時嬉しいのは、リバース機能が装備されている事。ギヤがニュートラルの時にリバースレバーを入れるとメーターのギヤポジションがRを示す。そこでセルボタンを押すとセルモーター駆動により楽々と後退してくれる。出だしもスムーズだし、少々の段差もクリア。


 実際、自宅車庫前には傾斜があり、バックで入る時には大助かりだった。ただしこの機能を使うには、エンジン始動時であることが条件。バッテリーを消耗させ過ぎてしまうトラブルを避ける仕組みだが、電動バックしている最中は野太い排気音を近所に轟かせていなければならず、バック操作を遠慮したい気分になったのも正直なところである。




 さて、シートに跨がり車体を起こしてエンジンを始動すると、グラッと一瞬左に傾こうとする。ボクサーエンジンや、モトグッチの縦置きVツイン等では当たり前の挙動だが、流石に1.8Lに合わせたクランクマスの重さもあって、最初は驚く程強い動きに感じられるだろう。


 もちろんそれは直ぐに慣れてしまえるレベルではあるが、走行中でもスロットルを開けると左へ、閉じると右へロールする傾向は常につきまとうのである。


 もっともそれは操縦性に悪さをするとかの類では無く、ほとんどは気にならないレベルで、個性的な乗り味を残した巧みな調教具合と言えるだろう。


 一番驚かされるのは、何といってもトルクの図太さにある。悠長なエンジン回転の中にしたためられたパフォーマンスはハンパじゃない。しかしその荒々しさを前面に主張する気配は感じられず、性格的な穏やかさが表現されており、常にジェントルな雰囲気に包まれている。


 シーソー式シフトレバー(前)を踏み込んでギヤをローに入れると、ほぼ900rpmだったアイドリングが1,000rpmになってクラッチミートに備えてくれる。乾式単板クラッチの切れ味は抜群。


 車重が重いのと高めのギヤリングのため、少し長めの半クラッチコントロールが必要だが、強かな底力を秘めながら、スーッと難なく発進する。


 ともかく発進以降は、エンジンの回転域などまるで気にすることなく、どんな状況下でも右手をひとひねりすれば雄大なトルクがいつでも発揮できる。その有り余るトルク感と、そこからもたらされる豊かな乗り味には心底脱帽である。   


 ちなみにローギヤで5,000rpm回した時(表示は無いがレッドゾーン付近)のスピードは72km/h。6 速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は2250rpm。120km/hでも2,700rpmに過ぎない。


 トップのままアクセル全閉で走ると50km/h強。郊外を60km/hで流す時もエンジン回転は1,200rpm。そんな走りに、バイクのイメージは微塵もないのである。


 ビッグトルクと重いクランクマス、そして水平対向とのコンビネーションからもたらされる穏やかで優しい雰囲気を伴う力持ち感覚は、他には無い独壇場の豊かな乗り味を楽しませてくれると言うわけ。


 走行モードは左手スイッチ操作で3段階が選択できる。通常はROLL。滑りやすい路面等優しくパワーセーブしたいならRAIN、そしてROCKにすると迫力の排気音と、よりパンチの効いたフルパワーが発揮できるが、パフォーマンス的にはもはやROLLで十分。


 操縦性はワイドなハンドル幅も相まって、走り始めてしまえば、至って軽い操舵力で軽快に扱える。Uターン等で大きく舵を切る時には、両肩をハンドルと並行にするよう、位置が遠くなるハンドルグリップに合わせてライダーは大きなアクションが必要となるが、操作感は至って素直。


 重量級クルーザーなので、峠道をスポーティに走ろうとは思わないが、実用上のバンク角に不足を感じさせない設計は流石である。ブレーキも、全体の雰囲気とのバランスが考慮された十分な制動力を発揮。右手のレバー操作では前後連動が働くパーシャリーインテグラルABSが採用されていて、安心感の伴う楽な操作性も好印象。


 両足のステップはボードタイプで、左足のシフトアップ操作は、踵で後方へ伸びたシフトレバーを踏み込む方式。スーパーカブやスクーターの様に、フォーマルシューズで乗ることも可能である。


 実際R-18で走り出すと、これまでのバイクの常識とは異なり、どこかクルマに乗るような安心感に包まれる。直進安定性、柔軟性に富むエンジンフィール等、とてもリラックスできる落ちついた乗り味り心地が満喫できる。


 本来、ピリピリとセンシティブな感性に磨きを掛けて巧みな操縦センスを駆使してエキサイティングな走りを楽しむ傾向が色濃いバイクとは別次元の乗り味がそこに溢れていた。


 R-18は、ライダーの気持ちを大きく朗らかなものにしてくれる贅沢この上ないバイクである。高価なモデルではあるが、そんな魅力を存分に楽しませてくれる価値ある逸材と思えたのである。


 


 なお今回、試乗車の走行距離は355km。試乗撮影時の燃費率は15.0km/L。箱根往復ツーリング時は23.3.km/L。トータル平均燃費率は19.0km/Lだった。

足つき性チェック(身長168cm)

巨大なボクサーツインエンジンを搭載し、車重もまさに巨漢。しかし、バイクに跨っている限り、それほどその重さを感じさせない扱いやすさがある。ご覧の通り、両足は地面にべったり。シート高が690mmと低く、股を左右に大きく広げて地面を踏ん張れるので、バイクを支える不安も少ない。

ディテール解説

丸型ランプハウスを始め、反射鏡とレンズカットはオーソドックスなデザインに仕上げられているが、光源はもちろんLED方式が採用されている。

寝かされたフロントフォークのデザインやスポークホイールの採用がどこか懐かしい雰囲気。ブラックリムサイズは、3.50の19インチ。φ300mmのダブルディスクブレーキには対向4ピストン油圧キャリパーを装備。個性的なオリジナルのクロームメッキカバーで化粧されている。

何度見ても驚きの大きさ。First Editionならではのクロームメッキパーツで化粧されたクランク縦置きの水平対向ツイン。1.8Lの巨大なパワーユニット。その迫力は見る者を圧倒する。

シフトペダルはシーソー式。写真(後ろ側)のペダルを踏み込む事でシフトアップする。上のレバーはバック操作用、後退時の動力はセルモーターが活用されている。12Vアクセサリー電源(DIN端子)も装備されている。

フィッシュテールでフィニッシュ。こだわりの造形を誇るマフラーデザイン。そのチャンバー・ボリュームの大きさも印象深い。真横から眺めるとリヤリジットにも見えるが、スチールのダブルスイングアーム方式で、シート下の見えない位置にモノショックが採用されている。

16インチのスポークホイール左側にはφ300mmのシングルディスクブレーキに対向4ピストン油圧キャリパーを装備。ドライブシャフトは右側にレイアウトされている。

お気づきだろうか!?どこかスッキリとしたハンドルまわり。実は左右にある各種スイッチやグリップヒーター用のワーヤーハーネス(配線)はハンドルパイプ内を通されている。往年のバイクでは珍しくなかったそんな手法が改めて新鮮かつ上質に見える。

ハンドル左側スイッチは下から順に赤いホーン、ウインカー、メーター表示を切り替えられるメニュー、そしてASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)をキャンセルするOFFスイッチ。向こう側には人指し指で扱うディマー&パッシングスイッチ。右列赤いのがハザードスイッチ、そして黒いのが走行モード切り替えスイッチ。RAIN、ROLL、ROCK(フルパワー)の選択ができる。
ハンドル右側スイッチは縦に並ぶ三つ。下から順に赤いのがエンジンキルスイッチ&始動用セルスタータースイッチ。黒いボタンはイグニッションのON/OFFスイッチ(鍵はスマートキー方式)。そして一番上はグリップヒーターのスイッチ。暖かさは強中弱の3段階から選択できる。
シンプルなシングルメーターを採用。200km/hフルスケールのアナログ式。四角い液晶ディスプレイには、モードを切り替えることで、様々な情報表示が選択できる。撮影時は、デジタル表示のタコメーターが表示される状態。走行モードのROLLとギヤポジションのN(ニュートラル)も表示されている。

イグニッションキーはスマートキー方式が採用されている。ご覧のキーを身につけていればハンドル右側のボタン操作でイグニッションのON/OFFができる。
裏側に折り曲げ収納されている機械式の鍵はプッシュボタンを押すと、クルン!と跳ね出てくる。燃料タンクキャップやステアリングロックの施錠、解錠にはこれを使用する。
グンと低くワイドデザインのフロントシートとリヤフェンダー上につながる後席。シートクッションはダブルステッチで上質な仕上がりが印象深い。いずれも固定式なので、簡単に脱着できるタイプではない。

黒いフェンダーにホワイトのダブルピンストライプが懐かしく、如何にもBMWらしい。テールとウインカー、そしてストップランプの機能を巧みに発揮するこだわりのLEDランプ。

◼️主要諸元◼️

エンジン型式:空油冷4ストローク水平対向2気筒(ボクサーエンジン)


内径 x 行程:107.1 mm× 100 mm


総排気量:1,802 cc


最高出力:67 kW / 4,750 rpm


最大トルク:158 Nm / 3,000 rpm


圧縮比:9.6 :1


燃料供給方式:燃料噴射式。電子制御エンジンマネージメントシステム(BMS-K)


点火方式:ツインスパークイグニッション(BMS-O)




最高速度:180 km/h以上


燃料消費率:17.9 km/L(WMTC)


バッテリー:12 V / 26 Ah、メンテナンスフリー




クラッチ:乾式単板


トランスミッション:常時噛合い式6速、独立型トランスミッションケース


駆動方式:シャフトドライブ


フレーム:ダブルクレードルスチールフレーム、アンダービームはボルトオン


サスペンション(前/後):テレスコピックフォーク/スチールダブルスイングアーム、モノショック


ホイールトラベル(前/後):120 mm / 90 mm


ホイール(前/後):3.50-19スポークホイール / 5.00-16スポークホイール


タイヤ(前/後):120/70 R-19 / 180/65 B-16


ブレーキ(前/後):φ300 mmダブルディスク 対向4ピストンキャリパー / φ300 mmシングルディスク 対向4ピストンキャリパー、BMW Motorrad パーシャリーインテグラルABS


キャスター:150 mm


ステアリングヘッド角度:57.3°


燃料タンク容量:16.0 L


リザーブ容量:約4.0 L




全長:2,465 mm


全幅(ミラーを含む):950 mm


全高(ミラーを除く):1,130 mm


軸距:1,725 mm


シート高:690 mm


車両重量:345 kg


許容車両総重量:560 kg

⚫️試乗後の一言!

悠然と、何者にも変えがたい豊かな乗り味に独壇場の魅力を覚えた。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 1800ccは無駄に大きなエンジンなのか!? いやいや。BMW Motorradの古くて真新しい提案、R-18に試乗