ファンティックと聞いて、トライアルの名門とわかる人は、もうバイク詳しすぎっ! いま売られている新生キャバレロは、オフロードも意識したストリートバイクで、スタイリッシュさと軽快な走りがウリ。豪華で本格的な足まわりにピックアップ鋭いエンジンが秀逸。さすがは伝統のイタリアンブランド、「500ラリー」はそのフラッグシップモデルです!!




REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) 


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

キャバレロ500Rally…124万円(税込み)

「スクランブラー」や「フラットトラック」といった土の匂いのするシングルスポーツ、そしてクロームモリブデン鋼ペリメタフレームを骨格とするプレミアムトレール「エンデューロ」をリリースしているのが、新生「Fantic(ファンティック)」です。




 70〜80年代はモトクロスやエンデューロ、特にトライアル競技で活躍しましたが、90年代以降は経営破綻と再建を繰り返し、日本ではあまり馴染みのないメーカーでした。

 創業開始は1968年、イタリア北部のバルザーゴにて。翌69年には初開催のミラノ展示会で、50ccのオフロード車「Fantic Caballero(ファンティック キャバレロ)」が紹介されました。歴史あるイタリアンブランドと言えるでしょう。

 日本でいま取り扱うのはサインハウス。2019年春より輸入・販売元となり、現在では東京都世田谷区尾山台、環状八号線沿いにショールームを構えています。




 ストリート向けの主軸モデルが『スクランブラー』と『フラットトラック』で、それぞれクロームモリブデン鋼セントラルチューブフレームに、水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載。125、250、500ccという排気量設定となっていますが、車体は共通。スクランブラーはフロント19、リヤ17インチ、フラットトラックは前後19インチの足まわりを持ちます。

 そんななか『500ラリー』をラインナップ。“ラリー”と名乗るのはこのモデルだけで、車体構成は『スクランブラー』に近いと言えます。ホイールサイズは『スクランブラー500』と同じフロント110/80-19、リヤ140/80-17で、後輪のみ125や250(130/80-19)より1サイズ太くなっています。

 前後サスペンションは調整機構が追加され、ストローク量も50mm延長し200mmを確保。スイングアームはアルミ製にグレードアップされ、メーターバイザーやヘッドライトグリル、アンダーガード、ラジエターガードも標準装備されました。

 跨ると腰高な印象です。シート高は860mmあり、身長175cm、体重64kgの筆者の場合、着座するとサスが沈み込み片足立ちならお尻をずらせばカカトまで地面に足が届きます。


 フラットシートで体重移動がしやすく、アグレシッブな走りを予感させます。ライポジに自由度があり視線も高く、ストリートバイクとしての素質の高さも感じます。

 両足を下ろすと、ツマ先立ちに。ハンドルはアップライトで、ゆったりとした乗車姿勢です。ハンドル幅があって、車体が振られても抑えの効くオフロード走行を考慮したライディングポジションです。

フランクにつきあえて、自在に操れる!

 走り出してすぐに感じるのは、個人的に好みのエンジンだということです。4スト競技用モトクロッサーが登場してすぐに購入し、数年おきに買い換えつつ長らく所有していた筆者としては、ピックアップ鋭い低中速重視の出力特性がとても痛快です。




 ボア×ストローク94.5×64mmで排気量449ccとするショートストローク設計の水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブエンジンは、軽快に吹け上がり、ARROW(アロー)の小径ツインマフラーからは歯切れのいい元気溌剌としたサウンド。シャープなスロットルレスポンスで、高回転まで引っ張り上げなくともキビキビ走り、身のこなしの軽さが際立ちます。




 ブン回すより早めにシフトアップし、トルク変動を滑らかに走らせた方が市街地では気持ちよく、パンチの効くヒット領域でアクセルをワイドオープンすれば強烈な加速が味わえるのです。

 前後サスペンションはしなやかに動きつつも減衰がしっかりと効き、腰のある足まわり。ストロークが伸びて重心が上がったので、ハンドリングに軽快感が増しています。寝かし込みで落ち着いた安定性を求めるなら、より低重心な「スクランブラー500/250/125」に軍配が上がるかもしれません。




 車体の挙動が把握しやすく、ハンドリングもクセがありません。フロント19インチは軽快かつオーソドックス。神経質さはなく、マシンの向きをスロットルワークでコントロールする快感に酔いしれそうです。




 フランクにつきあえて、自在に操れる。小難しさのないライドフィールは病みつきになる楽しさがあります。これはぜひダートにも持ち込みたい。ワクワクしてくるではありませんか!

キャバレロ500ラリー細部解説

LEDヘッドライトは中心のリング部がロービーム、上段の5つの発光ダイオードがハイブーム。ラリーではライトガードやメーターバイザーを装備します。

ワイドでアップライトなバーハンドルは、オフロード走行で車体の抑えが効くもの。可倒式のバックミラーを採用しています。

小ぶりなデジタルメーターは、半円の外周をタコメーターとし、中央にスピードや時計、走行距離などを表示。別体に燃料警告灯が設けられ、最低限の機能は確保しています。

ダート走行も考慮し、ハンドル左のスイッチボックスにはABSのキャンセルボタンも配備。グリップのワイヤリングを見ても、本格オフロードランに導かれます。

ストローク量を200mmに伸ばしたフルアジャスタブル倒立フォークを採用。ブレーキはBYBRE製ラジアルマウントキャリパーと320mmフローティングディスクの組み合わせで本格的です。

水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンは、最高出力40PS/7500rpmを発揮。高品質な綾織りドライカーボン製ヒートガードも目をひきます。

ステップホルダーは軽量で高剛性なアルミ削り出しとしています。細部も妥協を排した作り込みです。

別体式リザーバータンク付きのリヤショックもフルアジャスタブル式。フロントと同じ200mmのストローク量を確保しています。

フラットなシートはどこか懐かしいデザイン。自由度が高くオフロードでアグレシッブに身体を動かすことができます。ストリートにも似合うことは、計算され尽くしてのことでしょう。

2本出しのサイレンサーはARROW製。歯切れのいいサウンドとシャープなレスポンスに貢献しています。

リヤブレーキもBYBRE製キャリパーを採用。230mmディスクをセットしています。スイングアームはアルミ製にグレードアップされ、バネ下重量を飛躍的に軽減。タイヤはミシュラン・アナキーワイルドです。

SPECIFICATION

エンジン形式 水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ


排気量 449cc


ボア×ストローク 94.5×64mm


最高出力 40HP/7500rpm


最大トルク 43Nm/6000rpm


始動方式式 セル式


変速機 6速


フレーム クロームモリブデン鋼セントラルチューブフレーム


ブレーキ(F)φ320mmディスクブレーキ


ブレーキ(R)φ230mmディスクブレーキ


ABS 2チャンネルABS(ABSカット機能付き)


サスペンション(F)FANTIC FRS プリロード及び減衰力調整機構付き


サスペンション(R)FANTIC FRS プリロード及び減衰力調整機構付き


サスペンションストローク(F/R) 200/200mm


全長 2187mm


全幅 878mm


全高 1183mm


シート高 860mm


ホイールベース 1432mm


タイヤ(F/R) 110/80-19 140/80-17


乾燥重量 150kg


タンク容量 12ℓ


メーカー希望小売価格(消費税込) 124万円
情報提供元: MotorFan
記事名:「 ”ファンティック”って懐かしい? 目新しい? キャバレロ500ラリーはエンジンのピックアップ鋭い痛快ストバイ!