高級豪華ミニバンのカテゴリーは、トヨタ・アルファード/ヴェルファイアのひとり勝ちの状況だが、メルセデス・ベンツVクラスの存在感も見過ごせない。ここにさらに大きく豪華なグランエースが加わることになった。この3モデルの詳細を徹底比較してみる。


REPORT●小林秀雄(KOBAYASHI Hideo)(身長:173㎝)


※本稿は2020年3月発売の「グランエースのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

GRANACE Premium

全長:5300㎜

全幅:1970㎜ 全高:1990mm
開口高:575mm ミラー・トゥ・ミラー:2270mm


全長5300㎜、全幅1970㎜という恵まれたボディサイズから、室内長も3290㎜、室内幅1735㎜という圧倒的なスペースを確保。それでいて最小回転半径は5.6mと小回り性能も優秀。

グランエースの場合、主役はあくまで後席に座る乗員ということで、運転席まわりの雰囲気はアルファードと比べれば少し実務的。とはいえ、各部に木目調パネルを採用し、質感の高さは十分以上。マルチディスプレイ付きオプティトロンメーターやスマホ連携機能付きディスプレイオーディオも標準装備される。

車両重量が2.7tを超えるため、エンジンはトルク特性に優れた2.8ℓ直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載。6速ATとの組み合わせで、スムーズな加速を実現する。WLTCモード燃費は10.0㎞/ℓ。

「Premium」と「G」、いずれのグレードも凝ったデザインの17インチアルミホ ールを標準装備。一般的なタイヤよりも空気圧を高めに設定するライトトラック用タイヤを装着する。サイズは235/60R17。

1列目席:シート表皮は本革を使用。運転席8ウェイ、助手席4ウェイのパワーシートを装備し、どちらも快適温熱シートが備わる。アルファードと比べるとサイドサポートの形状などに違いはあるものの、質感や座り心地は同等レベルだ。

3列目席:「Premium」は3列目席にも2列目と同じエグゼクティブパワーシートを装備。2列目席と同様の快適装備が備わる。カップホルダー付きの大型アームレストで隔てられており、ひとりひとりが快適なパーソナル空間を堪能できる。
2列目席:アルファードにも採用されているエグゼクティブパワーシートを装備。スライド機構とパワーリクライニングを備え、快適温熱シートも完備されている。ヘッドレストには睡眠時に頭を支える角度調整式サイドサポートも装備。


通常時:高さ1200㎜ 最小奥行き270㎜

居住スペースを最大限広く取った場合は、荷室の奥行きは約270㎜と、あまり広くはない。4列8人乗りの「G」の場合はさらに狭く、最小奥行きは約100㎜に留まる。用途が旅行客の送迎ということになると、荷物を載せるために2〜3列目席をある程度前にスライドさせた状態が初期設定と考えるべきだろう。

3列目格納時:奥行き700㎜

2列目席と3列目席に人が座れるスペースを確保した上で、荷室の奥行きを広げた状態。カタログにも縦750㎜×横510㎜×幅310㎜のスーツケース4個を立てた状態で積載した写真が紹介されているが、それくらいがちょうどいいシートポジションだと考えられる。「G」の場合は4列目席の座面をチップアップした状態で一番前までスライドさせると、約650㎜の奥行きを確保できる。

2+3列目格納時:最小幅1210㎜ 最大奥行き1220㎜

2列目席はシートが固定される位置まで、3列目席は人が座れない(=2列目席とのクリアランスがない)ところまでスライドさせると、これだけの奥行きを確保できる。

V-Class V220d AVANTGARD long

全長:5140㎜

全幅:1928㎜ 全高:1901mm
開口高:490mm ミラー・トゥ・ミラー:2250mm


全長が4895㎜、5140㎜、5370㎜と異なる3種類のグレードを設定。最も大きい「エクストラロング」がグランエースに近いサイズだが、受注生産扱いとなるため納車に時間が掛かる。

ひとつの有機体のように滑らかなラインでデザインされたインパネ。ひとつひとつの加飾もハイクオリティで、所有する満足感を高めてくれる仕上がりだ。ユーティリティも先進的で、8.4インチワイドディスプレイと専用コントローラーを備えるCOMANDシステムを採用。HDDナビやオンライン機能を標準装備する。

全車2.2ℓの直4ディーゼルターボを搭載。最大トルクを1400〜2400rpmという低回転域で発生し、発進や追い越し加速でもたつくこともない。トランスミッションは7速ATを組み合わせる。

5ツインスポークの18インチアルミホイールを全車に標準装備。グランエースとは対照的に非対称パターンを採用したグッドイヤー製のスポーティタイヤが装着されている。サイズは245/45R18。

1列目席:大きなサイドサポートを備え、トリムパターンもスポーティな印象を与える本革シート。1列目席にはメモリー付きパワーシート、シートヒーター、電動ランバーサポート、回転式アームレストが備わる。

3列目席:3列目席は2名掛けベンチシートと1名掛けキャプテンシートを並べて装備するのが通常のスタイル。個別にスライドやリクライニングの調整が可能で便利なのだが、成人男性が座るにはひとり当たりの幅は少し狭い印象を受ける。
2列目席:Vクラスは2列目席より後ろに脱着可能なシートを備えるのがユニーク。写真の通り2列目席には2座のキャプテンシートを備えるのが初期設定だが、それを後ろ向きに装着して3列目席と対座モードにすることも可能だ。


通常時:高さ1200㎜ 最小奥行き540㎜

3列目席が一番後ろにある状態でも荷室の奥行きは約540㎜あり、十分に実用的。シートの下側が空洞になっているので、そこに荷物を収納することも可能だ。ちなみに2列目席と3列目席は同じスライドレールに装着されており、それぞれ前にスライドさせれば荷室を拡大できる。どちらの席にも人が座れる適度な余地を残すと、だいたい800㎜くらいの奥行きが生まれる。

3列目格納時:奥行き1810㎜

2〜3列目席はシートを取り外せるのだが、シートそのものがかなり重たく、成人男性でも持ち運ぶのは重労働。外したシートの保管場所も必要となる。写真のように背もたれだけ前倒しできるので、不意に荷物が増えた時などは、その方がよほど手軽だ。ちなみに写真内の奥行きは2列目席を一番前までスライドさせた状態の数値。その状態だと2列目席に人が座ることはできない。

2+3列目格納時:最小幅1200㎜ 最大奥行き2540㎜

写真は2列目席の背もたれも前倒しした状態。最大奥行きは1列目席までの距離で、2.5mを超える。

ALPHARD HYBRID Executive Lounge

全長:4945㎜

全幅:1850㎜ 全高:1950㎜
開口高:620㎜ ミラー・トゥ・ミラー:2230㎜


グランエースより小さいが、それでも全長4945㎜、全幅1850㎜と、日本の道路環境ではフルサイズと言っても過言でない大きさ。最小回転半径は5.6mで、一部グレードは5.8mとなる。

インテリアの各部に上質な革巻き表皮や木目調パネルを採用。パーソナルユースの乗用ミニバンだけに、運転席まわりの豪華さはグランエースにも勝る。特に撮影車の「エグゼクティブラウンジ」は最上級グレードのため、装備が充実。T-Connect対応10.5インチナビとJBLプレミアムサウンドシステムを標準装備する。

ハイブリッド車は2.5ℓ直列4気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載。後輪にもモーターを備える電気式四輪駆動を採用している。WLTCモード燃費は14.8㎞/ℓ。

「エグゼクティブラウンジ」はスパッタリング塗装を施した17インチアルミホイールを標準装備。タイヤサイズは225/60R17となる。ガソリン車のエアログレードには18インチアルミも設定されている。

1列目席:「エグゼクティブラウンジ」は豪華なプレミアムナッパ本革シートを装備。運転席8ウェイパワーシートや助手席パワーオットマン、前席の快適温熱+ベンチレーションシートも装備され、ユーティリティも一級品。



3列目席:3列目席はグランエースと大きく違い、3名掛けの5対5分割スペースアップシートを装備。跳ね上げて格納することができる分、アームレストが回転式となるなど、シートそのものつくりはグランエースよりもシンプル。
2列目席:「エグゼクティブラウンジ」の2列目には、グランエースよりも豪華なエグゼクティブラウンジシートを装備。伸縮機構付きパワーオットマン、快適温熱+ベンチレーションシート、格納式テーブルなどを備える。


通常時:高さ1190㎜ 最小奥行き250㎜

この状態だと奥行きは最小限しか確保されていないため、たいして荷物を積むことはできない。ただし、3列目席にもスライド機構が装備されているので、シートを前にスライドさせれば奥行きを拡大することができる。また、シートがどの位置にあっても使用できる容量148ℓの床下収納も装備。サブトランク的に使えて便利だ。

3列目格納時:奥行き1250㎜

3列目席は左右別々に荷室の側面に跳ね上げて格納することが可能。写真では左右両方のシートを跳ね上げているが、もちろん左右どちらかのシートだけ格納することもできる。また、写真内の奥行きの数値は2列目席に人が座れる範囲内のものだ。

2+3列目格納時:最小幅910㎜ 最大奥行き1740㎜

3列目席を格納した上で、2列目席を一番前までスライドさせると、荷室の奥行きを最大化することができる。その時の数値は2列目席シートの仕様によって変化するが、「エグゼクティブラウンジ」に備わるエグゼクティブラウンジシートの場合は、一番狭いということになる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタ・グランエースとメルセデス・ベンツVクラス、トヨタ・アルファードを徹底比較!〈インパネ/シート/ラゲッジスペース/スペックetc……〉