Mラインナップの頂点に君臨するのが、M8コンペティション/カブリオレだ。


まさにラグジュアリーと超ハイパフォーマンスを融合させた次世代スーパースポーツである。


新型8シリーズ・グランクーペとともにその性能を満喫してきた。




REPORT◉島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)


PHOTO◉BMW AG




※本記事は『GENROQ』2019年12月号の記事を再編集・再構成したものです。

 結論から言えば、、昨年デビューしたM850iと最新作であるM8、とりわけコンペティションはまったくの別物である。そんなの当たり前だと言われるかもしれないが、M850iだって同じ排気量4.4ℓV型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、シャシー開発にはM社が協力したと謳われているのだ。どうして似たようなモデルが2つ要るのかと考えても無理は無いだろう。




 しかしながら、たとえばそのエンジンひとつ見ても、M8のそれはM850iの70㎰増となる最高出力600㎰を稼ぎ出しており、M8コンペティションに至っては、実に625㎰にも達している。しかも高出力と鋭いレスポンスを両立させるべく、Vバンク内に2基のツインスクロールターボチャージャーを収め、エキゾーストマニホールドをクロス配置したMツインパワー・ターボテクノロジーを採用しているのだ。




 駆動方式も、同じ4WDではあるがこちらは専用のM xドライブを採用。4WD、4WDスポーツの他に2WDモードも選択できる。




 シャシーは、フロントサスペンションに専用アッパーアームを使ってキャンバーを増加。ロワアームブッシュの硬度を高めた。リヤはロワアーム、トーリンク、アップライトがアルミ鍛造品に。さらに各部のブッシュ類は大幅に強化された。

M8よりも+25㎰高められた625㎰の最高出力を発生する4.4ℓV8ツインターボエンジンを搭載するコンペティションモデル。0→100㎞/h加速は3.2秒の実力だ。

 まだまだ、それだけじゃない。クーペにはCFRP製ルーフを標準装備するボディは、タワーとバルクヘッドを繋ぐストラット、フロント下面を覆いサイドシルまで連結する高剛性パネル、車体後方のX字型ブレース等々を新たに装備している。言うまでもなくシャシー剛性を大幅に引き上げるためである。




 ブレーキは新たに電動アクチュエーターを採用し、より優れたレスポンスとペダルフィールを実現したという。オプションとしてMカーボンセラミックブレーキも選択可能だ。




 さらにコンペティションでは、フロントのキャンバー角増大、リヤサスペンションへのスチールブッシュの採用、エンジンマウントの50%強度アップ、ダンパー減衰力向上といったメニューが加わる。今回試乗したのはクーペとカブリオレの、ともにこのコンペティションである。




 まず一般道で乗ったカブリオレでは、やはりボディ、シャシーのソリッド感が印象的だった。M850iと較べて操舵感には明確に芯が出ているし、締め上げられたサスペンションにも関わらず姿勢はフラットに保たれるから、爽快なクルージングを満喫できる。エンジンも、やはりレスポンスが一層リニアになり、またトルクの凝縮感も増した雰囲気で、右足の動きに即応する高い一体感が心地良い。




 正直、こんなに違うのかと驚いてしまった。この凝縮感高い走りっぷりはまさしくMである。

ラグジュアリーな雰囲気に仕立て上げられたインテリア。Mスポーツレザーステアリングや贅沢なフルレザーメリノを用いたMスポーツシートを採用している。

 アルガルベサーキットで乗ったクーペも、まさに別物という印象だった。操舵応答性が格段に正確さを増していたのはカブリオレで体験した通り。M850iは限界が近づくと操舵応答が鈍くなり後輪も操舵しているにも関わらず強いアンダーステアに見舞われたが、M8コンペティションは終始ニュートラルステアを保ち続ける。シャシー剛性も明らかに高く、うねった路面でも4輪は接地感を容易には失うことがない。




 この時のモードは4WDスポーツ。駆動力を後輪寄りに配分し、必要な時に前輪でも引っ張り出すこのモードはオーバーステアを軽度に抑えて、滑るかなと思ったところで姿勢をスッと整える。おかげでDSCオフでも危なげなく走りを楽しめた。




 ブレーキにも言及しておくべきだろう。ストロークが短く剛性感に満ちたタッチは優れたコントロール性に繋がっており、安心してペダルを蹴飛ばすことができた。サーキットに行くならMカーボンセラミックブレーキは必携である。




 とは言え、個人的にはサーキットを攻めるならM4やM2の方がいい。M8はむしろ華やかで贅沢なカブリオレに魅力を感じた次第だ。




 この日は他にも、一般道で新登場の840iグランクーペを試すことができた。ファストバック風の、よりエレガンスが強調されたフォルム、よりパーソナル感を強めた2席のリヤシートなど、優雅な存在感を放つこのモデルは最高出力340㎰を発生する3ℓ直列6気筒ターボエンジンとFRレイアウトが織りなす軽やかな走りで、M8にも負けない鮮烈な存在感を示した。




 実はこの840i、すでに日本でも発表されているはずだが、当初はクーペやカブリオレに倣って導入予定は無かったのが、この試乗のあと急遽、方針が変わって設定されることになったと聞いた。もちろん、先日発表されたM8グランクーペも追って追加されるはずである。

こちらは4ドアのM8グランクーペ

SPECIFICATIONS BMW M8コンペティション〈M8カブリオレ・コンペティション〉


■ボディサイズ:全長4867×全幅1907×全高1362〈1353〉㎜ ホイールベース:2827㎜ トレッド:Ⓕ1627 Ⓡ1632㎜


■車両重量:1885〈2010〉㎏


■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク:88.3×89㎜ 総排気量:4395㏄ 最高出力:460kW(625㎰)/6000rpm 最大トルク:750Nm(76.5㎏m)/1800~5800rpm


■トランスミッション:8速DCT


■駆動方式:AWD


■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡ5リンク


■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク


■タイヤサイズ:Ⓕ275/35ZR20 Ⓡ285/35ZR20


■パフォーマンス 最高速度:305㎞/h 0→100㎞/h加速:3.2〈3.3〉秒


■環境性能(EU複合モード) 燃料消費率:10.6~10.5〈10.8~10.6〉ℓ/100㎞ CO2排出量:242~238〈246~241〉g/㎞


■車両本体価格:2433〈2541〉万円
情報提供元: MotorFan
記事名:「 スーパースポーツカー級の600ps超え!M8は本気だ【BMW M8 Competition / Cabriolet Competition / 840i Gran Coupé試乗記】