REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●フォルクスワーゲン
ID.3のデザインそのものはe-ゴルフの正常進化版と言えるもので、全幅は10mm、全高は70mm、ホイールベースは128mm拡大しているが、逆に全長は9mm、最小回転半径は0.35m短縮されている。
MQBがあらゆる横置きパワートレインを想定して設計されたFF車用なのに対し、MEBはEV専用で、かつパワーエレクトロニクス・モーター・1速ギヤボックスを一体化したユニットをリヤに搭載するRR車用だ。
つまり、ID.3はフロントにエンジンを搭載しない前提で設計されているため、フロントタイヤの切れ角を大きく取りやすい。そのことが、ロングホイールベースの不利を補って余りあるほどの小回り性能をID.3にもたらした可能性が高い。
ただし、日本の道路・駐車場環境を考えると、全幅が1800mm、全幅が1550mmをわずかながらも超えているのは、決して好ましいことではない。特にこうしたコンパクトな実用タイプのEVは、例え航続距離が長くとも大都市圏ユーザーが短距離移動に使うのがメインとなるため、日本市場向けには何らかの対策が講じられることを願わずにはいられない。
ID.3はe-ゴルフに対しパワーは50kW、トルクは20Nm、最高速度は10km/hアップしており、高速道路での使用にも耐えられるよう性能向上が図られたことがうかがえる。
なお、ID.3の「1ST」には容量58kWh・航続距離420kmの、中間レベルにあたるバッテリーが搭載されるが、後に下位レベルにあたる容量45kWh・航続距離330km、上位レベルにあたる容量77kWh・航続距離550kmのバッテリーも設定される予定。
この下位レベルのバッテリーでも航続距離はe-ゴルフの1.65倍…いや、試験モードが従来のNEDCから、より実態に即したWLTPに変更されているため、実際には2倍近くに伸びていることだろう。
また、リヤにモーターユニットを搭載しながら、荷室容量はe-ゴルフと同等以上となっていることからも、EV専用プラットフォームとしたMEBのパッケージング効率の高さが見えてくる。