フォルクスワーゲン・ゴルフに待望のTDI=2.0ℓ直4ディーゼルエンジン搭載モデルが登場した。ゴルフ7のモデルライフも終盤に入ったが、まさに集大成とも言える完成度だった。自身もマイカーとしてゴルフ7に乗るジャーナリスト、世良耕太がゴルフTDIに試乗した。




TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

真打ち登場! だが、パサートのディーゼルとはスペックが違う

ボディカラーはタディープブラックパールエフェクト

 真打ちの登場だ。フォルクスワーゲンは2018年2月にパサートのセダンとヴァリアントにディーゼルエンジンを搭載する「TDI」モデルを追加した。以後、18年中にティグアン、ゴルフトゥーラン、パサートオールトラックにもTDIモデルを追加している。




 そしてようやく、ゴルフの番が巡ってきた。2019年10月1日に「ゴルフTDI」と「ゴルフヴァリアントTDI」が追加される。「待ってました!」という感じだ。同時に、3列シート7人乗りミニバンのシャランにもTDIモデルが追加された。これで、VWのラインアップでディーゼルエンジンを搭載するのは8モデルになった。




 ゴルフ/ゴルフヴァリアントTDIが搭載するディーゼルエンジンは、EA288型の2.0ℓ直列4気筒ユニットだ。筆者は18年2月にパサートヴァリアントTDIに乗っており、そのときの印象をもとに今回、ゴルフヴァリアントTDIに試乗した。ところが、どうも印象が違う。それもかなりいい方向に……。エンジンを含むパワートレーンのスペックを比較してみたら、内容がかなり異なっていた。まずは、そこから整理していこう。

全長×全幅×全高:4575mm×1800mm×1485mm ホイールベース:2635mm

最小回転半径は5.2m
車重:1490kg 前軸軸重:890kg 後軸軸重:600kg


 パサートヴァリアントTDIが搭載するエンジンのスペックは以下のとおりである。




最高出力140kW(190ps)/3500-4000rpm 最大トルク400Nm/1900-3300rpm 容積比15.5




 ゴルフヴァリアントTDIが搭載するエンジンのスペックは以下のとおりだ。




最高出力110kW(150ps)/3500-4000rpm 最大トルク340Nm/1750-3000rpm 容積比16.2




 同じエンジンだが仕様は異なり、ゴルフTDIの方がおとなしいスペックとなっている。組み合わせるトランスミッションも異なっており、パサートヴァリアントTDIは6速DSG(DCT)の組み合わせ。ゴルフヴァリアントTDIは7速DSGだ。100km/h走行時のエンジン回転数は、パサートが約1750rpm、ゴルフは約1550rpmである。車重はパサート(ヴァリアントTDIハイライン)が1630kgなのに対し、ゴルフ(ヴァリアントTDIハイラインマイスター)は1490kgだ。

エンジン 形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCターボ 型式:EA288(DFG型) 排気量:1968cc ボア×ストローク:81.0×95.5mm 圧縮比:16.2 最高出力:150ps(110kW)/3500-4000pm 最大トルク:340Nm/1750-3000rpm 燃料:軽油

エンジンカバーがあるとこんな景色
エンジンカバーの裏側にもかなり注力しているのがわかる


 パサートとゴルフは同じパワートレーンを積んでいるものと決めつけて乗ったのが間違いの元で、いろいろ違うと知って印象を補正すると合点がいく。スペック由来の違いについては後述するとして、車室内にいる限り、エンジンはとても静かだ。パサートはディーゼルエンジンの主張を特有のノイズで常に感じさせたが、ゴルフはディーゼルの主張を音の面ではほとんど感じない。




 エンジンをかけたまま外に出ると、ゴルフもパサートと同様、ディーゼル特有の勇ましい音が耳に飛び込んでくる。遮音の差だろうか。ゴルフはディーゼルエンジンを搭載するにあたって遮音を徹底したに違いないと断定的に言えるのは、ガソリンエンジン搭載車と乗り比べてみたからだ。エンジンの透過音だけでなく、ロードノイズの透過もまるで違う。ゴルフTDIはひとクラス上の静けさだ。「ちょっと乗らない間にずいぶん良くなってない?」と感じたが、実際にはTDIモデル限定で、そう感じた理由のひとつはレベルアップした静けさに負うところが大きい。

 一方で、「パサートのディーゼルほどパンチがないな」と感じた。その理由は、エンジンのスペックが説明している。ゴルフTDIはパサートTDIよりも最高出力で30kW(40ps)、最大トルクで60Nm控え目だ。車重の違いや排ガス規制の違いも考え合わせての仕様設定だろうが、そもそもパサートとゴルフでは狙った方向が違うのだろう。ゴルフの場合、走りを求めるならGTIがある。TDIは走り一辺倒ではなく、走りと燃費をほどよくバランスさせる方向でまとめられている。

ガソリンのハイラインより速くて快適

インテリアはゴルフらしい合理的で質実剛健(素っ気ないともいう)

 パサートTDIが搭載するディーゼルエンジンに比べるとスペックは控え目だが、最大トルクは340Nmもあって250Nmを発生するガソリンエンジンのTSIハイラインより36%も大きなトルクを発生する。だから、充分に力強いし、頼もしい。高速道路の本線への合流ではストレスなく加速し、ひとたび巡航速度に達すると極めて静かな移動空間となる。前のクルマに詰まって追い越しを仕掛けるときは、右足にほんの少しだけ力を込めれば事足りる。楽なことこのうえなく、TDIではなくGTと呼びたくなるキャラクターの持ち主だ。



 TDIのキャラクターに合わせたということだろうか、電動パワーステアリングの味つけはガソリンエンジン搭載車と異なっており、反力は強めだ。つまり、ステアリングを切り込むのに、相対的に大きめの力が要る。どちらかというとガソリンエンジン搭載車は軽めの味つけなので、「これくらいがちょうどいい」と感じる人の方が多いかもしれない。

ラゲッジルームは通常で605ℓ 後席を倒せば1620ℓ

TDIエンブレム
AdBlueを使う尿素SCRシステム搭載


タイヤは205/45R17
VWアウディグループが多用するフルデジタルメーターを採用


1.4ℓTSIと比較してTDIは前軸軸重が90kg重い。

フォルクスワーゲン・ゴルフ ヴァリアントTDI Highline Meister




全長×全幅×全高:4575mm×1800mm×1485mm


ホイールベース:2635mm


車重:1490kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式&R4リンク式


駆動方式:FF


エンジン


形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCターボ


型式:EA288(DFG型)


排気量:1968cc


ボア×ストローク:81.0×95.5mm


圧縮比:16.2


最高出力:150ps(110kW)/3500-4000pm


最大トルク:340Nm/1750-3000rpm


燃料:軽油


燃料タンク:50ℓ


燃費:WLTCモード 17.7km/ℓ


 市街地モード 13.4km/ℓ


 郊外モード 17.8km/ℓ


 高速道路モード 20.5km/ℓ


トランスミッション:7速DCT


車両本体価格:405万円

情報提供元: MotorFan
記事名:「 VWゴルフ ヴァリアントTDI:パサートのディーゼルよりパワー/トルクは低いが洗練度は高い