この実証試験は、ケーブルの送電ロスを削減できるだけでなく、プラント内の既存の冷熱の利用により超電導ケーブルの冷却に必要なエネルギーを大幅に削減することができるため、高い省エネ効果が期待されている。この実施に向け、BASFジャパンは戸塚工場の敷地の一部を活用するほか、ケーブルのさらなるエネルギー効率化を実現するために高温超電導ワイヤーを、材料として提供する。本年中に敷設工事を行ない、2020年2月の運転開始を予定している。
現在使用されている電線には、金属(銅あるいはアルミニウム)が導体として使われているが、抵抗による発熱で送電ロスが発生するため、さまざまな対策が取られている。そのひとつに、「抵抗ゼロ」の超電導体を使った送電ケーブルで電力のロスを防ぐ方法があるが、超電導状態を維持するためには液体窒素で冷却し続ける必要があり、このコストもまた、課題となっている。こうした背景から、NEDO、昭和電線ケーブルシステムにより、低コスト化が可能な超電導ケーブルシステムが開発され、その実証試験が行なわれることになった。化学工場や製鉄所などのプラントの多くでは、プラント内で窒素ガスや液体窒素が使用されている。BASFジャパン戸塚工場内で実施することで、プラント内の既存冷熱を利用した省エネ効果の検証ができるほか、敷地内に約250mの超電導ケーブルを適用する民間プラントでの敷設工法、運用管理方法についての検証も行なう。
また、本実証試験で使用される超電導ケーブルには、BASFの100%子会社であるDeutsche Nanoschicht GmbH(ドイチェナノシヒト社)が2016年に商業生産を開始した高温超電導ワイヤー(Optrium)が採用される。従来のケーブルと比べて、Optriumは、電力損失がほとんどなく、電気を効率的に流すことができ、小さな断面積で大量のエネルギーを搬送できるため、昭和電線ケーブルシステムが開発した、三相同軸型の超電導ケーブルシステムのエネルギーの有効利用とさらなる低コスト化に貢献する。