日本初登場となるESは、居心地の良さを重視してつくられたセダン。後席が広いパッケージングに加えて、快適性の高い装備を搭載して乗員をもてなしてくれる。そんなESの使い勝手を、上級仕様"version L"を中心に見ていこう。




レポート●工藤貴宏(KUDO Takahiro)


アシスタント●石原あつみ(ISHIHARA Atsumi)(身長160㎝)


フォト●中野幸次(NAKANO Koji)/宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)/平野 陽(HIRANO Akio)

デジタルアウターミラーのメリット:市販車初の世界初搭載となるデジタルアウターミラー。そのメリットのひとつが、斜め前方視界の拡大だ。ドアミラーをカメラに置き換えて小型化することで死角を減らし、見える範囲が広がって安全に貢献する。

セダン最大級のスペース:ESは、後席の人も快適に移動できることを重視し開発。LSに匹敵するほど広い後席足元スペースをはじめとする空間づくりや快適装備の充実は、ドライバー重視のISやGSとは方向性が異なる。

〈運転席まわり〉姿勢変化や視線移動がなく手元操作で車両をコントロール

助手席前を低くし、開放感をもたらす意匠。12.3インチとクラス最大のディスプレイは横長で、下部をダッシュボードに埋め込んで高さを抑えて前方視界を邪魔せず、圧迫感を抑えるように配置。インパネ全体でスイッチの数を削減しつつ、頻繁に使うスイッチは目立つ場所に、使用頻度が少ないものは目立たせないといったメリハリも特徴的だ。



7インチの液晶画面を組み合わせた標準車のメーターは、「F SPORT」以外でも円形をモチーフにしているのが新しい。右は水温系と燃料系で、左にマルチディスプレイを備える。HVモードでタコメーターが出力/回生計になるほか、走行モードで表情が変化する。



ステアリングスイッチは右のメインがクルーズコントロール操作(渋滞対応で設定上限180㎞/h)+車線維持機能オン/オフで、左がメーター内表示の切り替え+通話&発話ボタン。下部は左右にわたってオーディオ操作だ。

左側ダイヤルは走行モード切り替え。奥がスポーツ、手前がECOで先端を押すとノーマルに戻る。
ワイパースイッチに備わる突起部分は、スライドして間欠のタイミングを調整する機能。


メーターフード右のダイヤルはスタビリティコントロールのオフ。雪道のスタック時などに使う。
ライトスイッチは、ランプ点灯でオートハイビームのオン/オフもわかるのが機能的で便利だ。


インパネ右下にはカメラ切り替え、ヘッドアップディスプレイの作動、そしてAC100V電源のメインスイッチが並ぶ。
運転席のポジションは3セットのメモリー付きで、ドアに保存したポジションを呼び出すスイッチを内蔵。


駐車ブレーキはステアリングコラム斜め下付近の目立たない場所に。電動かつ自動制御だから触れる機会はほぼない。
シートは電動調整式。「version L」には前後上下を調整可能な電動ランバーサポートが備わり、丸いのがそのスイッチ。


全車ともハイブリッドだが、シフトレバーは電子式とせず従来ながらのタイプとしている。Dから右に倒すと、前後に動かして任意のシフトアップ/ダウンが行なえる。

マルチインフォメーションディスプレイ

エネルギーモニター

エンジンとバッテリー、そして駆動輪のエネルギーの流れの状況とバッテリー残量を表示。グラフィックも繊細で美しい。

ITSコネクト設定

道路側から受けた情報をディスプレイに映す機能。交差点付近の他車の存在や信号待ちの残り時間なども表示する。

通信車接近通知

通信機能を搭載した車両同士が情報のやり取りを行ない、クルーズコントロールの協調制御などに活用している。

運転支援システム

プリクラッシュセーフティや車線維持支援機能など安全支援デバイスのオン/オフを切り替える設定画面。

〈ナビ・AV・空調〉ノイズを消して快適に。デジタルミラーは安全性にも寄与

サイズが大きく横長のディスプレイは、画面を左右分割して複数の情報を表示するシーンでも表示項目が見やすい。操作はシフトレバー脇のパッドを使いブラインドタッチで行なう。空調パネルは温度調整操作を上下に動かすダイヤルとしたのが人間の感覚に沿っていて使いやすい。

地図や空調操作以外にも、ディスプレイにはさまざまな情報を表示できる。最上部の写真は各種機能を呼び出すホームメニュー。下に向かってエコ情報、燃費履歴、ハイブリッドシステムの作動だ。

エアコンの細かい設定(マニュアル操作)はディスプレイを使って行なえる。ただ、オートエアコンが優秀なため使う機会は少ないだろう。

空調環境としてはエアコンだけでなく、ステアリングヒーター、シートヒーター、そしてシートベンチレーションまで一括で管理する。

「クライメイトコンシュルジュ」としてエアコンとシートヒーター&ベンチレーションの作動を連動し自動制御。快適性を徹底追求する。

「version L」のエアコンは前席左右だけでなく後席も独立で制御できる3ゾーン式。ディスプレイで前席からのコントロールも行なえる。

使用頻度の低いリヤブラインド、そしてステアリングヒーター、シートヒーター&ベンチレーション操作のスイッチはインパネ中央下部の目立たない場所に設置。ヒーター系&ベンチレーションはマニュアル操作しなくても状況に応じて自動制御してくれるモードを用意するのはさすが。

ナビをはじめディスプレイを使う操作を行なうのは、センターコンソールに設置されたパッド。スマホの画面を触るのと同じ感覚で、直感的に操れる。
センターコンソール後部には後席の環境を整える空調吹き出し口が組み込まれている。風向きと風量は手動でコントロール可能だ。


DC12VやUSB電源を装備

前席にもUSB端子をふたつ用意している。こちらは車両とも連携し、接続したスマホ内の音源を車内で再生可能だ。隣はアナログ音声入力。

グローブボックス内に用意されるDC12V電源。USBやAC100V電源が完備されているとはいえ、DC12Vで作動する車載電装品に配慮。

センターコンソール後部に組み込まれるUSB電源とAC100Vアウトレット。USBは2.1Aの急速充電タイプで、ACは1500Wの大容量だ。

量産車世界初のデジタルアウターミラー

カメラはコンパクトで、斜め前方視界の拡大や空気抵抗&風切り音の低減などもメリット。アームが外側に長いのは、カメラ画角の調整や下部にある全方位カメラの位置の兼ね合いだ。

カメラからの映像を映すのは、Aピラー付け根に備えた5インチ画面。映像は状況に応じて明るさが自動で変わる機能が組み込まれている。斜め後方に車両が存在する場合、アイコンで示す。

通常画面。雨やガラスの曇りで窓越しの視界が悪い状況でも斜め後方をきちんと確認できるのが利点で、鏡が曇ることもない。映像をクリアにするため、カメラにはヒーターを内蔵。

ウインカー連動による左右折時や車線変更時、そして後退時には自動で表示範囲を拡大(オフも可能)。こういった“一歩踏み込んだ便利・安全機能”ができるのも電子ミラーのメリット。

通常のミラーと同様に見える範囲を上下左右に調整するほか、折り畳みもできる。一方、調整スイッチに触れると瞬時に画面が広範囲を映して視界を広げる機能はカメラならでは。

F SPORTの専用装備

ステアリングは理想的な握り感を求めてテストドライバーの声を反映したグリップ断面を持つ専用設計。メーターはスイッチ操作でリングが左右にスライドする、LFA譲りの可動式だ。

液晶のサイズは8インチで、標準車よりも1インチ拡大。「Sport S+」モードにするとタコメーターが強調されるデザインとなる。メーターのデザインは全部で5パターンを用意。

シフトノブもディンプル処理した革(ステアリングホイールと同様)を巻いた専用仕上げをコーディネート。身体に触れる部分はすべて「F SPORT」専用だ。

最大のレスポンスを発揮する「Sport S+」を選択できる走行モード切り替え。サスペンションの設定もシャープなハンドリングに変更される。

アルミ製スポーツペダル&フットレストも「F SPORT」専用アイテム。大きく、下部を支点にした「オルガン式」のアクセルペダルは全車共通だ。

注目装備

デジタルインナーミラー

「F SPORT」と「version L」のルームミラーはデジタル式も選択できる。後方カメラからの映像を液晶画面に映す仕組みで、後席に人がいてもミラーに映らず、広い視界を得られる。

マークレビンソンを採用

上級仕様のオーディオは、レクサスの定番“マークレビンソン”。とにかくクリアに響き渡るのが同ブランドの音づくりの特徴で、ボーカルの質感が高い。

〈居住性&乗降性〉後席のカップルディスタンスは1025㎜ ゆとりの足元スペースでくつろぎ空間

着座:540㎜〜560㎜ ステップ:370㎜

開口部の幅が広いことは、前方足元が広くて足を出し入れしやすいことで実感できる。もちろん、デジタルアウターミラーのディスプレイは乗り降りの邪魔をしない。



低い着座位置に腰を沈めるように座る、清々しいまでのセダン直球ポジション。骨盤の支持と安定をしっかり考えて設計されたシートは、背中のフィット感が高いから座り疲れが最小限で、座り続けても姿勢のズレも小さい。脇腹部分のサイドサポートを大きくして保持性能を確保しつつ、腕の動きを阻害しない形状だ。

着座560㎜ ステップ370㎜

注目ポイントは足元スペースが広いこと。Bピラーと座面前端との間の距離は30㎝を超え、優雅に足を出し入れできる。一方、写真を見ての通り頭上は広くない。



「先代LSと同じ広さ」を誇る、ゆったりした足元空間には驚くばかり。前席下への足入れ性(足先を入れやすい広さ)も良好。後席重視の設計なのは、「versionL」に電動リクライニング(調整幅8度)を備えていることからも伝わってくる。同仕様はヘッドレストも大型タイプで左右端に土手があり、首が傾きにくい。

ホールド性の高いF SPORT専用シート



「F SPORT」のフロントシートは別設計で、こちらは耐圧分布が安定してホールド性がひときわ高まる表皮一体発泡。サイドサポートも大型だ。後席は標準仕様と同じ形状となる。

〈室内の収納スペース〉使用時のみ展開するエレガントさを追求した収納も

①リッドはボタンリリース式で、スーッと上品に開き、大型ボックスティッシュが収まる。キーロックも可能。

②前席用のドリンクホルダーは2ヵ所に分けて配置。助手席用は内部の仕切りを外して容量を拡大できる設計だ。

③ドリンクホルダーが左右席で離れているのは、操作性優先&大型化のため。運転席用は大型カップも置ける。

④自慢できる大容量のセンターコンソールボックス。リッドは両開き式で、左右席どちら側からも開く。

⑤フロントドアポケットの容量は薄型ボックスティッシュとほぼ同じ。タブレット端末も収納できるスペースだ。

⑥レクサスの定番である、サッと抜き差しできるスリット式のサンバイザーポケット。カードサイズに特化。

⑦左右のシートバックポケットはハードタイプのフラップ式。A4サイズを収納できるが凸型の成型が残る。

⑧「version L」は後席センターアームレストのいちばん前に、可変式のドリンクホルダーを組み込む。

⑨こちらも「version L」だけの収納。後席アームレストのボックスは、モノを置くテーブルとしても役に立つ。

⑩リヤドアにもポケットを用意。ドリンクホルダーではなく、大きめのポーチなども置ける広めのサイズだ。

注目装備

後席サンシェード

「version L」はリヤドアとリヤウインドウにシェードを内蔵。リヤウインドウは電動式で運転席からも操作可能。

非接触充電

iPhoneへの採用で対応スマホが増えた、qi(チー)と呼ばれる非接触式充電器を設定。置くだけで対応スマホを充電できる。

助手席操作スイッチ

「version L」の助手席には、背もたれの運転席側側面に操作スイッチを内蔵。ドライバーが助手席を動かすことができる。

ヘッドアップディスプレイ

表示サイズは幅260㎜とかなり大きい。車速やエンジン回転&出力/回生状況のほか、道案内や運転支援系も表示。

〈ラゲッジルーム〉長尺物も積めるトランクスルー ゴルフバッグ4個と電源も装備

電動リッドはキックで開閉可能。リッドを開けると、その開口幅の広さ(最大約1200㎜もある)に驚く。アームは欧州車の主流とは異なり閉じた時にトリム内に隠れないが、「このほうがトランク容量を広げられるから」という開発陣のこだわりだ。

通常奥行き:1070㎜ 高さ470㎜ 最小幅1100㎜

「ハイブリッドだから」という言い訳は一切不要の、ラージセダンに相応しい大空間。深さも、左右トリムを最大限に広げた幅も十分で、443ℓ(AC100V電源装着車は410ℓ)を誇る。ホイールハウスがでしゃばらずに絶対的な広さがあるため、9インチのゴルフバッグは4セット、特大スーツケースならふたつ収まる。

トランクスルーはアームレスト部分のみ可能。開口部分のサイズは幅205㎜×天地170㎜ほどで室内側からリッドを開いて貫通させる。防犯用に施錠可能。

電動トランクリッドを設定し、トランクリッドの裏側には閉じるボタンが組み込まれている。また半ドア状態まで閉めれば、自動で引き込んでくれるからスマート。

荷室の床にある、荷物を固定するベ ルトやネットを掛けるためのフックは金属製でガッチリしている。強い力を掛けても安心できそうな雰囲気。

AC100V電源装着車はトランクルーム内にもアウトレットが用意される。容量はなんと、一般的な車載電源の10倍以上なのだから実用的だ。横にあるのはアース。

ホームセンターで細長い物を買ったときや、釣りに行くときに竿を載せられることも可能。

床下にはジャッキやパンク修理キットに加え、三角表示板などを収められる。かつてと違い、最近はハイブリッドでも荷室下に補器類バッテリーを置かない設計だ。

注目装備

チルト&スライド式ムーンルーフ

グレードを問わずすべての仕様にガラスサンルーフを標準装備。一般的なタイプで、電動チルト&スライド可能だ。

ナノイー

除菌や匂いを緩和する働きに加え、髪や肌に潤いを与える「ナノイー」をエアコンに内蔵。室内を空気でより快適にする。

オーバーヘッドコンソール

ルームランプの点灯/消灯はタッチセンサー式。緊急時にセンターに通報して緊急車両の手配を行なう機能のボタンも内蔵。

ISO-FIXバー

後席に内蔵するISO-FIXチャイルドシートの取り付け部分は、カバーを外すと口が大きくてバーが直視できるから使いやすい。

パドルシフト

全車にパドルシフトを採用。ステアリングから手を離すことなく、任意のシフトアップ/ダウンが行なえる。パドルは小型。

後席コントロールパネル

「version L」のセンターアームレストには各種スイッチを内蔵。エアコン、オーディオ、リクライニングなどを操作できる。

最上級グレードのおもてなし

「version L」は他仕様と後席センターアームレストが別設計。コントロールパネルは前部の手の届きやすい位置に付く。



〈スマートエントリーのキー〉キーは所持するだけでドアロック解除やシステム起動が行なえる。通常タイプ(右)が2 個、カードタイプ(左)が1枚付属。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 レクサスESの使い勝手を徹底チェック!