2018年12月、ホンダの新型インサイトがデビューし、プリウスも12月17日にフェイスリフトを中心とした一部改良を行なった。日本のストップ&ゴーの多い交通事情、低い平均速度にマッチするハイブリッドを選択肢にするなら外せないのが知名度、販売力に優れるプリウスだろう。新型インサイトの走り、実用性はプリウスに迫っているのだろうか。




TEXT &PHOTO◎塚田勝弘(TSUKATA Katsuhiro)

宿命のライバル(になっていないが、初代からのライバルだ)トヨタ・プリウス

 新型インサイトの販売台数は、自販連のデータによると、2019年1月が1382台、2月が1289台、3月1535台となっている。対するプリウスは、1月が8712台、2月が1万1867台、3月が1万5541台で、前年同月比でプラスになったのは2月だけ。フェイスリフトを受けても大幅増にはなっていない。




 インサイトの月間販売計画台数は1000台であるため、目標はクリアしているものの、新車効果が期待できる発売後数か月の割には物足らない感もある。


インサイトとライバルたちの比較試乗はこちら

ホンダ・インサイトをプリウス、リーフ、パサートと同時試乗! 【ライバル比較インプレッション】

エンジンは1.5ℓ直4DOHCのLEB型を搭載。モーターは131ps/267Nmの交流同期モーターを使う。

 発電用モーターと駆動用モーターを擁する2モーターハイブリッドの「SPORT HYBRID i-MMD」は、プリウスの「THSⅡ」と比べると、ホンダはモーター走行を主体といいながらもEV度合いが薄い印象を受ける。




 EV走行は、バッテリー残量により左右されるが、速度、走行距離ともに早朝深夜のイザという時に重宝するという程度。バッテリーがあれば、速度も走行距離もEVそのもの、といえるクラリティPHEVとは異なる点。もちろん、充電がなくなれば、逆にインサイトの走りに似てくるのだが。




 先述したように、「SPORT HYBRID i-MMD」は、発進時から高速域までモーター駆動を積極的に使う。街中などでは、主にエンジンは発電機になり、高速走行時にはクラッチで駆動軸に直結され、エンジン走行できるのが特徴。




 発進時から低速域はモーター走行で、少し速度を上げていくとハイブリッド走行になる。ただし、エネルギーフローを見ていると、エンジンが頻繁に始動、停止を繰り返しているのがわかるが、エンジン再始動時の音や振動は、あまり気にならない。速度域によるが、街中ではシリーズハイブリッドとして走ることが多くなる。




 2.0ℓエンジンを積む「SPORT HYBRID i-MMD」は、オデッセイハイブリッドなどにも採用されている。インサイトは1.5ℓエンジンだが、パワーには不満はない。さらに、同モデルの美点は、硬めの乗り味を示すホンダ車のなかでも比較的しなやかもあり、セダンらしいボディ剛性感も高く感じられる。




 ライバルであるプリウスも「TNGA」になったことで、走りは決して悪くないものの、よりスポーティなコーナリングが可能な「アジャイルハンドリングアシスト」もあって、高速コーナー連続するようなシーンでも運転が楽しく感じられるのも長所だろう。

 さらに、プリウスよりも勝っているのは、前方視界だけでなく、後方視界も比較的良いことで、プリウスのようにリヤウインドウを上下に2分割していないため、セダンなどの乗り替えでも違和感はないだろう。




 インサイトのボディサイズは、全長4675×全幅1820×全高1410mmで、インサイトの方が100mm長く、60mmワイドで、60mm低い。ホイールベースはともに2700mmだ。ただし、最小回転半径はプリウスが5.1m〜5.4m(ツーリングセレクション)。対するインサイトは5.3mで、素のプリウスの方が狭い場所では取り回ししやすそうだ。



 後席の頭上空間は、インサイトの方が背が低いぶん、少し圧迫感を覚える。後席の開放感ではプリウスに分がある。また、積載性は、インサイトはゴルフバッグが4セット積載できる大きなトランクを備えていて、開口部もかなりワイド。荷室容量は519ℓで、後席バックレストも前倒しできる。

 一方のプリウスは、通常時502ℓという容量だが、バックドアなので大きな荷物の出し入れも若干しやすく感じる。




 インサイトの販売面でのネックは、326万1600円〜362万8800円という価格。そして駆動方式がFFのみというのも多少販売力としては弱い点だろう。対するプリウスは、251万8560円〜347万8680円で、4WDのE-FOURも設定している。燃費はインサイトがWLTCモードで25.6km/ℓ〜28.4km/ℓ。JC08モード燃費は31.4km/ℓ〜34.2km/ℓ。




 一方のプリウスは、34.0km/ℓ〜39.0km/ℓというJC08モード燃費のみ掲載されている。




 筆者がインサイトで高速道路を主体に173.5km走行し(約7割が高速、約3割が一般道)、満タンにしたところ8.83ℓを給油。満タン法では19.6km/ℓという実燃費だったが、エコランに徹したワケではないので、もっと燃費は良くなるはず。それほど我慢しなくても20km/ℓ台も出せそうだ。




 新型インサイトは、いまや「ハイブリッドが普通になった」として、ハイブリッドらしさを外観デザインでは控えめにしている。スタイリングや走りを訴求するスポーツセダンという位置づけだから、こうした大人の雰囲気が気に入れば買いといえるだろう。


ホンダ・インサイトの使い勝手を徹底チェック!

ホンダ・インサイトLX


車両本体価格○326万1600円




全長×全幅×全高:4675mm×1820mm×1410mm


ホイールベース:2700mm


車重:1370kg


駆動方式:FF




エンジン


1.5ℓ直列4気筒DOHC


エンジン型式:LEB


排気量:1496cc


ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm


圧縮比:13.5


最高出力:109ps(80kW)/6000rpm


最大トルク:134Nm(13.7kgm)/5000rpm




モーター:交流同期電動機 


モーター最高出力:131ps(96kW)/4000-8000rpm


モーター最大トルク:267Nm(27.2kgm)/0-3000rpm


JC08モード燃費:34.2km/ℓ


WLTCモード燃費:28.4km/ℓ




サスペンション:Fマクファーソン/Rマルチリンク

情報提供元: MotorFan
記事名:「 326万円の価値はあるか? ホンダ・インサイトはどこまでトヨタ・プリウスに追い付き、追い越せたか?